GVVC Weekly – Week 256

Mumble Tide – The Start Over

マンブル・タイドが傑作デビューアルバム以来で単発リリースを続けるシングル曲はこれで三つ目の公開です。おそらくですが次回アルバムに全て収録されるでしょう。
さて今回はまたちょっと趣を変え、ややシャッフルのニュアンスがある高速ビートに乗ってジャカジャカとバーストする所謂日本で言うところのギターロック的な楽曲になっています。
しかしここは相変わらずのクセ強ボーカルがうまいことハマってまして軽薄なものになっておらず、ぜんぜん聴けますね。でもなんかMiddle Kidsにこんな曲あったような気がするんだよな。


これとこれの複合的な印象だった。前から思ってたけどボーカルがやや同系統に感じる。


The Klittens – Universal Experience

オランダのザ・クリッテンズがリリースした最新シングル。
The Kittensに空目しかしないバンド名、サウンドの方はへっぽこ脱臼インディポップ・ポストパンクのよくある型ではありオリジナリティはやや薄いのですが、非常にツボを心得た的確なアレンジと演奏で矛盾しているようなテクニカルなズレが乙です。
シンガーの歌心もありスーパーキャッチーなメロディが物にぶつかりながら(イメージ)耳に飛び込んでくるレディオ・フレンドリーな楽曲で一聴、右から左に流れていってしまう類のものではありますが、ホーンやギター・ベースのシンコペ抜き差しでひと工夫プラスのちょっといい曲って感じですね。結構繰り返し聴くとじわじわ来る深みが意外にあります。


EKKSTACY – i can’t find anyone

カナダ、バンクーバーのエクスタシーがニューシングルを2曲同時リリース、そのうち片方です。いかついラッパー風の風貌でビーチ・フッシルズ系やシューゲイズフレイバーのあるインディポップちょっとだけ不良版みたいなのを繰り出し続ける謎アクト。
今回は特にしめっとしっとりドリームに足突っ込まないのがよくて、カラっとしています。サウンドバランス的にも楽曲メロディ的にもWild Nothingの1stまんで下手したらパクってるけど、これくらいのシンプルさで気持ちよく聴けるのって意外と少ないのよ。



Songminer with Alaska Reid (Podcast)

もはや楽曲じゃないのですが、面白い試みとしてアラスカ・リードが自らホストを務めるポッドキャストをスタート。交流のあるソングライターを招いては作曲・楽曲・歌詞について深掘りして喋るという内容みたいで、デモを持ち寄ってもらい聴いたりもしながら約1時間リアルな距離感の会話で語り口などから人となりもわかり、なかなか面白いです。
今んとこ二話までが公開されてまして、ゲストはそれぞれSpeedy OrtizのセイディとCHVRCHESのローレンですね。

今週のLP/EPフルリリース

Credit Electric – six (LP)

先行のM-1が良くてマークしてた。全体的にはそのM-1を期待して聴くと若干腰砕けのややアダルトで落ち着いたオルタナカントリーですが、そんなに枯れてはなくてしっとりポストロックとかスロウコア的な趣もあり、カラーは統一されているものの構成エレメントはなかなかバラエティに富むサウンド。エモもほんの少しだけ入ってます。
ボーカルがこれでソツなく上手い感じだったらツマランかもだが、めっちゃインディのヨレヨレ風味で「外し」として素晴らしく機能。ちょっと変わり種のアンビエント挿入したりと必要以上にシンプルにはしてこないアレンジで飽きません。でもこのサックスとペダルスティールの組み合わせによる、質感は違うもののそれぞれにアタックのない音同士の絡みが最もこの雰囲気を特徴付けているかな、なんだかんだ完全に類似のものが他に思い浮かばないので。
ジャケット写真のコラージュ?はサウンドに対して合ってないしそれ自体も超・意味不明な稀に見る謎カバーアート。その辺も込みでちょっと怪作です。


Sun June – Bad Dream Jaguar (LP)

フォークにもカントリーにもエモにも大きくは振れず、実にニュートラルな位置で鳴らすオーガニック・インディロック。ずっと言ってるが前作LPが素晴らし過ぎて個人オールタイムベスト殿堂入りなため、その次がそれを超えることは経験上ないことがわかっていたとはいえ、先行曲いくつかがイマイチで一抹の不安を感じながらのフル。
結果ですが全体的には危惧してたほど悪くなく、楽曲の粒自体は別に劣化してないです。やはりミックスとレコーディングと本人らのステイト・オブ・マインドの違いだと思うね。瑞々しさが大きく減退して比較的ガサっとアーシーな質感になってるのが致命的なのと、アンサンブルの一体感はやや翳ってアレンジや音色の何を変えたとか明確には無いんだけどそこはかとな〜く暗く重いんですわ。
M-8が辛うじて一番、ベストの風情を湛えてるかな。近年ちゃんとしたバンド音楽でここまで自然派、かつレイドバック感がしっかりあるのって本当貴重だから頑張って欲しい。今の生活や環境、関係性的な諸問題を遠くないうちに解決させて、またあのマイナスイオンを発生させてくれ。


Titanic – Vidrio (LP)

先行のM-4がヒットし注目のメキシカン・ニューグループ。アルバムはというとリードトラックの雰囲気からしてた予想よりは全体的にもっと取っ付き易いサウンドでエクスペリメンタルには全然いかない、室内楽アートロック・ポストロックがスペイン語で歌われている。
結構ドラムがバキバキと叩くチェンバーミュージック型の少人数編成ポストロックっていうと比較対象としてはRachel’sあたりに歌が入ったってところかな?一般的にもっとインストを重視する方向性になりがちな編成だと思うけどボーカルがなかなか我が物顔に陣取ってるスタイルなので珍しくていい。
若干まだ荒削り(個々のスキルとかじゃなくバンドとしての成熟度的な意味で)で発展性が明らかに感じられるから、伸び代ありますね。割とシュっとした音楽性なのにボーカルがヘタウマなのが明らかにプラスになってるから歌は上手くならないで欲しいのと、この空間を活かしたアレンジがキモだからその辺は変えずに洗練させていって。安定さすがの名レーベルTin Angelから。