チャット・パイルとヘイデン・ペディゴが10月にComputer Studentsからリリースするコラボアルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
こちら、表層的なサウンドスケープだけで考えたら意外なようでいて、その実なんか深層部分でのフィーリングに不思議と共通性というか納得できる部分が確かにある絶妙な組み合わせですね。アメリカの田舎というか…。
そして実際の内容ですが、その仕上がりを聴いてもますます納得感だけが増す、どちらかの世界にもう片方が客演参加してるだけかのような意義の薄いコラボではなく、お互いの音楽性にそれぞれが歩み寄り、リアルタイムでのアプローチから現実的な落とし所としての折衷点を模索した真に両者のハイブリッドなトラックに。
そういう意図でこうなってはいないはずなのですが、この共作の組み立て方だとバンド側の歪みをしっかり残しつつニューエイジ的な甘さも加えないといけないので、結果的に多少なりともシューゲイズの風情が出るよね。ボーカルのスタイルもあいまって、これ単体では派手なスロウコアみたいに聴こえないこともない。ちょっとまぁまだ序章のような楽曲ではありますが、LP期待できそうです。
Austra – Math Equation
オーストラがプロパーの新作フルレングスとしては5年ぶり、5thアルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
彼女も長いですね、もう15年位はやっているはずで正直そんなに爆発的に売れたり評価されてた印象はないんだけど、なんだかんだ最初からずっとDomino継続で一度も自主とか零細落ちしてないのが結構すごくて1stは今でもたまに聴くし、ちゃんと自分のスタイルを確立してる上で楽曲が悪くない。
この名義はキャリアの中で大きくサウンドが変化したことはないブラッシュアップ型モニカーですが、マイナーアップデートが入ってくるのは当然で、今回はちょっと全盛期のマドンナ意識というか、Molokoでもいいんだけども、あの辺のユーロ・ダンスポップ(ちょい暗め)っていうラインで攻めて来てます。シンセウェイヴとかシンセポップっていう文脈とは類似性ありそうで音色やタッチが明らかに違うし、今の感覚からするとなんというか、硬派に聴こえてイイんだよね。当時ベースの意識だと特にそんなことないんだろうけど。そう考えると、流行りの音楽ってどんどん軽薄になっていってるよな。
相変わらずボーカルスタイルは言うほどオペラではないと思うけどまあ、シックではあるしちゃんと訓練を受けた人の格式がしっかり感じられて、全体的な芸術点アップに寄与してます。大ファンとかではないけど、とにかく印象が良いからこのままずっと残ってて欲しいね。
今週のLP/EPフルリリース
Jeremy Dower – Music for the Young and the Restless (LP /Reissue)
正式には新譜ではありません、2000年代前半にジェレミー・ダウアーが2枚だけ残したオリジナルアルバムをこの度Chapter Musicが再発。そのうち個人的に殿堂入り名盤認定している2ndの方を紹介。
これは10代リアルタイムで遭遇しててメチャクチャ聴いたんですが、今聴いてもホント素晴らしい。ビートレスの電子音楽は基本的にコレをベンチマークにしていろいろ探してきたのに結局、真に互換性のある音楽は20年経った今でも見つけられず終いという、唯一無二のサウンドです。
当時基準でも一応エレクトロニカ分類ではあったとは思いますが、あまりにもエッジがなく柔らかなので正直しっくり来ないし、イージーリスニングというのとも違う、もっとメロディに主張があって主旋律が明確に存在しているタイプ。トランシーだったり清涼感もないのでチルアウトも違う。ポワポワのこの音色はチープといえばチープなんでしょうが、なぜか侘び寂びというか和の精神で空間を聴かせてくるような業があり、どんだけループでも安っぽい印象が無いのはスゴイ。かわいいメロディと弛緩しまくったタイム感でとんでもなく睡眠導入効果ございますので、そのような向きにもオススメです。
しかし、再発っつってもフィジカルなしのデジタルオンリーで再発という、もはや再発の定義がよくわからないですがブツのCDでしか聴けないような状態でしたからね、それほどロスト・アルバムということでしょうか。1stはなんだかんだPlug Researchからなので当時ヴァイナルも出てましたが、日本の零細レーベルからだったこの2ndはCDしか存在しません。この機会にアナログ出してくれたら買ってましたが、残念。2nd時点で本人は日本に移住してたはずだけど、今も居るのかな。
Blood Orange – Essex Honey (LP)
前作だと思っていたやつはそういえばミックステープ扱いってことで、プロパーのフルレングスでスタジオアルバムはNegro Swan以来となると7年ぶり。
出た時にも紹介したドゥルッティ・コラムやキャロライン・ポラチェック客演参加の先行トラックが強すぎてどうしても圧倒的にスタンドアウトですが、全体的にも悪くない。正直、期待してた方向性とは違うんだけど、まあ瀟洒だし、ほんのりナイーブな雰囲気もあって抑えが絶妙。ラグジュアリー界隈のBGMとして過不足なく機能しつつ、コンテンポラリーなストリングスの挿入だったりアンビエントなシンセだったりのアーティスティックなスパイスがほどほどに効いているシームレスな構成で、これも言ったらサントラ風ではあるよな。
今回そっち方面ではないゲストが多いせいか、広義のブラックミュージックのテイストが比較的薄めなのも個人的には歓迎。でも一つに分類するならやっぱまだオルタナR&Bなのかなぁ。
しかし、この曖昧な路線でもまあいんだけど、なんか、そろそろポップス寄りのアルバム作ってくれねえかな〜とずっと思ってる。スカイ・フェレイラのあの曲やソランジュをプロデュースしてた時のテイストを、自分の名義でいまもう一度やってみて欲しい。本人の周辺とか営業上の実需に対応してってこれなのか、純粋にクリエイティビティの赴くままでこれなのか知りたいけど、実際にはその折衷点なんだろうな。ホントはこの彼が行きかけた筋道に思えて、ブリーチャーズの奴があそこまで成功して大物になってるのがなんか、少しフクザツな気持ちですよ。