プリオキュペイションズが今年5月にリリースした最新アルバムのセッションから未収録アウトテイクの2曲を7インチでリリース。どちらも同時公開されてますが、ビデオがついている一応A面扱いの方のこちらを掲載。
ストップギャップでのリリースにしてはスパンが短すぎるし、件のLPは少なめ8トラックでしたので最初からこの2曲もアルバム入れて10曲にしとけって感じですが、リードタイム的に最初から決めてたムーヴなのかどうか微妙なところです。どうもレーベルがしっくり来てない感じするし色々あるのかもしれないですね。
内容の方ですが同一セッションということでサウンドサーフェスは当然LPのサウンドを踏襲していますが、ノーウェイヴ~ポストパンク風のミニマルな導入が2分半も続いてからの疾走クラウトビートに突入するダイナミックな楽曲で、歌唱にもいつになく熱がこもっており直接的なカタルシスのあるシングル向きのアレンジ。悪くないんですけどミックスが中途半端な気がしてちょっと勿体ないな。
Life Without Buildings – Love Trinity (2025)
グラスゴーの伝説バンド、ライフ・ウィズアウト・ビルディングズが残した最後のプロパー楽曲はこれまでライブ盤には収録されていたものの、スタジオレコーディングはオーストラリアの零細レーベルから出ていたCDにのみの収録で、長らくレア音源と化していたというのが24年の歳月を経て遂に7インチシングルとして初アナログ化で地元グラスゴーのレーベルから再発されます。
ポストロック化したLove is Allのような響きで、淡々とした演奏が熱を帯びていき、よりオルタナロック的な展開をしてまた戻ってくるゆったり構成とポストパンク風のぶっ飛びボーカルがコントラストを形成し、寂寞としたムードはスロウコア的な趣も。非常に美しいサウンドで、最近だと中々ないというか、当時でしか出せないような時代のムードを感じます。凄くいいバンドだったんですね。
SUPERWORLD – Locked Room
他バンド掛け持ちのメンバーばかりで集まったサンノゼのスーパーワールドが単発のニューシングルをリリース。
先に出ていたデビューEPでの路線をさらにライトにポップに昇華したような内容で、ハードコアスタイルのボーカルをあくまでも維持しながら、エモどころかパワーポップ位のキャッチーで元気なサウンドというミスマッチの妙で攻める実に面白い音楽性。
sun-tannedというか、いかにもカリフォルニア的なムードもあるし、ミッドウェスト風なフレージングやテンポチェンジを含む展開などテクニカル要素もあって、意外とこのボーカルが浮いてないというかいい塩梅に成立している創作料理のような趣が乙。バリエーションを聴いてみたくなる感じなので、フルアルバムを期待したい。めっちゃやさしくなったFucked Upって感じ。
今週のLP/EPフルリリース
Black Eyes – Hostile Design (LP)
貫禄の復活。イメージを遥か上回るほどのブチ抜けた出来って程ではないが、リリースの告知と先行曲に触れた時の驚きと期待感が裏切られることはなかった。さすがにあの1stの異常な勢いはないが、20年以上ぶりでコレなら十二分過ぎるでしょう。
基本のダブとノーウェイヴ風アート・ポストパンクっていうところを軸に、アフロ、ポストハードコア
要素とちょっと辛気臭いスモーキーでブルージーなムードが漂う実にクールな音像で、地味ながらエレクトロニクスの装飾も効いてる。表面的なカラーは統一されているがアレンジの幅は広く似たような曲はない。アンサンブルもほぼ文句の付けどころがなく各パートの相性も抜群。相当エキセントリックを装いながら、その実かなり知的だし、円熟味が増した演奏は矛盾している表現だけどもはや整理されたカオティックと呼べる。どのパートもそれなりに目立つし特色がある中、あのハイトーンボーカルはやはりキモで、音楽性の性質上モコモコになりがちな音像を一気に締める必殺の一閃。知った上で聴いてもやはりItalとかと同一人物がコレ歌ってるってのが面白い。
総評するとしっかりアングラ感あるのにわかりやすく派手さもあり、コンパクトにまとまっていて聴きやすい仕上がり。まさに当時の2ndの次、インプロに寄り過ぎてた感のある方向性を少し修正して3rd出てたらこんな感じだろってのをほぼそのままやってる。時が止まってたみたいだね。でも、LPと言うにはコレあと2曲くらいあっていいんじゃないか。