GVVC Weekly – Week 294

Mediocre – Fun Time Fix (We Go Go)

L.A.のミディオウカーが9月末にリリースするデビューフルアルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
ちゃんとした本メンバーはボーカルをとっている2人だけのようで、あとはサポートでライブする編成のデュオ。音楽性として筆頭要素を一つだけ選ぶならおそらくポストパンクになるかと思われるがその典型的なものではなく、かなりインディポップ寄りで脱臼ダンスっぽい要素も強いという折衷感のあるサウンド。
気の抜けたラフでリラックスしたストリートの雰囲気もあり、なんというか初期のCSSだとかをギターメインのUSインディ(広義で言うところのペイヴメント系譜のもの)化させたような質感です。シロフォンやカウベルなんかの導入加減も絶妙だし、ギターベースドラムの三点も何か鳴りが異様に良いですね。
これまでにリリースしてるEP等をひと通り聴いた感じはもっとオルタナだったりパンキッシュだったりと今回のバランスのものが見つからないので、全体的にこういう路線に調整してきたのかこのトラックだけたまたまなのか不明なんで後続の楽曲に注目。


Christopher Owens – I Think About Heaven

元ガールズのクリストファー・オーウェンスがソロ名義では最早いつぶりなのかもわからない超久々のプロパー新曲を単発シングルでリリース。
かなり今までの彼には無いような方向性になってまして、潮風を感じる微トロピカルで爽やかな中にお家芸のメランコリアとセンチメンタリズムが注入されたドリームポップと言っても差し支えないサウンド。歌とギター以外にボンゴに関しては自分で演奏しているようです。
しかし、あの「目」は相変わらずにしろ一気に老け込みましたね。この人はピーク時の最高打点と比較して、色々と不幸なアクシデントもあったとはいえ商業面でいわゆる成功ができなかったタイプの人なわけで、それだけにある意味ホンモノとも言えるし、Curlsとかどうなったのという感じですが、なんだかんだ続けてくれていて嬉しい。とっくに別れてるけど、表舞台からは消えちゃったハンナちゃん元気なのかな…。


Iron & Wine – Never Meant (American Football cover)

アメリカン・フットボールが伝説的1stの25周年を記念して、彼らをリスペクトする様々なアーティストによるLP丸ごとカヴァー作をアナウンスし最初のリードトラックをビデオ公開。
やはり先陣を切ったのは誰も認める最重要曲のこちら、アイアン・アンド・ワインことサム・ビームが完全に自分のものにしたインディフォークバージョンでお披露目です。
原曲があまりにも金字塔過ぎて超えるとかいうことは有り得ないため別軸での評価にはなりますが、元々のIron & Wineも特段どこまでも土臭いというタイプではなくむしろ少しこういうアンビエント、ポストロック方面のテクスチャーを若干感じさせる部分があるため噛み合わせは大変良く、重要な部分もディテールもそれほどいじらない割と置きに行ったアレンジで自然な仕上がり。
ボーカルだけが大きく異なり一気にオトナな雰囲気なので、オリジナルに微かに残っていたエモ~パンク上がりの猛々しさみたいなものは消え去ったアダルト仕様になってますね。面白い。

今週のLP/EPフルリリース

Mystery Waitress – Bright Black Night (LP)

これが2ndアルバム。NZバンドでレーベルもFlying Nunということだけど個人的には典型的なそこのイメージとはちょっと趣を異にする音楽だなと。
ほんのりサイケな雰囲気もあるオルタナロック(notグランジ)〜オルタナフォークはどちらかといえば陰気なタイプには属するが、そこまで抑圧された感じはなく重くない。カリスマティックな佇まいがあるのにどこか軽やかであっさりとした印象のボーカルがなかなか逸材で、これがサウンド全体としてはクセのないまま、ある意味で地味なままに、最終的なアウトプットを特徴あるモノにしてる。
もう一つポイントとしてはシューゲイズ要素の入れ具合。ほぼゼロだといっても差し支えないが実のところ100%のうちの2%くらいだけは入ってる。俺じゃなきゃ見逃しちゃうねってレベル。それが細かいところで非常にスパイスとして機能しているのです。
元々は先行で出てたM-4でちょっと気になっていたのだけど、そちらはザ・SSWバンドのリード曲って感じでLPトータルの中でみると寧ろかなり浮いていて大味だなと。正直良さがかなり分かりにくいバンドだと思うし改善の余地はアリアリだが、感覚的な部分で少しひっかかるというか不思議な魅力がある。名前もやってる音楽に実に合ってます。1stと比較すると相当ブラッシュアップされたし、まだまだ化けそうな雰囲気で今後に期待。