GVVC Weekly – Week 312

FACS – Desire Path

シカゴのファクスが来年2月にリリースする新作アルバムから二つ目となる先行曲をビデオ公開。
この作品、結果的にスティーブ・アルビニの録音にジョン・コングルトンのミックスというこの手の音楽でこれ以上が考えられない最強布陣で制作されてる上に、アルビニの遺作(最後にエンジニアで関わっていた)という、プレス目線でとんでもないストーリーが付いてるもんでリリースが異様な雰囲気になってます。
ここ数作は正直ちょっとアブストラクト~インダストリアルの雰囲気が強く、比較的バンド感に乏しいサウンドが続いておりましたが今回は一気に躍動する身体性を伴った見事なポストハードコアのアンサンブルになってまして、Fugaziや90 DAY MENのような鬱屈して焦燥感のある尖ったサウンド。しかしながら、どこかアトモスフェリックというか、少しふわっとした雰囲気モノっぽいレイヤーも追加されていて、削ぎ落としまくったギスギスの構成ではないところが面白い特徴かな。今回は期待できますね。


Why Bonnie – Rainbows and Ridges (Blaze Foley cover)

ワイ・ボニーが伝説のカントリーシンガー、Blaze Foleyの楽曲をカバー。
キーが変わってる上に女声なのでそれだけでも印象が大きく違っていて、サウンド面にあまり原曲の面影はないですが凄く良い曲だね。オリジナルだったらこれは名曲!って騒いでたと思う。
これアレンジと音作りがかなり秀逸で、まずエレキ弾き語りの中で間奏のパートにだけバンド全体がインしてくる(すぐ終わって戻る)ってのがなかなか見ない(聴かない)よね、そのまま残ってバーストとかはありがちだけども。それとこのバリバリのファズに薄く入ったリバースディレイのレイヤーと全体のテクスチャーが非常に調和のとれた美しさで、歌が主役なのは当然なのだがそれを聴かせるだけではない、明確に意匠を感じる技アリのトラックです。
確かWhitneyも同曲をカバーしてて、あちらもまたこれとは違うキーに変えてましたかね。


Juliana Madrid – Bizarre Love Triangle (New Order cover)

テキサス州ダラスのSSW、ジュリアナ・マドリッドがNew Orderの超名曲をカバーしビデオ公開。
ニューオーダーで一番好きな曲はと言われると個人的にはLeave Me Aloneなんですが、一番「良い曲」と言われたら迷わずこれですよね。この曲の女版カバーが好物すぎて、Desireの時、MUNYAちゃんの時とカバーが出るたび紹介してるんですが3回目もやっちゃいました。レディヘだスミスだの1番2番に有名な曲だとかに並ぶようなレベルで本当に奇跡的な楽曲です。
さて以前も一度掲載したことがあるギリギリ(アウト)インディ枠の彼女、スローダウンしビートレスでかつ女声でこの曲をカバーするとfrente!のバージョンが思い浮かぶんですが(これも毎回言ってるな)、あちらはキーを変えてたのに対しこちらは原曲に準じてます。バーニーのヘロヘロ歌唱に対してこんなに情感タップリに歌われると詞の内容的にメロドラ度がアップし、ここでもインディ的ギリギリラインに不時着しちゃってるよっ!
甲冑を着用し物憂げに佇む映像もかなりニューオーダーを想起させるイメージで、なんか愛を感じる良いカバーだなと。


Double Wish – Soft Skin

L.A.周辺で活動するデュオ、ダブル・ウィッシュが来年2月にリリースするEPから最初の先行曲を公開。今年既にプロパーEPを出してましたが半年で次のEP、かつ来年中にはフルレングスも決まっているようです。
えーと、今回の楽曲ですがEnumclawからヤサグレとディストーションを削り甘くしたようなサウンドで、リズムマシンみたいなのっぺりドラムがベタ付きで鳴るオルタナ式のサンシャインポップちょいダルめ。寡多はあれど幾ばくかのシューゲイズ成分がオルタナロックに標準搭載になって久しいですが、最近のトレンドとしてはそこにドリームも標準搭載になってきた。なんか世の中の人間や人間がする表現・活動とかいろいろ、何もかもスマートデバイス化してねえか?ワンストップで何でもできたり取り込めばいいってもんじゃねえんだよ。と、そういう意味では非常にモダンな音楽。
ちなみに作った本人ら的にはCUREの雰囲気を感じてるようです。全然違くね?ちょっとコーラスのかかったギターの音色だけ。でもこういうのってあるあるで、印象って面白いよね。全ての事にどっちが正解とかないんよ。そう思ったのならお前の中ではそう、それを他人に強いることがなければいいだけなのさ。

今週のLP/EPフルリリース

Aisha Vaughan – The Gate (LP)

ボーカル入りのケルティック・アンビエントっていうとさあ、ここ日本でまで売れたその代名詞みたいなあの人の印象が強すぎて、さすがに直撃世代ではないけどブレイク当時ギリギリこの世に生まれてた位の自分らだと、物心ついた頃にもまだ残り香はあって嫌でも触れる機会は多かった。ラジオとかでも普通にかかってたし。
んで実際これがエ○ヤなのかっつうとそうではなくてね、これは何かっつううと意外とジュリアナ・バーウィックでしたわ。リリースの触れ込みより実際には遥かに洗練されていて、鳥のさえずりや小川のせせらぎみたいなフィールドレコーディングにケルティック・ハープがポロンと鳴ってるところに地を這うようなエレクトロニック・ドローンがさらりと挿入されてたりしてですね、テクスチャーがめっちゃモダンかつハイブリッド。ポストロック的とも言える。言うほど歌いっぱなしでもないしね。
本人ら自称タグでNew Ageってことになってるけど、自分の中ではこれちょっとニューエイジっていう印象とは違うな。もっと自然。スピリチュアルにも寄ってないし、メディテーティヴにも寄ってないしで、なんていうか、これが本来のイマーシヴっていう感じだろと思うが、イマーシヴっていうと既にチー○ラ○関連とかにサジェスト汚染されちゃってて実に印象が良くない。言葉の陳腐化ってや〜ね。ともかく、ナチュラル・アンビエント好盤です。