GVVC Weekly – Week 149

Mamalarky – Meadow / Moss (Official Music Video)

ママラーキーが昨年の傑作アルバム以来となるプロパー新曲をツアー告知と併せて2曲公開。
また少し音がキレイめになっていて、ガレージっぽい乱雑なサウンドは完全に鳴りを潜めた
仕上がり。Meadowの方がA面的な楽曲で、最大のシグネチャーであるこのカラっと乾いた
サンシャイン・ギターが軽快にリズムを刻むダイナミックな展開の鮮烈なストレンジポップ。
ダーティ・プロジェクターズのソングライティングからアカデミックさを差し引いて、後は
ひたすら大自然の太陽の下でカピカピに天日干ししたような音楽で、ナチュラルなサイケ感。
Mossはレイドバックしてスロウに美しい、このバンドらしからぬギミックなく終わる小品。
映像も今回、人を喰ったようなところもなくひたすらリヴィがアウトドアレジャーを楽しむ
爽やかな内容で軽くお洒落ですらあり、キャンピングブランドのプロモ動画のような趣まで
あります。何度も言うけどこれMV用にキャスティングしたモデルじゃなく本人ですからね。

Dummy “Daffodils” (Official Video)

L.A.のダミーがトラブル・イン・マインドからリリースするデビューLPより、最初の先行曲。
ステレオラブがネオアコ化したところにファズ系のオルタナポップとコールドウェイヴまで
混ぜ込んだかなり深い音楽性なんですけど、パッと聴いた感じはキャッチーな軽いインディ
トラックに感じるよう明るくライトに敢えて調整してあるのがわかる。この感想を抱いた後
リリース読んでさらに納得で、昨今アーティスティックと称されるコンテンポラリー音楽は
ポスト含むパンク・エクスペリメンタル・エレクトロニック等ダークでドラマティックな物
ばかりだから、それを避けもっと朗らかな形で芸術性を昇華したいという意図があるようで
物凄く共感する。関係ないけど、高校生の頃downyがインタビューで、音楽性が凄くダーク
ですよね的な問いかけに対し、『明るいとバカっぽいじゃないですか(笑)』みたいな返し
してたんだけど、それを読んだ当時の時点でむしろ逆だろ、イキって邪気眼全開な世界観の
方が余程バカっぽいわと反骨心を覚えたのでした。※個人の感想です。(隙あらば自分語り)

Hand Habits – Aquamarine [Official Music Video]

ハンド・ハビッツがフルレングスのプロパー新作としては2年半ぶりとなるアルバムを公表、
引き続きサドル・クリークからとなっています。そちらから最初のリードトラックは叔母の
クラブで撮影されたというビデオで公開、LPでは2曲目に配置されてまして今回SASAMIが
プロデュースということで納得のサウンド、インディー・シンセポップ感のある軽めの音で
ともすれば近寄り難さすらある彼女の孤高のソングライティング、作家性をうまくライトに
間口を広くすることに成功しているかもしれませんが歌唱は平常運転のため異様な雰囲気。
知らずに聴いたら絶対分からないし、ここまでやるのはこの曲だけなのかが気になる所ね。

Unknown Mortal Orchestra – That Life

アンノウン・モータル・オーケストラがニューシングルを公開。アルバムの発表はまだ無く、
単発扱いですがこのクオリティはまず次作LPに収録される実質先行トラックだと思います。
6月に同じく出してた新曲も悪くないなと思ったが、今回のこちらは1stアルバム期以降で
一番いいんじゃないかな。やりすぎちゃうきらいのある強ねじれ味をフレージング程度に
止めて、独特のバウンシー・ソウル感を全開に発揮した全体的にシンプル仕様の良調整です。

Mumble Tide – Good 4 Me (Official Video)

ブリストルの二人バンド、マンブル・タイドが10月にリリースする(フィジカルは12月3日)
8曲入りミニアルバムからオープニングトラックをビデオ公開。これ凄くいい曲いいテイクの
会心録音で、1番の歌唱が特に音楽の神降りてる出来です。実力以上を出した時にだけ見える
輝きみたいなものを纏ってる。矛盾してるようだが屋外を感じさせる宅録系インディポップ
ってなサウンドで、ボーカルが少しセンチメンタル系の響きで内省的なのと、ソフトサイケ
というか熱病を感じさせる陶酔的なアレンジやトランペットの挿入など、小技が効いていて
淡々と進むビートの中でも退屈を感じさせない。これは期待!ファービー人形も登場します。

Mia Doi Todd – Little Bird (Dntel Remix)

日系ハーフSSWの土井さんがリミックスアルバムを出します。先行で最初に公開されたのは
L.A.コミュニティからディンテルのリワーク。これがいい組み合わせで、サウンドもまさに
Dntelな丸く柔らかい木琴調のシンセトラックは空間を埋めずスカスカに歌唱を響かせつつ、
ソフトにコンテンポラリーな質感を付加するナイスアシストで完成されており、これは良い。

今週のLP/EPフルリリース

Moritz von Oswald Trio (Feat. Heinrich Köbberling & Laurel Halo) – Dissent (LP)

先行トラックM-4がいい感じで少し期待してた。かったるすぎるオナニー・フリージャズの
イントロM-1は絶対いらない。全編でそういうノリの作品ならともかく、全然違うのになぜ
これを冒頭に6分もやっちゃうのか、これで聴く気なくすって。全体的には生ドラムが凄く
躍動感のある生き生きした鳴りで収められてて、元々のこの人の固くて頭でっかちすぎる、
いかにもドイツのインテリオヤジ的な世界観に対して程々に中和しつつ、ラフな質感を加え
聴きやすいものにしている気がするんだよ。ローレル・ヘイローの担ってるパートは鍵盤と
サンプラーみたいで、エッセンス程度のプレゼンスな気もするけどこの近年のあらゆる流行
ビートミュージック、ダブステ以降のアーティスティックテクノ、しかしあくまでフロアに
対応っていうニュアンスは確かに出てるしそれは大御所とはいえオジサンだけでは出せない
フィーリングかもしれないから、本当ナイスコラボだよね。フリージャズ人力モダンテクノ。


Fenne Lily – BREECH (acoustic) (EP)

元々アコースティック気味な曲も多くて、わざわざアコースティック版EPを出す必要がある
音楽性かは謎だけど、この人の強烈に『静』を感じる準・ウィスパーボイスの響きが本当に
魅力的にパッケージされておりなかなかいい音像の作品。ポエティックで繊細すぎない所も
特徴だけど、鳴ってる音の線は全て細い。それはどんな編曲をしても同じなんだね。M-3が
一番、アルバムテイクから変容を遂げてるけどこれが一番いい。M-2はなぜリズムマシンを
入れちゃったんだろう、これじゃあまり変わらない。全曲完全弾き語りで良かったと思う。