GVVC Weekly – Week 163

Nilüfer Yanya – stabilise (Official Video)

先日、デビューアルバム以降に発表された単発のシングル群を纏めたEPをリリースしていた
ニルファー・ヤンヤが次なるフルアルバムをアナウンスし、そちらから先行曲をビデオ公開。
なんと人力ドラムンベース系のリズムトラックに、UKインディロック的な早いパッセージの
フレージングが焦燥感を煽る、完全にギター・ドリヴンの今までにないような路線の楽曲で
新境地です。表面的には下手すると軽くなりかねないサウンドなんですが、流石というかな
本人のパワー、説得力と存在感が素晴らしくて大真面目に聴けてしまう貫禄がありますね。

Josephine Foster – Guardian Angel (Lyric Video)

コロラドのSSW、ジョセフィン・フォスターが来年1月にリリースする新作アルバムからの
最初の先行曲です。もっと古典的なフォーク、オルタナカントリー楽曲をやっているような
イメージでしたが、今回はSEに近いレベルにまでグニョって揺れるシンセが乱反射している
異様な音世界で完全に頭のネジが外れた冥土フォークポップのようなトラックに対し彼女の
いつもの深みのあるクラシックな歌唱のコントラストがミスマッチを通り越してクレイジー。
不意打ちでビビった…この曲だけなのかもしれませんが、これは面白いことになってそうね。

Tallies – No Dreams Of Fayres

トロントのタリーズがデビューアルバム以来のプロパー新曲をビデオで公開しました。今回
アルバム等のアナウンスはまだありませんがおそらく次作に向けての楽曲でしょう。以前は
もう少しギターポップだったり、ネオアコ寄りのポストパンク路線のイメージもあった所が
完全なドリームポップ全振りの音楽性になっていてまさにコクトーツインズ、黄金期4AD感
あふれる深い深い揺れとエコーの天上サウンドでマイルドになったマクサヴァースカンとも。

BEACH HOUSE – ONCE TWICE MELODY: CHAPTER ONE

ビーチ・ハウスが来年2月にリリースする約4年ぶりのアルバムをアナウンスし、そちらから
毎月チャプターに分けて纏まった楽曲をリリースしていくようで、初回は冒頭からの4曲が
公開されました。基本的に特段変わってはおらず、いかにも彼女ららしいサウンドと節回し。
ですがさらにギターが鳴りを潜めてシンセ・シークエンスっぽさが強調されて来てるようで
その点個人的にはあまり好みではないかな。しかしBeach Houseの音楽というのはそれほど
即効性が重視されるものではないし、時間の経過によりジワジワ効いてくる様な側面があり、
ふとした瞬間に思いがけずフラッシュバックしてくるメロディ等が仕込まれていて侮れない。
ドリームポップで片付けるにはもう風格があり過ぎて、テコでも動かない完全な自分たちの
サウンドというものが確立されたソリッドな映画的ブリスポップは唯一無二の存在感ですね。
一応第1章でコンパイルされた動画を載せてますが各媒体普通にバラ単曲でも公開してます。

Ovlov – “Eat More”

コネチカットのオヴラヴが来週リリースする新作フルアルバムより最後の先行曲が公開です。
これまでに発表されていた他の先行2曲も、以前までのようなラフにドライヴするハードな
オルタナパンクとは明確に違う、より色彩の豊かなサウンドになってましたが今回はさらに
中期ディアハンター的繊細なニュアンスまでも孕んだオルタナ・シュゲーイズアンサンブル。
ライブ感のあるものすごくいい演奏で、軽く美しくすらあり、LP全編に期待が持てますね。

今週のLP/EPフルリリース

Casper Skulls – Knows No Kindness (LP)

とにかく演奏がいい。それもテクニカルなサウンドというわけじゃない、小手先のスキルが
どうとかではなく単純にアンサンブル。バンドが仕上がってるというか全体として繰り出す
塊の説得力が異常。音楽性はオルタナ感が強くて少し寒々しいインディロックといった所で
リリースには従来よりもよりドリーミーな路線に近接したと書いてあるがあんまりそういう
印象は受けないな。凝ったフレーズや上物を操るではなく、歌唱自体はそれほど感傷的では
ないにも関わらず憂いと儚さを楽曲に強く付与するこのウィスパー気味のボーカルもキモで
実体験に基づいた風のストーリーを鮮明に、リアルに息遣いが聞こえてくるダイナミックな
展開で昇華してくるんです。カバーアートが内容に全然合ってないからそこ損してると思う。


Irreversible Entanglements – Open The Gates (LP)

フリージャズ・パンクとしか言いようのない演奏に、ポエトリー・リーディングが乗ってる
なかなか穏やかではない雰囲気の音楽。でも過度に刺々しいわけではないし、メッセージも
強過ぎない。一昔前のドイツや北欧系ニュージャズみたいなアッサリさすら感じる箇所まで
ある。これでオケがエレクトロニック系だったら一気につまらない音楽になってただろうが、
フリーとはいえ崩し過ぎずアヴァンではない、いい意味で割と手堅く熱いこの演奏がとても
全体のバランスを素晴らしいものにしていて、7曲で70分超えというランニングも耐えれる。