GVVC Weekly – Week 345

Black Eyes – Pestilence

再結成したブラック・アイズがまさかのオリジナル新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲を公開です。実に21年ぶり、それ以外は考えられない当然のDischordリリースおまけにプロデュースがFugaziのイアン・マッケイという盤石すぎる布陣。
ここまでの文字情報だけでもインパクト凄いんですが、内容の方は音聴いて2度ビックリというかあまりにもイメージそのまま、当時残した2作から地続きの完全なるBlack Eyesサウンドで違和感なさ過ぎる。
最近はびこってるお手軽編成ポストパンクの音像とは一線を画す、黒くドロドロした地下エキセントリック感とツインボーカル、ダブのニュアンスを孕み捻れまくった渦の中で展開される音楽は更にサックスやエクスペリメンタルなシーケンスでも装飾され、ホント唯一無二。
まぁなんかItal~Sex Worker~Relaxerのダニエルが実際まだ若め(自分と同じくらいだったはず)で老け込んでないのは要素としてデカいでしょうね。しかも本人は相変わらずカッコいいです。当時何歳でこのバンド加入してたんよって話なんですが。なお6トラックでフルレングスというには物足りない尺になりそうですが、何はともあれ楽しみです。後は再結成Faraquet(まもらく来日)が新作出してくれたらいいな。


The Belair Lip Bombs – Hey You

メルボルンのベルエアー・リップ・ボムズが引き続きJack WhiteのThird Manからリリースする新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲を公開。
確か前作のデビューアルバムを紹介したと思う。ウェットな色付けがなくカラっとシンプルなギターサウンドだけど一癖ある楽曲と若さ溢れる演奏でいい味出してましたが、そこから2年での新作、かなり進化してます。
ます今回はシンセというか簡単なアルペジエイター的シーケンスがずっとそのまま後ろでループしてる上で演奏を重ねていくスタイルの楽曲で新機軸。メロディやアレンジも従来よりずいぶんポップ寄りに仕上がっていて、ちょっと悪く言えば大味だけど多分ここまで勢いよく振り切ってるのはLP中この曲だけであろうと感じる。それはなんか分かるんだよね。
しかし、前はオルタナ~ガレージ範疇でForth Wanderersあたりのモノクロ無色路線の音像だったけど、一気に色彩を帯びて下手したらなんかThe Walkmenとかのシングル曲とかみたいな雰囲気だな。クラウトビートで疾走するわかりやすいトラックだし、歌の子が相変わらず雰囲気あるんでUSで本気で売れに行くならこの感じでもいいかも。逆に枯れてっても面白かったがまあ変遷を見守りましょう。


Winter – Hide-A-Lullaby (feat. Tanukichan)

ウィンターが来週リリースする新作アルバムからおそらくこれで最後となる先行曲をビデオ公開。
タヌキチャンをコーラスの客演に迎えたこちらは普段よりもオルタナ成分強めの30%シューゲイズで白日の下にドライヴする非常に青春インディロックな楽曲になっており、サウンド作りはSlow Pulpのアンニュイ路線。
ベースレスの3ピースっていう音像で、まあベース居ないことのメリットって無いんだけどこの楽曲なら成立してる。他の曲聴いても、初期にあったちょっと線が細いドリームポップの方向性はかなり減退していて、やっぱライブやってくにあたってバックバンドが定着して成熟してくるとどうしても宅録ありきの繊細なサウンドはデカい音出す現場で再現性ないので難しく、こういう流れになっていくのはやむなしかな。
ちなみに今回は映像が非常に良くて、そこ込みの評価です。特別なことはないですがぜひ4Kでご覧あれ。なおミュージックビデオ終わった後は出演者アーティスト(Winterの友達)等のインタビューなどがそのままダラダラ続くあまり見かけないスタイル。これって別にショートフィルムではないよね…。

今週のLP/EPフルリリース

Racing Mount Pleasant – s/t (LP)

先行曲を二つほど紹介してたと思う、Kingfisherから事実上改名のいきなりセルフタイトル作。いや、まあ期待はしてたが素晴らしく予想以上、順当にリード曲の印象から外してくる事なく、実に「うん、コレコレ」という内容です。
基本はポストロックで良いだろう。そこにミッドウェストエモやチェンバーポップ、インディフォークの要素も入ってくるような感じで最大の特徴はサックス・フルート・トランペットにストリングスまでも擁する(全部の曲に全部が全部出てくるわけではないけど)大所帯編成。もう、一聴して人数の多いバンドだとわかるサウンドでどうしてもトレンド的にはBC,NRとの比較は避けられない所だろうが圧倒的にこちらのほうが良い。
シマー系のエフェクトだったりと20年前では有り得ないモダンな音作りもちょいちょい入ってはいるが、暴れる局面でもポストパンクとかアヴァン〜エキセントリックぎみのニュアンスを一切持ってこないところが特に印象で常に純然たるオーセンティックな表情を保つ。前も書いたけど一番しっくり来る表現はアメフトのメンバー数増やしてナチュラルにフォーキーに寄せたような音像ってとこかな。
ともかく、明確にポストロックというキーワードはある上でヘンな色付けなくクリアーなイメージかつ、過度に土臭かったり地味になり過ぎたりもしない絶妙なバランスで今風に真摯に組み立てられた楽曲群が白眉。打算や軽薄さが微塵も感じられないし、陳腐な言い方するといわゆる「ホンモノ」の音してる。
あと全体的な印象として歌はあくまで添え物程度…の割にほぼ弾き語りに近い楽曲も一つや二つではないという謎。そしてそれがめっちゃショボいわけでもないんだけど不思議、本人らが意識的に存在感薄くしてるとしか思えない。なおメンバーは全員ミシガン大学仲間(元)とのことです。
いやぁ、改めて間違いのない傑作だしアルバム単位だと年間でもかなり上位に据えたい内容。しかしもうコレでほとんど完璧な仕上がりなのでこの先に期待とかいう感じではなく、これ以上作れるの…?という心配しかない。