GVVC Weekly – Week 343

Teen Suicide – Fade 2 Blue

ティーン・スーサイドが2022年アルバム以来となるプロパー新曲を2曲同時リリース。
もう、名前は戻してずっとこのままで行くのでしょうか?久々の一発は期待通りに面目躍如のファジーなオルタナ~エモ系のインデイロックですが、割と特色の一つであろう性急で刹那的なムードは少し控えめで、彼らにしてはいい意味で中庸なバランスに仕上がっており、少しばかりの落ち着きを感じます。もうそんなには若くないだろうし年齢もあるのかな?
しかし、前からずっとですが絶妙にちょっとスラッカーの雰囲気というか、いかにも部屋が汚そうなカンジがいつまでも青臭く、このサウンドが嘘っぽく響かなくて良いですよね。いつまでもやぶれかぶれ。
ちなみにもう片方の楽曲はほとんどデモ状態のシンプルなデュオ弾き語りスタイルのトラックになってます。引き続きRun For Coverから。


The Beths – Mother, Pray For Me

ニュージーランドのザ・ベスがANTI-に移籍して来月リリース予定の新作アルバムから三つ目となる先行曲をビデオ公開。
こちらは既発のリードトラックからうって変わって、いつになく弾き語りスタイルのトラックですが、全くもってアコースティックではなく所謂「エレキ弾き語り」ってやつ。内容的に語れる部分は多くないいのですが、これはこのアレンジメントが絶対的な正解だと納得できる非常に素晴らしい歌唱なので、いろいろ試した上でボーカルの輪郭や倍音を極力マスクしない選択をしたのだろうと感じられる。
身も蓋もないですが、兎にも角にもいい歌です。歌詞の内容的にも、なんか心からの切実なものが伝わってきて素晴らしい。
正直このバンド、音楽性だけに関して言えばそこまで大した事してないが、結構メロディが良いなとはずっと思ってたから一通り耳を通してればいつかこのレベルの佳作は聴かせてくれるよね。得した気分。


Jane Inc. – Elastic

トロントのジェーン・インクが新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
ツアーバンがトラックと派手に事故ったのに全員無事でその日予定されていたライブにそのまま出演、そのツアーから帰宅したら10年来の恋人と別れた上に喉頭癌と診断されるも二度の手術で無事復活と、映画の世界で生きてるみたいな人って結構いるもんで、音楽性の評価とはまた別の話として、このレベルで悪運が強いというか「持ってる」人じゃないとそもそもステージに上がる資格はないのかもしれないとたまに思う。あまりコンテクストについて語りたくない主義ではありますが超ド級のヤツは紹介せずにはいられないよね。
サウンドは往年のMolokoとかみたいなディスコ~ボーカルハウスのちょっとインディ寄りになったようなやつで若干レトロ。レトロっつうかもう90年代後半なんですが、いまどき前世紀は全てレトロ扱いでしょうか。考えようによっちゃフィルタかけ忘れた?みたいなサウンドとも言えるけど歌モノ好きとしてはこういうサウンドってアリ寄りのアリで、もっと増えていいよ。


Kamran Khan – Personally (ft. The Japanese House)

Fake Laughのカムラン・カーンがソロデビューとなるシングル楽曲をリリース。
ソロといいますがフェイク・ラフもソロプロジェクトだったような気がしますので違いとは…というところですがあちらが割とバンドサウンド路線だったので、こちらはよりSSW的な方向性の追求でしょうか。なお本人が以前バックバンドのメンバーを務めていたThe Japanese Houseが客演参加しています。
サウンドですがかなりソフトタッチでなめらかシルキーなソフィスティポップ系統になってまして、終盤サックスなんかまで入ってくるともうニコラス・ケルゴヴィチにジョセフ・シャバソン周辺をイメージするようなテイストに仕上がってますね。無難にお趣味のよろしい感じで、ちょっと全貌がどうなってるか気になるかな。

今週のLP/EPフルリリース

memotone – smallest things (LP)

いやコレは凄い。まず、もっとエレクトロニックだったような?こんなんでしたっけ…という印象がいちばん。かなり長いことやってるはずで、当然全部は聴いてないしで、今いちど一通り昔のも全部軽くさらったらまあ中にはアコースティックのフィーリングが強めの作品もあるっちゃあるから、この人のフリークからしたら今回の作品も超意外って程ではないのだろうが、それにしても思い切った内容だね。
表現としては、ジャズとチェンバーミュージックのニュアンスが強く入ったフォーキーなアンビエント〜ポストロックっていうのが近似値かなぁ?ただし、基本的にあまり心穏やかではない雰囲気でどこかドープな響きがする。インテリだけどコンテンポラリー過多じゃなく局面によりむしろクラシックな趣でアーシーだし、なんとなく優雅な風情もあるんだけどね、まあUKそれもウェールズって言われて納得する感じではある。
エレクトロニックは影を潜めるどころか完全に消滅し、フルアコースティック。本人がボソリ歌っちゃってる曲はGastr Del Solみたいだし、アルバムトータルで見るとかなり特異なバランスの音楽だけど、現地の自然風景と、そこはかとない辛気臭さと、ちょっと几帳面な感じのアレンジだったりのイメージがグルーとなり統一感を持たせ、アートとして完成されたものに昇華。ビンテージ家具屋とかにベストフィットする高感度BGMですし、それでいて冗長でもないので腰を据えてリスニングにも耐える内容。間違いなく名盤だし、ここへ来ての彼の過去最高傑作でしょう。出会えてよかった、盤で欲しいね。