ブルックリンのアヴァ・ルナが10月に引き続きWestern Vinylからリリースする新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
7年ぶりですが、メインの方のボーカルが抜けたので再構築に時間かかるのは当然かな。しかも元々からして基幹メンバーだったのにこの編成チェンジでますます主役となるであろうフェリシア・ダグラスはDirty Projectorsでも忙しそうでしたのでね。Gemmaもやってるし。
そして、こちらの新曲は予想通りというかやはり彼女が完全にメインに据えられております。音楽性もかなりテコ入れされてまして、まず特に直近作などではちょっとエキセントリックだとかシンセ・ディスコパンクみたいな若干キワモノ路線のテイストが強化されていた部分を完全にオミットしてきました。まあおそらくその辺が抜けたボーカルの趣向である部分が大きかったと思われますので当然の帰結だし個人的にも大歓迎な方向性です。
で、どうなったかというと、削ぎ落とされた方向性のいかにもNY周辺らしいアートパンク~ポストパンクをベースにちょっとだけソウルも入った、非常に洒脱で気の抜けた、ねじれたアートポップのようなサウンドに。なおボーカル・アレンジともにはやはりFeliciaのダーティ・プロジェクターズでの活動が相当影響を与えている雰囲気です。
しかしね、結構活動期間も長くてずっと一応メインボーカルだったのに自分が抜けてからバンド名も変えずにセルフタイトルのLP出されたら前の人、中々せつないよな。途中からは実質彼女が足ひっぱってたから仕方ないんだけど。
Algernon Cadwallader – Hawk
ここ数年で再結成しライブ活動を行なっていたアルジャーノン・カドワラダーがついにオリジナル新作フルレングスをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。レーベルはギターが被ってるHop AlongつながりでSaddle Creekと、最高な着地点です。
LPでのオープニングトラックを飾るこちら、サウンドの方ですが14年ぶりとは思えない、一切の衰えを感じさせない完璧な純ミッドウエスト・エモのややマイルドなトラック。それでいてお手本のようなキャッチーさを持ち、あくまでも安っぽくはならないラインでポップに仕上げる手腕は凡百の後続バンドに背中で語るような貫禄です。
アンサンブルの方も一時期のザ・プロミス・リング等ほどは枯れ過ぎず、かといって若作り過ぎない燻銀の円熟味をどっしり感じさせる絶妙な塩梅の演奏になっていて文句のつけどころがありません。表面的な色彩の派手さには欠けますが、元々そういう音楽ですし硬派でいい。これこそがemoですぞ。
dust – Drawbacks
オーストラリア、ニューカッスルのダストがKanineからのデビューアルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
LPにてオープニングトラックのこちら、青臭い性急さで駆け抜けるポストパンク系のインディロックで、UK(実際にはOGだけど)若手イケイケバンド風の無鉄砲さを醸し出しながら、全盛期Beach Fossilsのような雰囲気も感じさせる歌唱とサウンドです。
表面上の音楽性はそんなに特筆するところはないですけど、サックス(しかも渋め)が入ってるのがメチャクチャ効いててコレがあるとないでは大違い。結構もう長いことやっててようやくフルレングスってことだけど、今までの単発シングルやEPと比べて明らかに良くなってるから、ちょっと他の収録曲も早く聴いてみたいな。
今週のLP/EPフルリリース
Ada Lea – when i paint my masterpiece (LP)
もう前作からほぼ丸4年も経ってるのか。引き続きSaddle Creekから、着実に地に足をつけて活動してる印象で今回も安定して良いです。
まずプロデュースはLuke Temple (Here We Go Magic) で録音はこれ基本ワンルーム一発取りっぽく、かなりライブ感のある仕上がりになっておりリズムもクリック無しの生々しい自然な演奏。こういうのが結局、生音バンドの音楽性やってる上で最も意味・意義があるサウンドでこれ以上はない。
風情はいかにもSSWバンド、という感じであまり色付けのないインディフォーク然とした楽曲は大きく変わってはいないと思うけど、ちょっとマーゴ・ガーヤンみたいな曲とかあったり、あと明らかにビッグ・シーフ意識してそうな瞬間もあるなど、なんというか悪くない意味で前より作為的なアレンジが入っているかな。
全体的に声、歌唱、音色使いや配置はすごく良いと思うしバックバンドもやり過ぎず必要十分な手堅いしっとり演奏、まぁもう少し暴れても良い気がするけど。ただ前作の1曲目みたいに明らかな快心作、名曲レベルが入ってないのが惜しくて、なんだかんだ曲ありき、とってるスタイルがソング・オリエンテッドの極致なので1アルバムにひとつくらいは要るよねぇというところ。あとイントロ以外1分未満なしの実質インタールードなしで16曲はダレるかな。まあ基本が短めなんでギリギリ1LPに収まってはいますが。今後もっと腰を据えて聴けばグッとくる瞬間が更に増えていきそうな雰囲気はあります。