GVVC Weekly – Week 349

Starcharm – The Color Clear

シカゴのニューバンド、スターチャームがFire Talk内の無名の新人にフォーカスした暖簾わけレーベルAngel Tapesからデビューシングルをリリースしビデオ公開。
元々はボーカルのソロプロジェクト、Soft and Dumbから派生したバンドのようで、3ピースらしい空間に余裕のあるサウンドは緩めのポストパンクとモコモコしたローファイUSインディロックの中間地点。緩急つける可変BPMのアレンジが意外と自然にハマっていてナイスです。
まだまだホント初期段階というような完成度で、ようやくぼんやりと方向性が定まって来たかな位のステージですがしっかり可能性は感じるし、ほんのりとアートロックで、素朴さが残りつつもエッジも感じるという、いかにもFire Talkが出しそうなタッチの音楽性です。これは注目。

今週のLP/EPフルリリース

Algernon Cadwallader – Trying Not to Have a Thought (LP)

衝撃的な復活作。解散する前と全く遜色ないどころかコレが最高傑作まであります。
録音が異様に良く聴こえて、先行曲M-1がここ含む各所でメチャクチャ高評価だったのもそれの影響があるはず。正直、こういうオルタナロック入ってない純然たるミッドウェスト・エモの音楽でここまで完璧なサウンドってそうそうなくて、表面的な質感から演奏から、貫禄とかいぶし銀とか、もうそういう次元で言い表せないようなホンモノの凄みがあります。
とはいえ、そうは言いながらも彼らのそもそもの特色としてある種の軽さ、しつこくなさってのがあるので、別レイヤーの話で印象としてはライトだし、なんというか気軽に聴けるようなやさしい側面がある。そういう意味ではそこが弱みでもあったぶん、歳食ってのエイジングでちょうどいい味になってるのかもしれなくて、だからこそ今がベストに感じるのかも。
インコのジャケの印象が強いけど、あの頃はまだエモがここまで一般化する前でサブジャンルに止まってた時期だし、当時は当時で出だしからもうある種リバイバルみたいな扱いだったのに、今なんかこうパイオニア側みたいな扱いになってるのが複雑な気持ちです。まあ確かに正直このへんまでが雑味がなくてピュアなソレなので、これ以降のキャリアの人らは一気に雑多になっていくのを考えると理解できるんだけどね。
ともかく、歴史的傑作とか金字塔とかそういう類のものでは決してないし、芸術点とか偶発性みたいなところの魅力が足りてないんだけど、教科書的な面ではこの上なく完璧で、ホント参考書みたいな仕上がり。これだけエモ、それもパワーポップ系じゃなくミッドウェスト源流に限定したエモだけみても巷に溢れかえった現状で実際、この作品にすら及ばないものばかりであることを考えるとね。たぶんこの次はもう無い(寧ろもう出さないでいい、これより良くなるイメージがわかない)んだけど、最後にいい仕事してくれた。


Maruja – Pain to Power (LP)

やられた。絶妙にありそうでないトコを攻めた音楽性。
アヴァンとノイズロックにジャズまではまぁ、ありがちだけど、そこにポストパンクの差し込み方がホント秀逸で自然。その上でしっかりマンチェスターの風味も感じるという三度美味しいサウンドで歌唱はちょっとまぁ所謂、最近の性急なUKポストパンクだけど音はUS寄りでSweep the Leg Johnny系統というか、90 day men系統というか、サックスがブチ暴れてるせいもあり日本で言うとdownyの4thを彷彿とする。
インテンシティはずっと高いしカオティックまで行く瞬間もあるけどそこまで激しくはなく、ちょっとキレイめにポストロックしちゃう局面もあってちょうど良いブレイクになってるかな。まだ「出オチ」というか、格好いいんだけど一発ネタの範疇からギリギリ出れてないから、この先に進むには模索が必要。でも期待できると思う。何かもうひとつ欲しいね。
なんだかんだ半メジャーというか、絶妙にあまりうれしくない微妙なレーベルからのリリースなのもある意味納得。出た方がいいよ。


Legss – Unreal (LP)

自主でのデビューアルバム。たぶん望めばそこそこのレーベルから出せるんだろうけど敢えてのインディペンデントでしょう。
ちょっと気にはなっていつつも少し懐疑的に見ていた。んでコレ聴いた結果、悪くないですし、むしろ期待より遥かに素晴らしい。良きにつけ悪しきにつけ、歌から演奏からあまりにもロンドン臭ぇですし、トレンドもあってある程度不可避とはえ、まぁー言ったらやはり広義ではUKポストパンクの範疇になってしまうかもしれないですけれども、結構USポストハードコア〜ポストロックを本格的に消化してるように感じる局面が多くて、部分的にはなんか小綺麗になったDischordのバンドみたいな雰囲気もある。アメリカ英語で歌われてたら自分もっと好きだろなと。
昨今、もはやありがちというレベルでサックス引っ張ってくることを警戒してしまう音楽性だけど、意外と硬派に4ピースのギターバンドのサウンドで徹底していて、ピアノ入れてくるバラッド風の曲とかはあるけど基本的には気をてらわない堅実なアレンジ。イメージ戦略とかとのミスマッチで逆にそこが好印象になってる感じもあるし、やり過ぎてないのは高評価ポイントで、良い意味でちょっと薄味。
でもこの音楽性でインタールードなしの13曲は長いね。いっそインストにするかボーカル変えたらもっと良くなりそうだけど、どうかな。