ジュリアナ・バーウィックとメアリー・ラティモアのコラボシングルがフランスのInFinéからリリースされ、ライブビデオが公開。
この組み合わせでのリリースは初では無く、何年か前にもやっておりまして音楽性はその時と同じっちゃ同じなのですが、今回は企画モノによりパリフィルの音楽博物館の楽器を使っているみたいで、よりリッチで深みのある音像になってます。
基本はJulianna Barwickの天上アンビエントに流麗なハープが追加で乗ってきてさらに煌びやかになってるというようなサウンドで、コラボ的にもやりすぎ感のない、元々からこのデュオユニットで活動しますと言われても納得の自然な組み合わせ。どっちもソロでの表現が結構控えめな調整なので、なおさらこのくらいでちょうど良いのかもしれません。美しい。
Peel Dream Magazine – Venus In Nadir
ピール・ドリーム・マガジンが引き続きTopshelfからとなる新作EPをアナウンスし最初のリードトラックをビデオ公開。つってもう再来週リリースです。
前作フルレングスからちょうど一年くらい、シューゲイズを捨てラウンジポップ化して久しいですが、その中でもここまで明確にジャングリーというかいわゆるネオアコ〜ギターポップ的なラインの楽曲は無かったはず。このオケでこの歌唱ではライブで絶対にかき消されるであろうボーカルスタイルのご愛敬ポイントには目を瞑りつつ、しっかりソレっぽくソツなく仕上がっており、もう言われないとこの人らだとわかりません。楽曲構造上はほんとシンプルで語るところは少ないですが、薄ら入ったシンセのレイヤーとほんのり丸みを持ったテクスチャーにちょっと違いがあるかなと。
2分ちょいで終わる小品ながら、なんだかんだ彼ららしさも出た上で新機軸も感じる、先行シングルとしては非常に秀逸な一発ですね。
今週のLP/EPフルリリース
Jordan Patterson – The Hermit (LP)
素晴らしい宅録SSWのデビュー作。フィジカルなしの自主(ストリーミングのディストリはMany Hats)でアナウンスから1ヶ月そこらで割と急にリリースは今っぽい。
一言で片付けるとスタイル近似値はインディフォークだけど全然オーセンティックな路線じゃなくて、アンビエント入ったり、声にうっすらオートチューン系がかかる瞬間もあるし、半分強のトラックではビートも入ったりと全体的に装飾は多めのアレンジ。
作品に通底して充満するムードは繊細で美しくて神経症っぽい。歌唱のスタイルも壊れそうに儚かったり、一転フリークアウトしたり、今度は少女のように奔放だったりと実に多彩な顔を見せるから飽きないね。局所的にちょっと感傷過多な気もするけど「泣き」がそんな強くないからセーフだし、メロディもしつこ過ぎずサッパリ過ぎずでちょうど良いかな。
流石にアルファまではいかないZ世代最後期の世代らしく散らかってる感じもあるけど、どこか一本筋が通った雰囲気はおそらくこの真摯さ、嘘がない自然体のサウンドだと思える、えも言われぬ説得力。出だしでこれは末恐ろしいし、間違いなく伸びますよ。ここからどう進化していくのかしら。
Wednesday – Bleeds (LP)
Big Thiefがメンバー脱退の影響もあり少しバンドとしての完成度のレベルを下げたので、ひとつの生き物みたいなバンド力(りょく)ランキングで世界一位の座をWednesdayが簒奪。
前作でも既にそのレベルにあったのが、停滞することなくますます練度を高めた貫禄の仕上がりで鉄壁のアンサンブルが生々しく刻まれている紛れもない傑作です。
音楽性的な面では当時終わりかけのカップル間の緊張感の反映か、前作では少し重苦しい「凄み」方面での圧を強めていたようは節があったが今回は別ベクトル。アメリカーナとオルタナをより高次で融和させたナチュラルなアメリカンロックでカラッと、しかしドライ過ぎず良い意味で中庸かつ豊潤なサウンドは最初期に少しだけ入っていたエモやシューゲイズをもうほとんど感じさせない。さらっとトンデモない事してるようなさりげなさもあり、しっかり太いけど全てにおいて過剰な部分がなく聴き易さも過去イチでしょう。
MJレンダーマンがツアー不参加のアナウンス出てた時は少し不穏だったが、なんだかんだ録音どころかMVの集合シーンにも常に居るし、逆に彼のソロライブではセットの半分くらいでこっちのボーカルがゲスト参加してたりと、ヨリを戻してはいないんだろうが関係性的なところである種何かをブレイクスルーしたんじゃないかと感じさせる直近の動向で、まだまだバンドは終わらなさそう。良かったね。