ワシントン州オリンピアのレイクがDon Giovanniから来月リリースするニューアルバムより新たな先行曲ビデオを公開。
こちら厳密には真っ新な新曲ではなく、2013年にAdventure Timeの劇中歌として公開された楽曲のセルフ・リテイクバージョンですが、アレンジは原曲から大幅にバンドサウンドに舵切られ色鮮やかにブラッシュアップされた会心の仕上がりです。
ソフトなジェントルタッチのテクスチャーに程よいエッジが加味されたどこまでも爽やかでクリーンなインディポップで、ジャングリーとかいう方面ではなくもっと落ち着いた円熟味のあるエヴァーグリーン・サウンド。ちょっと北欧勢のような雰囲気もあって、なんだかんだウワモノの味付けも地味に豪華だったりするあたりShout Out Loudsとかを彷彿とします。これは素晴らしい!
今週のLP/EPフルリリース
Laurie Torres – Après coup (LP)
うーんと、ジャジー・アンビエントって言ったらいいのかな。ピアノがゆるぎない主役のやつで、局所的に控えめなシンセやエレクトロニックでふわっと修飾し、演奏現場のアンビエンス音を強く残したりでコンテンポラリーな雰囲気に仕上げたサウンド。
とまあここまではたまにあるやつなんだけど、この路線でありながら曲によりドラムが結構しっかり入ってくるのがあまりない感じで面白い評価ポイント。柔らかなBGMってところと、インプロまではいかないけど明確にジャズのアンサンブルっていうところの中間地点を行き来するサウンドで、アンビエント・ミュージックでいられる範囲を逸脱しない実にスマートなアレンジです。
中にはピアノ独奏(グレン・グールド風の鼻歌付き)のトラックもあっていいスパイスになってる。全体的にどこかポップな雰囲気まであって、派手さはないけどこれは紛れもなく好盤ですよ。Tonal Unionって本当良いレーベル。
Tim Hecker – Shards (LP)
ブレイクしたアルバム以降、LPはヴァイナルで買うくらいは追ってたんだけど4ADから出したときが微妙で、Krankyに即戻っての「この世」「あの世」はもっと良くなくてしばらく聴いてなかった。
それで今回だけど、まずちゃんとしたプロパー作ではないらしく、近年のサントラやスコアの仕事からの選外とかバージョンとかで惜しいものを集めた作品みたいで、それでこのタイトルと。正直それって言われないとわからないというか全然アルバムとしてサウンドも流れも成立していて、なんか変に凝ってないからなのかむしろ聴きやすい仕上がり。個人的にVirgins以降では一番かな。
アンビエントとされる中で、過度ではないがどちらかというとキャリア通してエレクトロニック寄りのサウンドだと思うけど、この人は圧倒的に他と違うテクスチャーで軽くエレガントですらある。それでいてある程度、匿名性のある趣してるから映画にTVにとサントラ映えもするんだろうが、ホントに孤高の存在だわね。相変わらずクラシックみたいなコンポジションで、流してると空間の位(くらい)が上がります。
ベースがこれなもんで、本人がちょっとコンセンプト尖りすぎるとすぐ聴いてて疲れちゃうカンジになってくるから、今後もあんまりストイックに突き詰め過ぎずにある程度気軽にやって欲しいぜ〜。
Cici Arthur – Way Through (LP)
Chris A. Cummingsを作曲とメインボーカルに、いわゆるトロントのJoseph Shabason周辺人脈大集合で脇を固めたみたいな内容で、Nicholas Krgovichももちろん参加と、ある意味では実に日本受けしそうな音楽ですが、安定して素晴らしい内容です。
かなり華やかに、でもジェントルに彩られたちょっとAORチックなチェンバー・ソフィスティ・ポップで、ジョセフ・シャバソン関連諸作のせいではあるのですが最近もうトロントのイメージがもっぱらコレですよね。Dorothea Paasのサイドボーカルもかなり良い味出してますし、肝心のストリングスアレンジメントにはなんとOwen Pallett。
全体的に企画モノ感は否めなく、何回も擦られるとちょっとというところですが、高クリオティでしっかりとシーンのシグネチャーカラーを出した他では見つからないサウンドで、大団円みたいなメロディが続きます。でもね〜、オルタナティブとして足るにはさすがに牙が無さ過ぎる感じがして物足りないのよ。もう少しだけ毒というか、尖りが欲しいかなぁ。