GVVC Weekly – Week 334

Lucrecia Dalt – divina

ルクレシア・ダルトが引き続きRVNGからとなるニューアルバムをアナウンスし先行曲をビデオ公開。2月に公開されていたDavid Sylvianをフィーチャーした楽曲もオープニングトラックで収録されます。
前作が急にオーガニックに、そしてラテンアメリカのフレイヴァーを強烈に感じさせる路線変更で衝撃かつ過去イチの傑作だったのがいまだ記憶に新しいですが、今回も鋭いエレクトロニックのテイストは捨てているようで、基本的には前回の延長線上の感覚で聴いて問題なさそうな仕上がり。
この楽曲に関してはシューゲイズでよくある、リバースのゲートリバーブみたいなのがかかった弦のパッセージが特徴的なダウンテンポのアートポップで、広義でのビョーク崩れと言ったらいいのか北欧系でよくあるようなR&Bとジャズが軽く入ったアーティスティック路線の女性SSWみたいな風情になってます。
他の収録曲ではなんとJuana Molina客演のモノもあるとのことでビックリですけど、なんか納得の組み合わせですよね。


Alex G – Afterlife

今週は少ないのでトピック的な価値のあるこちらを挙げときます。アレックスGがRCAへの移籍とニューアルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。これで完全なるメジャーレーベルへの移籍となりました。なんちゅーかもう長らくDominoでやってたわけなので、我々の感覚的にはもうその時点でほとんどメジャーと大差ない認識(語義的には違いますが)だったわけで、いまさら特に驚きはない。
サウンドの方ですが、まあ路線的な意味では近年作からは特に変わってはいないSSWインディフォークロックですけどパッと聴いた印象のタッチというかムードというかね、サウンドサーフェスや声の響きなんかに特徴的な魅力が少なからず消失していて、メジャーデビューにおいて典型的すぎる牙の抜かれ方だなと。
いやそりゃあ、メチャクチャ悪くなってるとかでは全くない。アレンジ面ではむしろイントロとかミルトン・ナシメントみたいでイイし、楽曲も劣化してないと思うけど第一にやっぱ質感だな。録りかミックスか…まあ確かにより一層ハイファイになったという点も影響してるとは思うけど、なんか歌唱というか声というか、テクニカルではないもっと生(なま)の部分でも良くないステイトのフィーリングを受け取りましたよ、個人的にはね。おそらく、前作のアルバムがキャリア最高傑作になると思います。

今週のLP/EPフルリリース

caroline – caroline 2 (LP)

うん、これは素晴らしいんじゃないんでしょうか。Caroline Polachekが客演していた先行のM-3も中々悪くなかったが、あれはボーナス曲であり、あまりそのイメージを敷衍させるような内容ではない。
かなりフォーキーな部分が入ってるのと、個人的には好みではないここ10年位のUKのスノビズムもしっかり盛り込まれてはいるが、確かにこれは紛れもなくポストロックでいいと思う。メチャクチャ歌モノ寄りになった、やさしいGastr Del Solが2ndの頃のBroken Social Sceneと合体したような音楽。
ボーカルを決して主役には持ってこない(ポストロックだから当然)けど完全に脇役という程でもない絶妙な存在感、そしてアブストラクトに散らす部分とガシっとアンサンブルを叩き込む部分のコントラストがバランス感覚良好で、通しで聴いてても怠くならない構成なのが非常にマルです。
ちょっと気になるのは、スタジオの一発録りをそのまま垂れ流してるようなグシャグシャの音像は芸術点的な面でもそんなにプラスになってる気はしないし、むしろ「逃げ」に感じる。このフリーで自然に仕上げる特徴はそのまま、もう少しテクスチャーを作り上げて時間も金もかけた作品を聴いてみたいけど、コレクティブ的な側面が強いタイプのグループだと難しいのかな。ともかく、まだまだ伸ばせるから、いつかは完璧なものを期待したい。