GVVC Weekly – Week 257

Gia Ford – Falling In Love Again

UK、シェフィールド出身のSSW、ジア・フォードが単発のニューシングルをビデオで公開。
深く感傷的なオルタナバラッドの楽曲で、シックなボーカルスタイルに割とインディどうのではないオーセンティックでタイムレスな魅力のあるタイプですが、実にイギリスらしいドラマティックさにどこか影があるというか、オーバーグラウンドにはなりきれない確かなエッジが感じられて芸術点が高い仕上がり。
今回は特にアウトロの展開が非常に美しく、もう耽美まで行ってしまうレベルで白眉。アルバムに期待です。ちなみに歌詞の方は前の恋人だか配偶者だかをひきずり過ぎてしまっているやや残念な人の内容ですね。


San Fermin – Didn’t Want You To

ブルックリンの準・大所帯バンド、サン・フェルミンが2019年の前作以来、来年2月にリリースするニューアルバムから先行トラックをビデオ公開です。
なんだかんだもう10年はやっているであろう、サックスにストリングスも入ったチェンバー・オルタナフォークに少しポストロック的アプローチも加えてくるいぶし銀な音楽性だった彼ら、今回は今までで一番(当社比)といっていいくらいのシンプルなアプローチになってまして、昨今流行のバンド型SSWインディフォークロックの体裁の中、得意のちょっと優雅なアレンジをプラスした非常に温かみのある地に足のついた大人なアンサンブル。
歌われているメッセージの方は実に普遍的な、失恋をスッキリサッパリ吹っ切ったというような内容です。


Mall Girl – Inzane

ノルウェー、オスロのモール・ガールが来年一月にリリースする新作アルバムから新たな先行トラックを公開。
前作のLPもここで紹介した記憶がある、フォークからエモ・マスロックにまで及ぶかなりの振り幅を持った面白バンドで、今回もレイジーなダウンテンポのオルタナロックからはじまり、突如ストリングスが挿入され大仰に雲行き怪しく一度ブレイクしてからはサイケデリック・ドリームのブルースに突入して戻ってくるという無茶苦茶なスーパー・プログレ楽曲で、その名の通りインセインな仕上がり。
アルバム本編ではもっと目まぐるしく様々な顔を見せてくれることでしょう。このタイプだと、その中には相当気に入る一曲があるであろうという期待を持ちやすいのはある意味いい。

今週のLP/EPフルリリース

Sofia Kourtesis – Madres (LP)

EPは何枚か出ていたはずだけど、フルアルバムはこれがデビュー作になるのかな。アートワークの趣が今までと一気に変わって、その辺はレーベルの意向だろうなと感じられ少し残念だけどサウンドはよりブラッシュアップされ、見事ここに完成です。
基本はボーカル入りのハウス。ペルーからいつ移ったのかは知らないが長い事ベルリン拠点ということでドイツ仕込みかと思いきゃ割にエレクトロニックの圧は鋭くない、マイルドかつウォームな質感の非常に聴き易いやつで、以前から薄っすらフレイバー程度に入っているちょっとエキゾチックとラテンが混ざったような辺境テイストが隠し味。
EP群ではもう少しアンバランスでレフトフィールド然としたサウンドもちょいちょい忍ばせてた気がするが、そこも幾分やり過ぎに感じるほど洗練させて、なんか小綺麗になっちゃったと思う人は思うだろうし何を求めるかによってはその点マイナスともとれる。でも生粋の小綺麗好きとしては歓迎したい調整かな。
ホントめちゃくちゃ優等生サウンドで、メロディアスさの加減もちょうどいい実に優秀な音楽です。重くないエレクトロニック~ダンスミュージック系を求めるそこいらじゅうの店のBGMもう全部これでいいよ。これはアナログ持ってたい金字塔レベルの間違いなく名盤、超オススメ。


Lucky Lo – The Big Feel (LP)

先行のM-5がスゴク良い曲でピックアップしたと思う。えーいわゆるEU圏のオルタナポップ・シンガーという感じのサウンドで、そこそこ中庸にバリエーション富んだサウンドは特別にインディだったり、明確にあるベクトルへ趣向を凝らしたものではない。
最大の武器というか特徴としてはこのカスレつつ深みのある中性的なボーカルと、そこから繰り出される抑揚のついた歌心あるメロディだと思う。女っぽい男声というのはありがちだが逆は一気に数が少なくなるから、それでいて楽曲もそこそこ粒ぞろいにイケるってのは貴重だね。
語り口と佇まいに風格あるから、割と大味なポップスやってもそんな安っぽくなってないところをもっと使っていった方がいいと思う。ちょいレディヘ系というか、アトモスフェリック入った路線もやったりしてるけど、ベースはM-1や、やはりM-5のようなコーラス~フックの強いシングルで今後も攻めたい。なかなかまだ発展性もあると思うし、注目株です。