GVVC Weekly – Week 346

Devin Shaffer – All My Dreams Are Coming True

デヴィン・シャファーが引き続きAmerican Dreamsからリリースする新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
以前はエクスペリメンタル・アンビエントフォークといったような音楽性だったのですが、今回はしっかりとした明確な歌モノ路線に変貌を遂げており、美しく瑞々しいアコースティックなドリームぎみのインディフォークを披露してます。
ボーカルはややキャラ弱めなのでダブルにして清涼感と説得力をプラス、全編つつましやかなしっとりドラムの他、終盤には添え物程度に薄っすらスローアタックの実験的シーケンスが挿入され、なんだかんだシンプル過ぎないサウンドはちょうど良い仕上がり。
ちょっと前のスカルクラッシャーをより朗らかに、テンションを弛緩させたような雰囲気で、いかにもなSSW風情もなく、ナチュラル過ぎることもなく、かといって強く作り込まれた音像でもなく…と、けっこう絶妙な着地点です。他のトラックも早く聴いてみたいかな。


King Hüsky – Don’t Let It Bring You Down

ノルウェーのバンド、クヴァラータクのギタリストによるソロユニット、キング・ハスキーが単発のニューシングルをリリース。
Kvelertakを知らないで聴くと何の疑問も浮かばないでしょうが、知ってたら一瞬混乱してしまうような内容で、ちょっとビーチ・ボーイズ入ったインディポップっていう感じの軽快なトラック。5月にリリースされたフルアルバムから間髪入れずのプロパー新曲ですが、方向性的に大きな変化はないもののより一層キャッチーに、軽快にはじけるサウンドでピントの定まった完成度の高い仕上がりです。
とはいえまあ、本人のギタープレイからバックバンドから、本当に出自からしてこういう音楽の人達じゃ明らかに出せないアンサンブルなのは聴いてわかるし、元来モッサリ系のジャンルな筈なのである種異様なムードすらあり、筋金入りのネオアコ信者からはコレジャナイと言われそうな滑らかすぎる演奏と運指。個人的には非常に面白いですし、この方向性でもっとやって欲しい。アートワークもカワイイね。


Purity Ring – imanocean

ピュリティ・リングが来月リリースするセルフタイトルの新作アルバムから四つ目となる新たな先行曲をビデオ公開。
これ、点で見たらちょっと大味な、やり過ぎに「泣き」のエイティーズみたいな楽曲だけど、これまでのPurity Ringをある程度把握してる上で聴くと彼らの独自のテクスチャーと旋律を保ったままインディバンドにメタモルフォーゼしてみました、みたいなオモシロ楽曲で、露骨にギターとドラムを演奏する姿を見せつけてくるビデオからしても自覚的にそうしてるはず。
この曲に限らないけど今作は良い意味でこの二人ちょっと吹っ切れてるっぽく、いろんな足枷が取り払われたような、解放されたような伸びやかさがあって期待できる。最早やけっぱちとも言えるかもしれないけど、個人的にはもっと前の段階でこうなってもアリだったし、色々とタイミングってあるから難しいね。でも生きてる(続けてる)って素晴らしい。

今週のLP/EPフルリリース

Water From Your Eyes – It’s A Beautiful Place (LP)

前作で大きくブレイクスルーしてから待望の新作アルバム。先行がそんなに数出てなかった印象で、1曲くらいは紹介してた気がするけど全容は見えておらず、開けてみたらなかなか素晴らしかったです。
まず、もちろん間違いなく確信犯ではあるが以前は音にある種の軽さというか、ともすればチープな質感やスカスカさがあり、そのへんがポストパンク的な風情をもたらしていたところをかなり変えてきた。アレはアレで良かったが、先に進むにあたりサウンドの厚みと説得力を強化したのは正解で、これはもう軽くエクスペリエンタルなオルタナ〜アートロックっていうラインで安定かな。
LPの流れとしても一本調子にならないように明確に聴きやすく構成されていて、そこそこ小綺麗に纏められたアンビエント小品なども挟みつつ、胸焼けしない程度の濃密さで進む10トラックもイントロとアウトロは実質曲じゃないし、インタールードも二つでほぼ6曲だけと言っても差し支えないトータルランニングは音楽性に対してアッサリ目の聴後感。This is Loreliでの活動もフィードバックされていて、もろWednesdayみたいになってる曲とかもあるし、似非四つ打ちもあったりと、もう見本市状態で、本人らも正直コレって定まってないんでしょうが、スペックの暴力、センスの力技で成立させてる感じです。
ちょいちょい入るテンポチェンジを伴ったトンデモ転換のタッチと、内包してる音楽性の要素の組み合わせがThe Spirit of the Beehiveと少し近いけど、こっちの方がキャッチーというかスタイリッシュではあるし、より間口が広く売れそう。でもコレがもう決定的に名盤って訳ではなく、あまりにも未完成なのでこの先どうなるんでしょうか。いつかとんでもない傑作出しそうだけど、その期待感だけで終わらないで欲しい。