ターニャ・アイヤーが来月末にTopshelfからリリースする3rdアルバムより二つ目の先行曲がビデオ公開。
LPでオープニングトラックに配置されたこちら、確か紹介した個人的にブレイクスルー認定の前作から大きく変化しているわけではないのですが、全体的に豪華にバージョンアップしていまして艶と深み、説得力が順当にアップ。
多くの管弦オーガニック楽器を使用し、鳥のさえずりや小川のせせらぎを想起させるようなパッセージ(実際にフィールドレコーディングを使ってるわけではない、あくまでそういう演奏)が面白く、強烈に自然を感じさせるアレンジメントのナチュラル・アンビエント・フォークロックという独自性のあるサウンド。ボトムやリズムがそこそこに太めなのでそのへんでチェンバーポップ路線にはなっておらず、表層の音楽性的にはすこぶるソフトなものではあるんだけど印象としては意外とファットかつウォームな音像です。
Cole Pulice – After The Rain
オークランドのサキソフォニスト・コンポーザー、コール・プリスが5月にLeaving Recordsからリリースする新作アルバムより最初の先行曲を公開。
ちょいメディテーティヴなボーカル入りジャジー・アンビエントで、僅かにですがニューエイジ感もあるかな。脇役ではあるのですギターが入っていて、おそらく本人にその意図は無いと思うのですが、音響的な部分もあいまってか事故的にシューゲイズのフィーリングが付与されているのが面白く、スピリチュアルジャズに寄ったJefre Cantu-Ledesmaみたいなサウンドになっちゃってます。なかなかシンプルで、構成要素それぞれはありがちな上に面倒臭い作りをしてる訳ではないんですが、その割にはズバリ同じような音楽が他にあまり思い浮かばないのも良いですね。
最後の方にはブレイクしてストロークの粒がはっきりしたギターに崩れていくのも8分溜め込んだエンドレストレモロが解放されるようでカタルシスあります。
iuri – Blurry Film
スイス、バーゼルのSSWイウリ(ユーリ)が同じくスイスのMouthwatering Recordsからリリース予定の新作アルバムより三つ目となる先行シングルをリリース。ちなみに上半期上には出るようですがまだLPの正式なディテール、アナウンスなどはありません。
サウンドは完全ビートレスのチェンバーポップ的な方向性でしてほんのりクラシカル、そしてゲイっぽいアイデンティテイの甘めな歌唱というろころでOwen Pallettからストリングスの圧を無くしたとかPerfume Geniusをまろやかにしたみたいなタイプです。テクスチャーがきめ細やかに美しくて普通に素敵なメロディと節回しがシンプルに良い曲だなと。アンビエントとかドリームのテイストを一切入れてきてないのが良くて、これは続きが聴きたい。
Joseph Shabason and Spencer Zahn – a river a museum
ここんところ随分と忙しくしている(ように見える)ジョセフ・シャバソンとスペンサー・ザーンの連名EPがWestern Vinylから出るようで、EPといっても2トラックなのに片方だけを先行公開というあまり見ないキャンペーン形式でリリースされました。
アンビエント、ポストクラシカル、モダンジャズ、ニューエイジがクロスオーバーするところでそれぞれ各所に客演入れ食いのように活躍してますので納得のコラボで、エレクトロニックの骨組みが明確にSpencer Zahn側の背景であろうことがわかる、この組み合わせの意義がめちゃくちゃ感じられる期待通りのサウンドで流石というような仕上がり。
後の方でほんのちょっとだけフュージョン的なパッセージが入ってきてダサめの外しになってるのがわざとかどうか不明ですが重要なポイントです。まあ好きな感じではあるんだけど、もうちょっとだけトゲが欲しいところではあるかな。
今週のLP/EPフルリリース
Whatever The Weather – Whatever The Weather II (LP)
Loraine Jamesのアンビエントモニカー。二作目なのかな?前作よりも、より断片的フラグメントが連なるシームレスな作風になっていて、曲によりちょっとアブストラクトな「beats / hip-hop」と分類される範疇のテイストも入ってるしそんな強烈にアンビエントという感じではない。
そこそこ匿名性のある作風だけど音の質感は相当ディスティンクトで、ある意味派手、明らかに凡百のエレクトロニック作家によるものではないとわかるテクスチャー。少し尖り目の店舗BGMなんかに最適だし、とはいえエッジーすぎない非常にバランスの取れた音像です。今回に関してはメイン名義よりこれの方が好きかもな。
ざっと垂れ流していて個人的にちょっと00年代の前半~中盤くらいまでのジャジーヒップホップとかアブストラクトヒップホップ系のダウンテンポが強かった時期の雰囲気が感じられて懐かしい気持ちにも。