GVVC Weekly – Week 307

Ethel Cain – Punish

エセル・ケインの新作が来年1月に正式アナウンスされ最初の先行曲がビデオ公開です。当初はプロパーのフルレングスとアナウンスされていましたが本人曰くアルバムではなようで、でもランニングタイムは90分らしいです。おそらくEP扱いなのかな?
内容の方ですが、こちらも告知されていた通り前作のアルバムとはかなり違ったサウンドになってましてアンビエントフォーク~スロウコアから終盤ほとんどドゥームゲイズのような展開に突入するアトモスフェリックな長尺楽曲で、重めのグルーパー風な仕上がり。先日フルでリリースされたAmerican Footballのカバーアルバムに参加していたトラックの路線と通じる部分もあって、本人がこういうスロウでストレッチされたアンビエント寄りの方向性を探求しているのが伺えますね。
正直、収録曲全部こういうのだと若干ダルいけど、こういうのもありつつ前の路線と半々っていうバランスだと個人的にはちょうどいいかな。ルックスとキャラクターの部分も込みで一部ではもう完全にカルト的スター人気になっており(有名になり出したの頃のLana Del Reyレベル)今後が確約されている彼女、何にせよ動向にはかなり注目です。


Fabiana Palladino – Drunk

今年デビューフルアルバムをリリースしたファビアナ・パラディーノがフォローアップとなる単発ニューシングルをリリース。
アルバムの路線と大きくは変わってないのですが、Jai Paul臭というか元はと言えばダブステからの流れの上にあるUKベースミュージックの歌ものラインっていう雰囲気が少し薄れた感じで、仕上がりがフューチャーR&B・ネオソウルってとこもそのままに、よりシックかつメロウに洗練されていて個人的にはこちらの方が好みかな。
今回も例によってレジェンド級ベーシストの父ちゃんが本業で参加。来年1月にブルーノートでの2DAYS来日公演も決定済です。


villagerrr – Burnout

今年3月に新作アルバムをリリースしていたオハイオ州コロンバスのヴィレッジャーが単発のニューシングルをリリースしビデオ公開。
アルバムはリードトラックをウチでも紹介した記憶がある。路線としてはそこから大きな変化はなく、楽曲やアレンジメントそのものは特別変わった色の付かないスロウなインディフォークロックなのですが、ちょっとどこか物静かで生々しい印象を受けるサウンドと線の細いボーカルが侘び寂びを強く感じさせる独特の雰囲気を持ってます。朗らかめのスロウコアと言ったらいいのか、矛盾してるようだけど、とにかく決してダウナーではない甘く魅力的なライト・メランコリアがここに。


Prevention – Cessation

イリノイ州スプリングフィールドのハードコアバンド、プリヴェンションがDelayed Gratificationから2曲入りのプロモシングルをリリース。その1曲目をピックアップです。
2024 Fall Promoってタイトルなのに1分台の2トラックのみという潔いのか何なのか…一聴して2ビートでゴリ押すストレートなファスト・ハードコアかと思ったらそんなことはない、どんどん刻みを変化させながら行ったり来たり、終いにはフワっとスローダウンさせ縦を感じさせない横揺れドゥーム調になってしまうプログレッシヴぶり。
SOUL GLOの一部の楽曲とかなり近い趣があります。ギターの奴がリズムから音作りから相当センス良いですね。

今週のLP/EPフルリリース

trust fund – Has It Been A While? (LP)

プロパーのフルレングス作としては6年以上ぶりとかなのかな。先行で出てたタイトル曲のM-11を聴いた時まさかとは思ったが、本当に全編フルアコースティックで来るとはね。
基本的には弾き語りに近いようなサウンドだけど、大部分でストリングスがしっかりバックアップに入っており音像にショボさは無い。いわゆるフォークから、ボサやホワイトソウルを感じるようなメロディまでそこそこ幅はとってあり、もはやKings of Convinienceとかみたいになっちゃてる局面もチラホラ。意外と言っちゃ悪いんだが、純粋に楽曲がそこそこテクニカルで真似できねえと思わせる明確なコンポジションがあるし、レベル高いよ。適当にノリで弾き語ってる手癖の垂れ流しみたいなアコースティック作品て巷にかなり溢れてるんだけど、そういうのとは一線を画す煌めきを感じる。素晴らしい。
しかし、こんなに作曲能力高いんだったらバンド編成の時なんであんなローファイ雰囲気重視でわちゃわちゃした感じのアウトプットだったんだろ?と思うけど、まあ一番精力的だったのは10年近く前だし人間は変わるよね。ともかく、こちらの方が良さが引き立ってる。これにそのままもう少し装飾を加えてインディ室内楽方面に進化してくれたらますます気に入りそうだけど、どうかしら。