GVVC Weekly – Week 321

Model/Actriz – Cinderella

モデル・アクトリスが引き続きTrue Pantherから5月にリリースするニューアルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
傑作だった前作から基本路線は変わらず、というか全くと言っていいほど変わっていない純粋なブラッシュアップバージョンで、キーであったエレメントをふんだんにちりばめながら全体的にもう少しだけポップにわかりやすい構造になったかなという程度です。前作にそのまま収録しても問題ないくらい自然。まぁ、ある意味それもそれでどうかとも思うけどね。
具体的にはやはり後期のLiars路線のインダストリアル・エレクトロニックポストパンク的な部分とタイヨンダイ在籍時のBattlesをコンパクトにシンプル化したようなサウンドで、踊れるエクスペリメンタルというかそれはもはや実験的ではない気もしますが、わかりやすくカッコイイ音楽です。


Deafheaven – Heathen

デフヘヴン、どこに向かおうとしてるんだろうね。こないだのアルバムはかなり新機軸というか随分とマイルド路線に行ったなと思ったら、来月末リリースのニューアルバムからひとつ前の先行曲は過去イチくらい激しいのカマしてきた。
で、それは流れとして理解できるしいいんだけど、その次に先行切られた今回のこのトラックは、シャウトはまあ激しいもののオケがユルめというか…最終的にブラストしてるっちゃあしてるんだけども、あんまりブラメタって感じじゃないオルタナロック~ポストロックくらいのインテンシティ。
正直言ってやはりSunbatherが最高到達点だと思うし、でもあの軟派な感じに目されるのが厭でちゃんとしっかりポスト・ブラックメタル寄りというか、深淵な方向に進んでたのかなという印象だったが最近は迷走してるような…正解がわからないよね。まあコレもそんな悪くないんだけど。ただ一つ言えることはやはり前作でやってたように普通には歌わないほうが絶対良いです。


Orbits – Broken Glass

ノルウェー、オスロのオービッツが単発のニューシングルをリリース。
これはね、見逃されがちでしょうけどなかなか稀有なサウンドしてます。一応分類としては所謂インディR&B〜オルタナR&Bと呼ばれるような、ちょっとソウルとジャズのテイストがあるけどあくまで宅録ポップと言っても差し支えないっていうさじ加減におさめたもので、Dirty ProjectorsのフェリシアがやってたGemmaとか少し近いですかね。
しかしながらこちらはリズム隊まで基本は人力の生演奏で、そういう編成だと演ってるうちにどうしてもリアルなネオソウル方面に行ってしまうか逆に超ジャズってしまいがちだと思うんで、オルタナR&Bっていう方向性のまま、それもカナダ系のラフでローファイぎみのテイストではなく洗練されたベクトルで、程よくストイックに仕上げられてるコレは細かいようですがあまり他に無いようなサウンドになってるんです。終盤のエレクトロファンク展開も面白いし、もっとまとまった作品が聴いてみたいかな。


Tough Cookie – Emory

ロンドンのブランニューバンド、タフ・クッキーがデビューシングルをビデオ公開。
ハイプ文化が過ぎる彼の地ロンドンの新人デビューというワードの時点で警戒というかマイナス印象からのスタートで申し訳ないところではありますが、これはなかなかヨロシイんじゃないでしょうか。
音楽性的には特別なところはなく、ほんの少しだけ叙情系emoも入った青臭いインディロックでまあ最近よくあるフォーマットですが単純にイキが良い。全パート演奏が若々しくエネルギーに満ち溢れていますし、ボーカルの子がなかなか歌唱もルックスも高打点で非常に将来性あります。
なんというかポストパンクとかBC,NR周辺系のテイストがどちらも一切入ってないし、かなりUS寄りのサウンドをしてるんで本人らもそっちが好きなんでしょうが、なんだかんだメロディにも音作りにもちょっとジメっとしてる感じがUK出ててウフフですね。ミックスもこれ以上ないくらいキマってます。ビギナーズラックでないことを祈る!

今週のLP/EPフルリリース

David Grubbs – Whistle from Above (LP)

うん、さすがとしか言いようがないね。この手の方向性でちゃんと鑑賞に耐えるアウトプットでありながらここまで気高くて深淵な音楽やってる人、他にいません。Gaster Del Solの方もこないだ編集盤が出てたけど、やはりあそこから地続きの音楽だとは思うし、アンビエントというのもポストロックというのとも違う、アヴァンっていうのもしっくり来ないしコンテンポラリーでは全くない、むしろ逆にカントリー寄りだしで、やはり「エクスペリメンタル」とするのが一番近似値なのかなぁ…と、カテゴライズの枠を完全に超えたオリジナル。
リズムは当然のようにあまり刻まない、フリーにブレイクしたタイム感の中でマックス3ピースのアブストラクトなアンサンブルが主ですが、ギター(もしくはピアノ)の独奏みたいな時間が多い展開において間(ま)の取り方が本当に絶妙だし、音色はもうグゥの音も出ない程に完璧で説得力がある。
昔から利発なイメージもあって確かにちょっとキレ者の尖りは感じるんだけどそこがスノッブな鋭さになってなくて、軽く前述してる通り、田園風景というかどうしても片田舎っていうイメージがかなり本人の根底の重要なところにあるように感じるんだよね。そこは意図的じゃないのかもしれないけどそういうアーシーで非都会的な要素がメチャクチャ中和剤として効いてて、全体を良い意味でマイルドにしてんだよ。
いやしかし、何周でも聴けるわね。本当にすご過ぎる、天才だろ。ここまでのキャリアに鑑みても普通にアカデミアの文脈においてもライヒ並みに重要な音楽家といって過言じゃないかと思うが。