GVVC Weekly – Week 157

Courtney Barnett – Write A List Of Things To Look Forward To (Official Video)

11月にリリースされるコートニー・バーネットの新作アルバムから三つ目の先行曲ビデオ。
素晴らしい!これを待ってた、これをやって欲しかったんです。前も書いたことあるけど、
しばらくやってたロックンロール路線は本当にいらなくて、このちょっとニヒルな語り口と
ダル目な喋り歌唱を最高に活かすにはこういうクリーンギターベースのフォークポップとか
ネオアコ風味のあるサウンドがベストなのよ。前の二曲もフォーキーだった気がするから
今回のアルバムが最初のEP以来で一番良くなるだろうね。この人は本当に詩人、言葉の力
強過ぎて感服するわ。今回もタイトルだけ見るとめちゃ前向きだけど勿論そんな事はない。

Converge & Chelsea Wolfe – “Blood Moon”

コンヴァージがチェルシー・ウルフを全面にフィーチャーしたコラボアルバムをアナウンス。
先行トラックのこちら、八分超えの大曲ですが重苦しく陰鬱なドゥームがベースにありつつ
インテンシティの高いツインボーカルが鮮烈で、各々インスト部隊も個性がひしめき合った
非常に素晴らしいアンサンブル。緊張感と集中が高い次元で結実した会心の一発で、好みを
超越して訴えかけてくる熱量に対して真顔になってしまう。構成も単純に後半バーストする
だけというよりは随所で押しては引きを繰り返すダイナミズムの転換も乙です。正直ゴスや
悪魔的な世界観は全く以って好みではないが、音にそれほどその手合いの色は強すぎないし
メタルは感じさせないあくまでもポストハードコア方面から派生したドゥームだからセーフ。
これで映画1本分みたいな完成度、LPでは1曲目に配置(うん、それ以外ありえないよね)。

Holy Other – Lieve (Official Video – 2021)

なんと、ホーリー・アザー復活です。10年近く単発すら一曲も出してないんじゃないかな?
Tri-Angle全盛期、なんやかんやありOrchid Tapesから復帰作をリリースしたBalam Acab、
大出世のClams Casino、なんだかんだまだやってるoOoOOらと共にウィッチハウス本命、
最右翼の一人として目されていた彼は一人『シーツ』のまま時が止まっていたのですが遂に。
本家レーベルはもうなくなってしまいましたが、基本的にはほぼ変わらないサウンドでして
当時から勢力の中では一番シックというか、エキセントリック過ぎずに若干コンサバ気味に
エレガントな風情があった印象で、単純にUK美麗ダーク・エレクトロニックとして響くね。
11月にアルバムが出るらしい。今回は若干ご祝儀掲載な部分もあるけど、楽しみにしとく。

Helado Negro – ‘La Naranja’ (Official Video)

今月発売のヘラド・ネグロ新作アルバムからこれで3つ目となる先行曲のビデオが公開です。
相変わらず気の抜けたヘロヘロ歌唱と、とっちゃん坊や感のある出で立ちで愛嬌たっぷり。
今回はラテンやアンビエントが強かったりしがちな普段よりも少し骨子のしっかりした若干
よそ行きの装いでインディロックに寄っており、フワフワしたリゾートポップな雰囲気です。
オレンジジュースがこ、こぼれちゃう~(この後スタッフが床を舐めて美味しく頂きました)

cktrl – zero (ft. Mereba)

多分コントロール、でいいんだよね。なんでk入ってるかっつうとcan’t keep to realityの
略だからって事で、最新EPから2つ目の先行曲はMerebaをフィーチャーしたトラックです。
アトモスフェリックでラウンジーなダウンテンポ・ミッドナイトR&Bになっておりまして、
彼のシグネチャー謎クラリネットもインとアウトに挿入。重層的なレイヤーが醸す雰囲気が
非常にチル、軽くヒーリングですらある美しさ。なんだかんだギター入れてくれると一気に
親近感湧くというか安心するんですよね。んで、モダンスタイルのR&Bに入れるギターって
まずロックンロールやブルース、トラッドではなくってアンビエント・ポストロック方面の
アプローチになるんでそこでドリームポップと近接するっていう定番構図がお約束だけども
やっぱ好きだなと。本来インストのジャジー・ヒップホップって感じのサウンドだけど歌が
入るとなると一気に印象変わるし、ジャミラ・ウッズのソフト版みたいなメレバもグッドね。

MUNYA – Tonight Tonight (Official Audio)

ムニャちゃんがスマパンのメロンコリー収録曲をカバーです。こちら、デビューアルバムにも
収録予定なので先行曲の一つとして公開みたい。正直、言われないとわからないレベルまで
自分の音楽にしちゃってまして、歌詞と節回しを拝借してるだけの別曲。いいカバーだね…。

今週のLP/EPフルリリース

Gustaf – Audio Drag For Ego Slobs (LP)

ポストパンクに辛口で有名な私が、要素どころかドンズバのポストパンクでしかない音楽を
取り上げるということはつまりコレ凄く良い。まー、イキったタイプでなく洒脱路線なのと
何より楽曲構造がミニマル気味なのはポイントで、思想の主張が強いアジ煽り系でもない為
純粋に音楽として聴けるのもプラス。アフロ入ったリズムコンシャスでミュージカル味ある
劇場型、NYのアート・ポストパンクとどうしてもトーキングヘッズのイメージはしてしまう。
M-5みたいな路線もすんなりイケるのが地力を感じるし、何より基本のバンド力高いってか
アンサンブルがめっちゃナチュラルで単純に上手いだんよね。ボーカルの言霊もバッチリで
躁鬱病っぽさが素晴らしいノーウェイヴっぷり。さすがのロイヤル・マウンテンがリリース。
今がシンプルさとねじれ具合も全てベストだから色々鬱陶しい方向に進化しないで欲しいな。


Maria Elena Silva – Eros (LP)

完全ノーマークだしバックグラウンドも正直わからない、カンザスはウィチタってのは何か
イメージとしては納得だし、ギタリストがプロデュース・ミックスしてるみたいで全体的な
この音像というか、あくまでもベースはSSW系の楽曲なんだけども空間を異様に広くとって
ジャズとアヴァン・エクスペリメンタルの風を纏ったインプロ的な演奏が挿入される音世界
一体どの程度が主要人物自身によるモノなんだろうか…こんなのちょっと他に記憶にない。
ギター、弦バス、ドラムのトリオによる生音ネイチャー・アンビエント・フリージャズ系の
演奏は基本、ビートを刻まずずっとブレイク気味にタイム感の曖昧なセピア殺風景を展開し、
その上に美しくもアーシーで微シャーマニックな寂寞ボーカルが自由に踊る感じで芸術点が
高過ぎる。これバンド名義のがいいと思うし、ジャケットが内容に恐ろしく合ってないね。