フランスのSSWメロディ・プロシェットによるメロディーズ・エコー・チェンバーが12月に引き続きDominoからリリースする新作アルバムより新たな先行曲を公開。
上モノやメロディのテイストは相変わらずですが、Dungenの全面バックアップであった前プロパー作と比較して骨組みがかなり様変わりしており、マッドリブのレーベルに所属するSven Wunderの共同プロデュースで、ドラムは同じくマッドリブやDJシャドウに参加するドラマー、Malcolm Cattoとのことで勢いヒップホップ〜トリップホップ風のビート組みに超進化。
ドリームサイケ成分はじゅうぶん残っていますが、このサウンドだとボトムがどうしても平坦な感じにはなるので、プログレッシヴ万華鏡のような底知れぬ深さはなくなりました。これはこれでバージョンとしては面白いと思います。でも一つ前に出てた曲も割とこの路線だったし、全体でこのビート感の一本調子はちょっと辛いかもな。
Oneohtrix Point Never – Measuring Ruins
ダニエル・ロパティンことワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが引き続きWarpより来月リリースの新作アルバムから新たな先行曲がビデオ公開。なんだかんだいろんな仕事してるのに、本体のプロパーフルレングス作もずっと2~3年に1枚は出し続けるの本当、働き者だよね。
今回、近年の彼にしてはシンプルに美しい路線の天上アンビエント絵巻物サウンドスケープで、マイルド目な破裂音系のブレイクビートとグリッチノイズがリズムのうねりを形成する壮大な仕上がり。
いつ何時でも音そのもの、鳴りのオクオリティが純粋にすごいのでそんなに凝ったことする必要性がないように思える。どう転んでももはや現代のブライアン・イーノ級というか、ほんと巨人。大ファンとかでは全くないんだけど、好みだとかを超越した遥か高みにいます。
The Weather Station – Airport
ザ・ウェザー・ステイションが最新作アルバムセッションからのアウトテイクを2曲コンパイルしシングルとしてデジタルリリース。そのうち一応A面扱いのこちらをピックアップです。
クオリティ的には高いのにアルバムの構成を重視して選外となったトラックのようで、作品が違えばリードトラックを担えるような強度の仕上がり。明確なロックビートを土台にしながらも控えめなピアノと薄らストリングで装飾された繊細でエレガントなタッチはどちらかといえば一つ前のIgnoranceのテイストに近いか。
マスクしてくる音が少ないからってのはあるんですが、ドラムが非常に理想的な鳴りをしていて聴いていて気持ち良いです。ボーカルもさらっとしているようで、不意に複雑な含みを感じる自然な求心力を持った素晴らしい歌唱ですね。タイトル通り実に空港を感じさせる楽曲。
今週のLP/EPフルリリース
Chat Pile & Hayden Pedigo – In The Earth Again (LP)
先行曲も紹介したと思う。その時の感想と大きくは変わらないが、フルのボリュームで聴くともっとがっつりチャット・パイルしてる重めのトラックも中にはあったりで、想定ほどマイルド寄りの調整ではなかった。そういう曲では今ヘイデン・ペディゴは何してるの?って感じではあるが多分、休憩中。逆にソロみたいな曲もあるし、割合が均等な感じなのでそういう構成なんだろう。
ミソである、コラボの真髄、両者を完璧なバランスでミックスしたようなサウンドはリード曲のM-9がダントツ圧倒的な仕上がりで最高到達点。全部このくらいのクオリティだったらいくらなんでも凄すぎたが平均点は十分で、ノイズドローン的なものにコーラスのかかった繊細なギターが被さってるとか、レイガン・ブッシュがあの声でアンビエントフォークを歌ってるという、単体では有り得ない、だが決して不自然ではない音像がどんどん飛び出す。
でも、それでいてなんか、全体的な印象としてはどこから出てきたのか両者単体ではその印象のないポストロックとも言えるような落とし所に聴こえるから面白い。なんつーか、David Grubbs周辺とか、ジョン・マッケンタイア筋じゃないシカゴ系と言ったらいいか、その辺の雰囲気。まあ、良いジョイントアルバム。あらゆる連名名義のコラボがこの水準ならいいんだけどね。
