GVVC Weekly – Week 218

Fenne Lily – Lights Light Up

NYに活動拠点を移したブリストルのSSWフェン・リリー、プロパー新曲としては傑作BREACH以来の約2年半ぶり、4月にリリースのニューアルバムから最初の先行曲ビデオが公開。
これは来ましたね、今年最初のベスト級トラックですし彼女の過去イチ楽曲であることは間違いなし。
以前の極度にプライヴェートな雰囲気が薄れ、きめ細やかでジェントルなタッチは保ったまま、より開放的な響きとなりポップス的な強度もアップ。
カサンドラ・ジェンキンスをインディロックに少しだけ近接させたような質感の音楽で、ここまでで良いのよっていう絶妙なマナーを守ったキャッチー加減の完璧なギターワーク、レコーディング、ミックスです。考えられうる最高の方向に進みました、あっぱれ!


Tanukichan – Thin Air (feat. Enumclaw)

引き続きトロ・イ・モアのレーベルCompanyより3月にリリースされるタヌキチャンの新作アルバムから、3つ目となる先行曲はなんとEnumclawをフィーチャー。
とは言ってもこれほとんど全面的にイーナムクローのサウンドで、完全に客演関係が逆転してます。あのボーカルとギターサウンドがパンチ強過ぎるんで仕方ないですかね。
あとそもそもプロデュースだけでなく作曲も演奏もアルバム全編トロ芋との共作クレジットになってるから全体の質感はかなりトロ芋印になってて、その中でのこのデコボコ男女ツインボーカルかつレイドバックとダウナーとドリームが混在したオルタナってのがなかなか面白いかも。


Wednesday – Chosen to Deserve

ウェンズデイが昨年契約したDead Oceansからの新作アルバムをついにアナウンスし新たな先行曲をビデオ公開。
昨年発表の例の長尺曲ももちろん収録です。今回も6分超えで、だんだんと曲が長い芸人になりつつある。今までにないほどオルタナカントリーに振り切った楽曲で、やぶれかぶれのエモコアや不穏なグランジのニュアンスは限りなく薄い。
めんどくさいギリギリのねばっこい歌唱スタイルは声質自体のライトさでうまいこと中和。この長さでも割となんだかんだ聴いててかったるくないのはスロウな演奏でも息ぴったりのアンサンブル力かな。
去年の曲やコレなんかもある中でズバッと切れ味鋭い疾走オルタナも入ってくるとバランス良いから、そこを期待したい。


Braids – Evolution

ブレイズが4月にリリースする5枚目のプロパー新作アルバムをアナウンス、最初の先行曲です。
最近、いわゆる歌物というかラファのボーカルが情感たっぷりのある意味アク強めな路線で行っていたと思うから、今回はまたちょっと逆側に触れて少しミニマルなソフト・エレクトロニックな風情かな。
でもシーケンスの上に生演奏の素材で重ねられたドラムが非常にlivelinessのあるいい響きとダイナミズムで軽やかに躍動感をプラス。ボーカルはもう完全に成熟しきったような到達点で、抑えて歌っても十分すぎる情報量で艶やかです。
この人たちは個人的に生でライブを2回観てる印象もあるけどエレクトロニック同期とオーガニック演奏の利点をうまく両立させるスキルがとても高くて、その辺の妙が面白いですよ。


Bonny Doon – Crooked Creek

デトロイトのボニー・ドゥーンが昨年ANTI-との契約発表時に出したシングル以来となるプロパー新曲を公開です。
またまたアルバムのアナウンスなどはなく単発の体裁になっています。何で?まず間違いなく収録曲でしょうけどね。
Woodsist行ったりThird Manからライブ盤出たりとなかなかフラフラしている彼らですが音楽性の方はブレずに相変わらずで、今回もウィットあふれるおもしろ歌詞と、少しおどけた雰囲気でウォームかつ王道な趣もあるモダン・フォーク・ポップ。良いバンドだねぇ~。

今週のLP/EPフルリリース

Rian Treanor & Ocen James – Saccades (LP)

フューチャー・アフロビートのエレクトロニック・ジャムといったらいいのか、インプロ的な要素とIDM的な要素が共存していて、身体的かつエスニックなカラーもあるトンデモ作品。
テクノとアフロのミクスチャーって安易なモノだと勢いソリッドになりがちというか、どうしても鋭利で硬質な面が強調されがちなんだけど、今作はフリーフォーム生演奏のリアルタイム感覚や、ウォームなフィドルだったり、アナログにもデジタルにも聴こえる謎の打楽器だったりの良い意味で乱雑な響きと、カッチリ整理・エディットされたエレクトロニクスが絶妙なバランスで相互作用し、表層的な肌触りとリズムの両方に自然とオーガニックな雰囲気が香る真のクロスオーバーサウンドに到達。
更には殺伐としていなくてアンビエント風のレイヤリングまであるんで、どこまでもイイとこ取りでリスニングとフロア両対応というスーパーぶり。
しかし綺麗に終わったのに最後のリミックス蛇足すぎる、なぜ入れたかな、M10は聴かないでいいです。