ザ・ニュー・ポルノグラファーズが3月の新作アルバムをアナウンスし、公開された最初の先行曲はLPでのオープニングトラック。今回、デストロイヤーの彼は基本的に不参加みたいですね。
なんだかんだこの人たちはコーラスにほどよいフックがありながらもインディの淡白さをちゃんと保って飛ばし過ぎないし、強烈にカナダっぽい雰囲気を感じる。
キャリア相応のいぶし銀な枯れ感も中和剤として機能し、正直初期とか勢いのあった頃より近年の方が良いと思えるタイプ。
もうちょっとボトムをスッキリさせていればより好みなんですが、このグシャっとした感じでオルタナロックになっていると言われたらそれもそれで納得はできるかな。
Fort Romeau – Be With U
フォート・ロミューが昨年に自ら立ち上げたレーベル、ロマンティック・ジェスチャーズより単発のニューシングルを公開。
いつも通りのソリッドなテックハウスにシンセ・アンビエントがかかってくるトラックと、サンプリングの声づかいがボーカルハウスまで行かないが、そことの中間ぐらいの印象で絶妙なキャッチー度数です。
途中から和音のシーケンスも追加されコード感がアップすると当然、歌モノ指数も増してくるわけでエモ味も付加されドラマティックに寄っていきますが、決してやりすぎない。
なんだかんだこの人は初期からハードさと甘さのさじ加減がホント素晴らしいし、洗練されてます。もっと本格的な歌モノ作ってもきっと良いだろうと想像つくし、いつかやってくれないかな。
Shana Cleveland – Faces in the Firelight
La Luzのボーカル、シャナ・クリーヴランドが新たなソロアルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
いままではバンドの感じをそのまんまフォーク化したっていうような印象でしたが今回少し変化で、音像的に奥行きのあるサウンドに。
ちょっとこの手のスローなオルタナ感にストリングスがっつり増しだとどうしてもレディヘのフェイクっぽくなってる部分がありますが、焦点が定まらずほどほどに霧散した雰囲気のミックスなため良い意味でゆるいBGM適正があります。
VEIL OF LIGHT – Head-On Collision
チューリッヒのヴェイル・オブ・ライトが2月にリリースする新作アルバムから二つ目の先行曲がビデオで公開です。
前出てた最初の曲が流石にやり過ぎだろってくらいニューオーダーで、今回もまあ大筋では変わらないんですけど、ちょっとだけコールドウェイヴ的なニュアンスが感じられるのと、もうちょっと広義のモダン・シンセポップとして成立してるので、ニューオーダー罪はギリ不適用。
やりたい事に対し明確に順張りキャッチーってハマってるのみると妙な気持ちよさはあるし、可愛げがある。
あとこれやっぱUKやUSのだとこのようなアウトプットにはならないだろうなと。スイスってのが絶妙に良いんだと思うし、ありゃフランスだけど初期のPhoenixっぽさというか、ダサいフェイク感がどうかした時プラスに作用してちょっとチャーミングなものになっちゃうっていうマジック。
Storefront Church – Pure Imagination (feat Circuit Des Yeux)
ストアフロント・チャーチが3月にリリースする豪華客演だらけのカバーEPより新たな先行トラックが公開。
これ、某チョコレート工場の原作のスピンオフ映画のオリジナルの劇中歌でして、50年以上前の楽曲のカバーなんですが、とても素敵にブラッシュアップされたナイスカバー。
まあ原曲の時点からしてどうしてもこれまた某Close to Youの影がちらつくとはいえ、ボーカルにCircuit Des Yeux持ってきてるのがあまりにも好配役でそこのパワーで持っていってる感じです。これ聴かせてくれてありがとうって感じ、ライブでやったら盛り上がるで~。
今週のLP/EPフルリリース
Peel Dream Magazine – Magic Is Pocketed (EP)
突如リリースされた所謂サプライズEP。すごく面白い音楽性になったよね、マイブラのパクりマイルド版みたいなサウンドやってたのそんなに前じゃないと思うが、昨年のアルバムから一気に路線変更。
そこで打ち出していた新機軸を今回はさらに推し進めて、ラウンジを通り越して弛緩した入眠音楽みたいなソフト・ポップ。子守唄と矛盾するほのかなプログレ味は毒素ゼロにしたブランシェ・ブランシェ・ブランシェ。
密室感と寂寞とした感じの中に、謎のインティマシーというかウォームなフィーリングが入る、ある意味ショーン・ニコラス・サヴェイジみたいな部分もある。
最初と最後のインストも凄く良くて、拡張版が聴きたい。このテイストでフルレングス作ってくれ。
Rozi Plain – Prize (LP)
いや素晴らしい、先行は1曲しか聴いてなかったけどそこから期待するイメージ通りの全体像。とても洗練された美しく上品で知的なコンテンポラリー・オルタナポップだけど、冷淡でスノッブな感じはなく、良い意味で土臭さの残る仕上がり。
エクスペリメンタル系の無機質なシーケンスも多少は挿入されるけど、生楽器のアンサンブルが割と多様で重層的な中においてはフレイヴァー程度の存在感で、基本路線はあくまで自然派。メディテーティヴな雰囲気もあり、ごくわずかにですがシャーマニックというかスピった気配も。
これ伝わるか自信ないけど、節回しにちょっとBig Thiefと類似点を感じるような部分もあります。
質感が優しめな中、メロディ自体やコード感もかなり塩味ですんで、明らかにパンチには欠けますが、趣味のいい歌物BGMとしては欠点のない出来でしょう。