ゴーストリー・キッセズが久々のプロパー新曲を単発でリリースしました。Doveman名義で
自身の音楽をリリースする傍ら数多の著名ミュージシャン作品にピアニストとして参加する
トーマス・バートレットのプロデュースで、アコースティックな響きが強化されたサウンド。
モノクローム・サッドコアを纏う流麗なポストクラシカル・ポップのイメージはそのままで、
ドリームポップ枠にするのは失礼なシックさがあり、ヨーロピアンな趣のある音像で美しい。
ちょっと小品感というかこの楽曲単体で物凄くどうってことはないけど、方向性には期待。
Wednesday – “One More Last One”
8月にリリースされるウェンズデイの新作アルバムからこれで3つ目となる先行曲ビデオです。
今回はかなりマイブラ感の強い激ファジー・スローバーストのシューゲイズトラックでして、
めちゃくちゃラヴレス。ちょっとやり過ぎではないかと思うのですが、僅かに現実味のある
サウンドで、本家よりも少しだけ陽の光を感じるウォーム寄りの音像なところがポイントね。
日本のリリース
TANGINGUGUN – 遠くのボンゴ (LP)
12曲入りということで完全なフルレングス尺としては初のアルバムということになるみたい。
音楽性的には核であったコアメンバーの二人だけになって、より明確にデュオユニットという
イメージの装いになってるけど、当然サウンドの純度はアップしていて強みというか方向性、
特色が明確になったサウンド。やわらかく揺れるギターとウォームなビートで温かい音像は
決してモノクロームではない、日本の伝統染色で彩られた純和風ノスタルジックなメロディ。
weird popを自称しているようだけど言うほど奇異な感じはないし、メロが若干ねじれ系の
微ドリーム宅録インディフォークってところかな。すごくアーシーだけど常に瑞々しくって、
US/OGインディをかなり咀嚼したアレンジも多いけど、最後はやっぱ歌の旋律を一番大事に
してそうなのが好きなところで、あとはひたすら有機的なのもポイント。今回も生ドラムは
基本入ってないのにリズムマシンが一切ニューウェイブっぽく響いてないでしょ。ある意味で
コールド・ウェイヴみたいなものの対極というかもはやオーガニック・ウェイヴと呼びたい。
フレイバー程度の生パーカションも効いてる。ミックスかもしれないけどちょっと元々あった
ダブっぽさが少し減退してる気がするのと、サイケ系に突っ込む生バンド音のアンサンブルも
ライブで魅力的だったから、その辺が聴けないのは残念だけど編成上仕方ないね。全体では
少し一本調子な部分があって、トーンとテンポ感、歌唱のテンションが基本一定なんだけど、
その割に歌をドンと据えた音場でそれが続くから若干くどいというか、胸焼け起こすギリの
ラインだから、インストとかインタールード的な楽曲をいくつか挟んだ方が良かったと思う。
この方向性ではこれ以上の発展系が見えない位に完成されてるんで、こっからどうなるかね。
今週のLP/EPフルリリース
Moin – Moot! (LP)
Raimeの二人がヴァニシング・ツインのドラマーと組んだユニットってんで良さそうだなと
想像した通りに、オルタナ~ポストパンク系のバンド生演奏素材をメインのエレメントとし
エディット感たっぷりに再構築した雰囲気で、ミニマル的なテクスクチャーが非常にクール。
これタイヨンダイ入る前のEP時のBattlesっぽさもあり、緊張感のあるヒリつくマスロック
みたいな音像で実に格好いいです。M-4とかB EPに入っててもおかしくないし、クラウトっ
ぽさもアフロっぽさも加えられてて完全にビートありきの音楽だけど生演奏ならば俄然OK。
シェラック系のやさぐれリフみたいなフレーズもあったりするからそれほど突き放した様な
シロモノでもないし、Blackest Ever Black周辺の美意識をそのまま聴き易くした感じかな。
BABEHOVEN – Nastavi, Calliope (EP)
このボーカルはややメンドクサ生ぬる系だけどすごく歌心があって歌唱が飛び込んでくるね。
作りは割とへっぽこ宅録インディの微クラシカル・アートポップ路線で全体的にウォームかつ
ストレンジ、そして感傷的です。カンタンな構成なんでもう基本お歌聴いてくださいって音楽
だけど、ちょいちょい妙なSEや神々しいパッドシークエンス等が挿入され、ギリシャ神話の
カリオペを冠したタイトルとうまいことイメージの合う、神秘アンビエント的な風情もある。
カバーアートがなんかよくて、お人形さんのお庭にワンちゃん(トイプー)のお人形さんが
いるんだど、そのドールハウスのサイズに準じてるわけではなく、縮尺がよくわからないよ。