スウェーデンのヘイターが引き続きFIREから約4年ぶりとなる新作LPをアナウンスし最初の先行曲を公開。
これでおそらく4thアルバム。前作ではやけに朗らかになっていた2ndの路線を変更して比較的ダークめのオルタナ~ポストパンクのカラーが強化されておりましたが今回もこの曲を聴く限りではどちらかというと後者寄りのアレンジのようです。しかしながら録音・ミックスが非常に理想的に良い音してまして、音像は過去一番に洗練されておりクオリティの進化を感じますね。
シンセとかの装飾も入らない純然たるギターバンドのサウンドだし飛び道具的な特徴もないしで、聴き返してみると1stとそんなにやってることの印象も変わらないんですが、何かこのバンドだなとわかる独自性を感じるのはやっぱりボーカルかな。ともかくホント地味にというか、手堅く確かな地力のあるバンドですよ。
今週のLP/EPフルリリース
Oneohtrix Point Never – Tranquilizer (LP)
いや、最高傑作じゃないですか?少なくともここ10年ではベストでしょう。多作な人なんで、全作品を聴き込んではいないですが今までの遷移を考慮しても実に焦点の定まった、ここに極まれりって感じの内容です。
電子音楽はどうも専攻ではないので小並感になってしまうのは悪しからず、何つったって純粋に出音が凄い。代官山UNITだったか、10年以上前の来日公演をタクワミと観にいった記憶があるけどその時の印象がそのままずっとマイナーアップデートされ続けてここまで来てる感じ。俗にいうアナログ的な太さっていうのと、超高域までに手を加え整形したソリッドなエレクトロニック、IDMでみられるあのテクスチャーを奇跡的に両立させたサウンドで、完璧なこと意外に欠点がないというような意味不明なレベルに完成された質感。
楽曲の内容的なところでいくと、もうずっとWARPから出てるし、存在が現代のブライアン・イーノ的なポジになってるから伝統的な系譜にも連なるような錯覚をするけど個人的にはやっぱり違う気がして、絶対にテクノではないしアンビエントも正直しっくり来ない。どうしても初期のMegoから出てたヤツやそれ以前にドサドサ乱発してた作品群の印象が基礎になってるし、いわゆる「地下シンセ」的なイメージと、そこから少し垢抜けた、もう瓦解しちゃったけど全盛期のEmeraldsがやってた方向性のその先の到達点みたいなモノに感じて、ヴェイパー云々でもないんだよね。それでいて構成に結構ロック的な感覚があると、ホント独特。
オリジナリティとサウンドや演奏の完成度、どちらかといえばやはりその一方が主な武器になってるアーティストが多いし、それが普通かもしれないけど、その両輪ともに規格外の高みにあり、かつ健康や私生活においてメルトダウンしない、漫画家でいうところの休載しない、っていう特性まで備えてるとこういうランクまで行けるんだなっていういい例。変態のロマンは感じるけど、存在としてロマン枠ではなくて超人なわけ。本人のキャラクターもそこはかとなくちょっと不敵な感じなのがまた隙がないよね。
Tobias Jesso Jr. – s h i n e (LP)
アナウンスから1週間程度でのスピードリリース。内容的には驚きはなく期待している通りのものを予想通りのクオリティで出してくれたってところでそれ以上も以下でもないが、そもそものハードルが高い事を考えるとこれで十分でしょう。
全8曲のトータルランニングがギリ30分未満、かつ音楽もごく軽いタッチのピアノ弾き語りに線の細い歌唱が相まってか凄くサラっとあっさりした、食った気がしないようなサウンドだが楽曲クオリティは折り紙付きで、繊細で儚く、過剰にセンチメンタルではない程よい感傷具合の美しい作品。まあ言ってピアノマンでしかないのでテクニカルにあまり語れるところは無く、逆にそれでこうやって場を持たせられる事こそが一流の証拠でしょう。
しかしこれ、裏方としてとはいえあれだけ表舞台で成功した人間がポロッと作れる純度じゃない気がして、にわかには信じがたい。Bleachersの奴がこんなの作れるかっていったら絶対無理だろうからね。まあ、あちらは成功の規模感がさらにケタ違いだから参考にならんかもですが。
ちなみにドラムは結局先行M-8の破裂したやつしか入っておらず、このせいでリード曲が一番微妙な仕上がりに(曲はいいのに)なってるんで、それならもうオミットしてよかっただろという感想に尽きる。
