GVVC Weekly – Week 232

Julie Byrne – Summer Glassom

ジュリー・バーンがGhostly Internationalと契約し実に6年ぶりとなる新作アルバムをアナウンス、最初の先行曲がこちら。
随分長いこと音沙汰なく、前作のI Live Now As A Singerって曲名が完全に逆フラグになってましたがここで面目躍如の復活です。アンビエント感をより強めつつスケールの大きい割とリッチな音像になってまして、かなりイイ方向に進んだなと。
曖昧さを残し、ラフなようでいてニュアンスの妙でアンビエント的にも機能させるという昨今の女声SSWのブームにおいて今にして思うと彼女がハシリだったと思うし、クセ強くないのが武器にも足枷にもなる感じですが、エレクトロニクスも足してきて間口の広がりそうなサウンドになりましたね。ルックスにも合ってるし、再ブレイク期待できるかな。


Long Beard & Ryan Galloway – Posters

ロング・ビアードの前作アルバム以来となるリリースはCryingのRyan Gallowayが全面参加した単発シングルがビデオ公開。
コラボの甲斐あって本人だけの時よりも随分とポップに、特にベースとドラムのフレージングが非常にクライング印の特徴的なアレンジになってまして、逆にいつも通りの平常運行過ぎる本人のギターとボーカルが良い対比になってます。まさに両者のフュージョンという感じですね。
ちょっと物悲しげなイメージのある人でしたが、曲にあわせてか映像もいつにない楽しく朗らかなものになってます。それでもこのちょっと儚そうな雰囲気が魅力的でシグネチャーになってるポイントでしょう。


Tim Kinsella & Jenny Pulse – Sun Inspector

ジョーン・オブ・アークを閉業したティム・キンセラはここのところ妻とやってるGood Fuckというバンドでリリースしてましたが、昨年位から同じ組み合わせなのにバンド名義ではないソロの連名で作品を発表してました。
今回そちらの方でKill Rock Starsとサインしたみたいで、最初のリリースとなる新曲ビデオが公開です。
前のミニアルバムなどはこの人らしいエクスペリメンタルポップという感じでしたが、今回ちょっとダークなクワイヤー・ポップというか、インディ暗黒聖歌という感じでブラック・サバスだとかそういう雰囲気と、コールド・シンセポップはもちろん80’sノーウェイヴ的ニュアンスもあって非常に面白いサウンドしてますね。


The Antlers – Rains

ここのところ突然単発シングルをリリースするというスタイルが続いているジ・アントラーズまたまた作品のアナウンスなどはなくワン・オフの楽曲が公開。
ほとんどピーター・シルバーマンだけで演奏し、相方はささやかな電子パーカッションのみ参加みたいです。
パッと聴いたサーフェスの印象は穏やかで流麗かつ清涼感のあるものなのに、音響やドラムの質感などで尖りを目立たないようにしかし確実に付与し、その手際が職人技なんですよね。しれっとやってんの。
結果アコースティックポップ・ポストロックとでも呼べるような仕上がりのサウンドは、ほんと微妙な違いではあるのですが、他を一線を画す唯一無二の音楽性です。


Rachel Bobbitt – Party Police (Alvvays cover)

トロントのSSW、レイチェル・ボビットが同郷のAlvvaysのデビューアルバムから一番いい曲
を本気のカバー。
昨年、Jorge ElbrechtミックスのEPを出してましたが、今回はちょっとそこでのサウンドとは違って、この超名曲をシマー系のリバーブまんま使ったお手軽シューゲイズアンビエントで調理してます。これが意外と噛み合わせが良く、オリジナルと言われても信憑性ある自然さで楽曲の新たな側面を提示できてる。
この楽曲自体のポテンシャルはさすがキアヌ・リーヴズまでもが聴いてる世界定バンドとなったオールウェイズといったところ。
最後バーストしない手もあったと思うが、まあちょっと音響的にも大味なスタジアムロック風の雰囲気あるからこれでいいのかもね。

今週のLP/EPフルリリース

Indigo De Souza – All of This Will End (LP)

あの大傑作アルバムを経て、直ちにステップアップを予想してたがSaddle Creek継続ということで印象は良い。前作でも言ったが随所の演奏やアレンジがどこか王道ぎみというか、インディというより絶妙にメインストリームっぽいマナーがあって、メランコリック・オルタナポップという風情と躁鬱の双極をダイレクトに表現する素晴らしいボーカルでかなり派手な音楽だしこのままでもメジャー映えするだろう。
しかし今回、何か変わったか少し満たされたのか、前作ほど精神状態が荒んでるダウナーなオルタナの鋭利さはなく、ギターの歪みと金切り声が一体となる瞬間もあるにはあるが、それほどドス黒いものを感じない。そのあたりで局面でのカタルシスには劣るかもしれないが、これはこれで疲れないから安心して聴けるしアリかな。それでいて芸術性もバッチ保っててルックスもパンチありと欠点が無い。でもどっちが名盤かと言ったら即答で前作でしょう。もう少し荒く崩してもいいと思うな。