ヘレン・バレンタインによるスカルクラッシャーがSecretly Canadianを離れDirty Hitから10月にリリースする新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。やはりというかなんというか、LPは1作だけで前レーベルを離脱しました。しかし、好きな人には悪いがまた微妙なレーベル行ったね。
ということで内容の方ですが、新ホームのカラーを考えると当然ながらアコースティック路線は減退しており、エレクトロニックとまではいかないものの軽くコンサバALTポップというか、音圧とボトムのリズムがしっかり躍動する比較的マッチョなサウンド仕様になっており好みが分かれるところでしょう。
最重要箇所である本人のちょっと浮世離れしたような神聖で詩的な雰囲気はウワモノやアンビエント的なレイヤーとビジュアルイメージにより残されているので、あまりにも面食らう程の変化ではないとも言えますが、やはりあの静謐な感じは残して欲しかったので個人的には残念。ただ前からメロディはそんな強くないので、イケイケぎみのとこに移籍したらこの方向性にディレクション入るのは当たり前なので不思議ではありません。こらならもはや自主になってもいいから最初の感じを追求して欲しかったな。でもスペック的にはまだまだこんなもんじゃない、今回は微妙でもいいから長期的な目で期待してます。
Worthitpurchase – Something New
L.A.のデュオ、ワースイットパーチェスが10月にリリースする新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲を公開。
オープニングトラックに配置されたこちら、ハネぎみのグラウンド・ビートが支配する気怠い男女ツインボーカルのベッドルームポップですが、ドラムとベースのアレンジ方向性により微妙にスクリーマデリカ系ダンスのテイストが付加されており、骨太にアンニュイというわけのわからない音像になっていて面白いですね。輪郭をつぶした揺れ気味の持続音も被さっていて、ちょっとだけシューゲイズのフィーリングも入ってます。
以前はもうちょっと、よりグダグダというかスラッカーぎみなローファイの雰囲気と破滅的な美しさみたいな部分を感じてましたが、そこからちょっと開けた方向に進化してきてるのかな?とは言えLPには「以前の楽曲」そのもズバリである2023年の当GVVC年間ベストトラックの中で上位10曲以内に入選した「Big Canada」や、昨年に出していた単発シングルも収録されますので、単純に振り幅ってところでしょうか。ただ個人的に思うのは、世に出して丸2年くらい経ってる楽曲を最近のと同じアルバムに入れるかいな?まあいいけど。
she’s green – Willow
ミネソタ州ミネアポリスのバンド、シーズ・グリーンが来月リリースする新作EPから新しい先行曲をビデオ公開。
まあバックリとシューゲイズ〜ドリームポップ系のよくあるサウンドではありますが、この楽曲は特に今までのトラックと比べてコクトー・ツインズ路線の音作りにより寄っており、構成・メロディともソコソコいい出来になっていて俄然聴けます。
他にあまりない特色としてはドラムの奴がマジくそ叩きたがりでして、もっとヘヴィ〜オルタナやドゥームゲイズ方面のテイストも入ってる音楽性なのであればわかるんですが、全然その傾向のない純然たるキラキラ系の激甘な歌モノでありながら終始バキバキに容赦なしの全力で手も足(ツインペダル)もフィル回しまくっており、実にやかましいです。後半に上げてくとかもない、最初から最後まで全力。まぁ面白いし、その要素なしではこの曲、勢いもっと普通になるので逆に埋没してたこと考えるとアレンジ上は正解(?)なんでしょう。メンバー全体のコンセンサスとれた上でコレなのか独断で事故的なのか知りたい。
Noah Cyrus – XXX (Feat. Bill Callahan)
マイリー・サイラスの妹、ノア・サイラスの新作アルバムが今週フルでリリースされておりますが、その中でビル・キャラハンを大々的にフィーチャーしたクローザートラックを単体で紹介。
昨年にEverything is Recordedの楽曲において一緒にフィーチャーされていた二名なのでこれも自然な流れでしょうか。しかもどうやらクレジット的に共作のようで、Bill Callahanが客演どころか主体であるようなミックスバランスとガチ歌唱のデュエットになっており、もはやどっちの曲だかわからない。楽曲はリズム隊なしのたおやかなオルタナカントリー・バラッドで、タイム感はゆったりながら、全体的な音像はふくよかで色彩豊か。
しかし、本当にいつ聴いても凄すぎる彼の深い深いリッチなバリトンヴォイスは唯一無二。ちなみに同アルバムにはFleet Foxesとのコラボ楽曲も入っており、そっちも結構良い感じです。
今週のLP/EPフルリリース
Forth Wanderers – The Longer This Goes On (LP)
うん素晴らしい、本当にバンドしてる。先行曲の時も書いた通り完全に解散してると思ってたし、というか明確に解散してたような(無期限休止だったかな?)気がするんだけど何食わぬ顔で復帰、しかもそのままSUB POP。そのへんも格別に目をかけらているというか、誰の目にも明らかに上玉だってことだよね。
内容は7年ぶりにしては勢いは削がれておらず、特別な音作りや色付けの少ない、前作そのまま地続きのものとして自然な仕上がり。ただ大きく路線は変わっていないものの、前作にあったオルタナの陰り、青春の尖りみたいなパンクな性急さは消え去ってるのが相応に歳と取ったってところでしょうか。
一番いいなと思う部分は明らかにバンド全体で作編曲していってるであろう楽曲の構造で、アンサンブルその場でのポッと出のアイデアや展開をベースに煮詰めていった様がありありと感じられる。とにかくメインのソングライターがポンってほとんど完成してるデモを持ってきて全体で合わせましょハイでは明らかにない組み立て方なんだよね。そりゃ全曲そうかは知らんけども、大部分で感じる。全員正式メンバーのバンドってこうでなくっちゃ。
それでも、もちろん最大の武器というか、このバンドを真に特別なものにしてるのはなんだかんだボーカルであることに疑いの余地はない。相変わらずとんでもない存在感、感情的と無感情が同居した彩度の低い、でも澄んだようなホント独特の声です。その魅力は完全に保たれたまま前述のとおり全体の演奏に自信や精神的充実、信頼関係みたいもんが勢いを増していてトータルのインテンシティがアップしてるんだね。前作にあった、燦然と輝く一曲みたいなキラーチューンの不在が悲しいが、それは次に期待するとしよう。