GVVC Weekly – Week 301

Fievel Is Glauque – Love Weapon

フィーヴェル・イズ・グロークがFat Possumから来月末にリリースする新作アルバムより二つ目となる先行曲をビデオ公開。
プログレ・アートポップ化したジュリア・ホルターのようなトラックで、非常にコンテンポラリーでありながらどこか80’s風でもあるという矛盾にニュージャズまでが融合したあまりにも唯一無二の音楽。そして最終的な印象はちゃんとロックの範疇におさまるというバランス感覚は、もはやバケモンでしょ。
ただ、あまりにも情報過多だし、音楽オタク以外にはおよそ聴かせられないような代物だから間口はまるで広くないかな。間違いなく素晴らしいけど、LP全体にはもう少し気の抜けたシンプルめな楽曲も盛り込んであると期待したいところ。


Caroline Says – Roses

アラバマ出身のSSWキャロライン・セズがフルレングス作としては実に6年ぶりにリリースするニューアルバムをから二つ目の先行曲をビデオ公開。
前作もなかなか良くて、基本はインディフォーク・ロックをベースに多少の土臭さとメランコリック系のオルタナ成分も入ってくるようなバランスの音楽でしたがさすがに間が空いたぶん変化を見せてます。まず全体的にくぐもったような雰囲気のあったサウンドがかなり明瞭になり、アレンジ自体もソフトでクリアに洗練された路線へ。アーシーな部分が完全に抜けてきっていて、この曲に関して言えばFenne Lilyあたりのテイストにかなり近いですかね。
正直、個性は前の方があったけど、正当進化とも言えるし垢抜けた仕上がりかなと。前作時点ではオースティンに移住していたようですが一度アラバマへ戻ってからの現在、今度はブルックリンに移り住んでいるようで、その場その場の新天地が作品に反映されていくスタイルでしょう。引き続きWestern Vinylから。


Indigo De Souza – WHOLESOME

今週、事前アナウンスや先行曲などが何もナシで突如リリースされたインディゴ・デ・ソウザの新作EPは全てにリリックビデオがついてますが、1曲目をピックアップして紹介。
本人が何も考えずに楽しんで作ったと語る通りで、オルタナの要素が抜け落ちたエレクトロニック〜ハイパーポップ路線の小品集はフィジカルなしのデジタルオンリーと、およそ次回プロパー作の方向性を占うような内容ではない。とはいえ流石の彼女、今回はいわゆる宅録プロダクションの仕上がりの為かボーカルも普段よりオートチューン増し増しで誤魔化してはるものの、相変わらずメロディがズバ抜けて素晴らしい。メインストリームにもアプローチ可能な、ともすれば大味ギリギリのビッグなコーラスを絶妙に乗りこなす歌心は超一線級。
残りのトラックも悪くはないですがこの曲は特にアルバムなんかのメインにもなりうる出来なので、ぜひバンド編成版のリアレンジで正規作品に再録して欲しいところです。


Onsloow – Brakes

ノルウェーの4ピースバンド、オンスローが10月にTiny Enginesからリリースする2ndアルバムより二つ目の先行曲を公開。
こちらはセンチメンタル疾走系のギターポップ寄りインディロックで、軽めのエモ成分を少し注入した小気味良く爽やかなアレンジとミックスがマッチした佳作です。
一つ前に出てた方のトラックはもう少し重めに歪むオルタナの楽曲だったりで、全体的にSoccer Mommyなんかの方向性をもう少しライトにしたようなバンドなのかなと。現段階でもの凄く良いとかではないのですが、ちょっとこの先を見てみたいようなキラリ光を感じます。

今週のLP/EPフルリリース

Malcolm Pardon – The Abyss (LP)

まずこれはジャケ写詐欺というか、アー写も含めて視覚情報からこの内容をいったい誰が想像できるのか。全くもって日の光やプールサイド要素など皆無の流麗なアンビエント作品で、それもピアノが結構メインのクラシカル寄りなやつです。
どのトラックも過度にエクスペリメンタルだったりコンテンポラリーな雰囲気はなく、シンセで多少空間を埋めて全体を程よく装飾したテクスチャーの美しい作品集。各トラックのレングスもポップス仕様というか、基本的に歌モノと同じような尺とテンポで進んでいく。
特段ニューエイジ方面には行ってないけどポストクラシカルよりはレフトフィールド寄りかつエレクトロニックの雰囲気はほぼ無いという色々と微妙なラインで、質感の印象も決してウォームではないがそんな冷たい感じもなく少しだけダークに寄ったニュートラルに留まるという、細かく見れば意外と他に無いようなバランスの作品なので面白いです。Leafからっての、なんか凄くわかる。
もう一歩、強烈なシグネチャーというか引っ掛かりが何かあれば更に良くなりそうだけど、空間を凛とさせるのになかなか優秀なBGMかな。