カンザスのシャイナーも例に漏れず再結成し新作までリリースしてからもう5年ですが、9月にはさらに次のアルバムも出るようで最初の先行曲が公開されました。
正直、音楽性に関しては時代が追いついたというか、昨今のオルタナブームが先鋭化して90年代ヘヴィのリバイバル、シューゲイズとかでもノイズロック寄りのモノだとかがかなり幅をきかせてきてる上に、ポストロックとかポストハードコアの要素が薄ら入ってるのも当たり前のようになってきて、まさにそのラインに並べて聴けるカンジの音だよね…ってイヤこの人たち30年前からコレですから。
今回は前作よりもちょっとThe Egg期のサウンドに近いような感じで、よりバンドアンサンブルが生き生きと自然にダイナミックな仕上がり、重さもそんなドシンと来る程ではなく彼らの中では軽めかな。もともとが渋かったから、本当のいぶし銀になってもそれほど代わり映えしないのが得なのか損なのかわからなくて面白い。
Flock of Dimes – Long After Midnight
Wye Oakのジェン・ワズナーによるソロプロジェクト、フロック・オブ・ダイムズが引き続きSUB POPからとなる新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
前作は本体バンドでのテイストや自身のプロデュースワーク周辺で見せていたコンテンポラリーな響きのアンビエントポップ路線が高次に融合した傑作でしたが、プロパーLPとしては4年半ぶりとなるアルバムからのファースト・テイストとなるこちらは一転、アコースティックが主体の比較的シンプルなSSW風の楽曲に。コーラスが存在せずヴァースを繰り返す、ほとんど弾き語りの構造の中で添え物程度に参入してくるリズムトラックに準主役のペダルスティールがたゆたう穏やかな雰囲気ですが、歌詞の内容はなんかちょっとメンタル心配になる感じです。
個人的な予測ではおそらく全編に渡りこの路線ということはない筈ですので、これから全貌が見えてくるのが楽しみ。
Hazel English – Baby Blue
ヘイゼル・イングリッシュが単発のニューシングルをリリースしビデオを公開。アルバムのアナウンスなどはありませんが内容を聴く限りコレほぼ間違いなく次回作に収録されるでしょう。
なんだかんだフルレングス作ってまだ2枚しか出してないっぽいし直近のに至っては自主と、出だしの頃のバズというか、ブランディングされてたポジションの割にはその後、商業的にも界隈の格付け的にも思ったより成功できなかった感じがあるけど、まだまだがんばってる。
特に今回はサウンドにちょっと変化があって、今までは女子力高いとは言えインディポップ・インディロックのカッチリとした8ビート前提で非常にスクエアなイメージの王道サウンドを堅持してたと思うし、悪く言えば常に中庸なアレンジだったけけど、この曲はちょっと装飾をアンニュイに、淡めのSSW路線に寄せてきた曖昧なアレンジと音像になっていて、こちらの方が明らかに本人の歌唱の方向性やイメージに合致してると感じる。いや、もっと早くこうなるべきだったし、何ならまだ思い切りが足りないからもっとガッツリとドリームもしくはアンビエントフォーク化してよりアブストラクトになっていって欲しいな。イントロの入りも良いです。
Wednesday – Pick Up That Knife
9月にリリースされるウェンズデイの新作アルバムからこれで三つ目となる先行曲がビデオ公開。
もう安定感がありすぎて都度、わざわざ紹介する意義ももはや怪しいところではありますが、またまた非常に完成度の高いリードトラックです。
これまで何度も言及してる通りバンドとしてのアンサンブルが異次元のレベルで完璧に仕上がっているので、よっぽど滑らない限りは単に普通の曲やるだけで高得点が出せる無双状態のボーナスタイムな上、音楽性もほぼ完成してるので頭打ち感はあるのですが、今回は1曲にいろいろ要素が詰め込まれたバラエティパック。
珍しくポストロック気味なイントロの入りから序盤で1回だけ瞬間的にスラッジ並みの激重メタルに突入、さらりと戻っては十八番になりつつある無段階式のBPMスローダウンからのブレイク復帰で最後はお約束の歌唱フリークアウトとめまぐるしい展開ですが、全体的にはオルタナカントリーのゆったりタイム感をたたえた柔らかな質感で情報量が多い割に散らかってないのは、やはりどう転んでも一切の綻びを見せない演奏でしょう。テクとかじゃなくて、生き物なのよ。
もう、これまで公開された楽曲だけでも約束された傑作のLP本編、震えて待て。
今週のLP/EPフルリリース
Indigo De Souza – Precipice (LP)
昨年、宅録の自主で準備なしに今さっき作りましたみたいなタイミングで急に出してた3曲入りがEPがなんか良くてやっぱ流石だなと。んで今回のプロパー新作ですが、鉄板のサドル・クリークからLoma Vistaに移籍(だが、拘りのアートワークは継続)ってのと先行切ってた曲群がそこまではピンと来ず、どうかな〜と思ってたところ蓋を開けてみたら全然OK、ブレイクスルーの2ndには遥か及びませんがトータルで見ると何なら前作より好きかもね。
なんというか、軽やかになりましたな。憑き物がだいぶ取れた感じ(いや、結構「降りてきちゃう系」のシンガーだと思うから寧ろ取れちゃいけないのかもしれないんですが)でクリーンにクリアに進化し、下手したら爽やかですらある楽曲群は尺短めが並びどんどん駆け抜ける11曲30分。
正直なんか意外な変化だったけど、ぶっ壊れそうな危うさと繊細さを伴ったボーカルは相変わらず素晴らしく主役なので全然聴けるね。しかし、元々の芸風考えたら比較的キレイめになったぶんの副作用として芸術作品としてのインテンシティと独創性は明らかに落ちます。そこはもう取捨選択で好みかな。
後まあ明確にConsとしては、さらりと表面的にインディロックの諸要素を一通りさらったバンドサウンドのALTポップみたいな仕上がりとも言えるし、凡百のシンガーがやってたら軽薄かもなってトラックもちらほら見かける。この辺のさじ加減は気をつけていって欲しいし、一、二曲くらいは前みたいに絶叫で鬱転するドゥームな曲入れてもいいのよ。それかむしろ全曲ドゥームなアルバムも出してもいい。今のテイスト聴くと意外とシンセティック〜コンテンポラリー系のソフィスティポップもイケそうだからマデリン・ケニーとかの路線かキャロライン・ポラチェック路線(後期チェアリフトみたいな曲ある、M-10)もアリだし、どっちにも行けるのは強いよな。今後も期待。