GVVC Weekly – Week 279

Cassandra Jenkins – Only One

カサンドラ・ジェンキンスが7月にリリースする3年半ぶりのニューアルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
これで辞める覚悟すらあったという前作での急なブレイクスルー、一気に名声を確かなものにした彼女。実際それ以前の作品とは比較にならないほどの圧倒的傑作で当GVVC的にも2021年の年間ベストアルバムかつ収録曲はベストトラック(どちらも圧倒的一位)に認定し一生聴き続ける勢いですが遂にフォローアップ作がお披露目となりました。当たり前と言うかレーベルはステップアップで今回からはDead Oceansリリースです。業界受けが強い印象もあるので納得なのですが客演もPalehoundにHand Habits、Katie Von Schleicher等かなり錚々たるメンバーが参加している模様。
さて内容の方ですがミックスやサウンドの質感は基本的に前作の路線を継続しつつ、今回のを聴く限りでは楽曲がややポップス寄りになっているようで非常にスムーズないわゆるソフィスティ・ポップ的なメロディをジェントルかつ知的で柔らかいアンビエントやニューエイジのタッチで包んだような趣です。まさに正当進化という感じで期待されるものに対してほとんど完璧な回答と言えるでしょう。これは嬉しい。


King Hannah – Davey Says

来月末にリリースされるキング・ハンナの新作アルバムから二つ目の先行曲がビデオ公開。
タイトルトラックかつオープニングトラックであった先のリードシングルとは打って変わって90’sのUSオルタナロック的な趣にトライした完全なる新機軸。前作LPでのシグネチャーであったスモーキーでサイケな雰囲気は影も形もなく、相方もガッツリ歌って男女ツインボーカル仕立ての青春やドライブを感じさせるバンド史上最軽量の3分間ポップスになってます。
これで凄く良いかと言われるとなんともな部分はあるが、フルレングスにおいてこういうのも挟み込むっていう機能的な部分においては非常にスパイスになるかな。映像の方もサウンドに合わせバンドでわちゃわちゃやっている類のもので、彼女らこういうビデオは初めてじゃないですかね?


Iress – Falling

L.A.のドゥームゲイズバンド、アイレスが7月にリリースするニューアルバムから最初の先行曲を公開。
LPでのオープニングトラックに配置された今回の楽曲はドゥームやブラックの要素は薄めで、さらっと重たいシューゲイズくらいのさじ加減に落ち着いており聴き易い。ボーカルが上っ面だけのものではなくちゃんと味わい深めのしっかりした歌唱で複雑な表情を湛えており、絶妙な抑揚のコントロールで決まったスロウコア的なアレンジとの噛み合わせもバッチリで一気にトラックの芸術点がアップ。
正直アー写の感じとかも笑えないレベルで格好悪過ぎるしどう考えてもあまり趣味のよろしい人たちではないが、この曲は中々に会心の出来でしょうね。


Bloomsday – Virtual Hug

6月にBayonetからリリースされるブルームズデイの新作アルバムより三つ目の先行曲がビデオ公開。
前のアルバムも確か良くて、収録曲をその年の年末ベストトラック30には入選させた気がする。よりマイルドに普遍的になってきているような気がしますが基本は変わらず、本当に特別な部分が少ない超・ソングオリエンテッド型のシンプルなSSWバンド・フォーキー・インディロック。サウンドには特筆するところがないのですが歌心が素晴らしく、割と深めにエモーショナルでありながら苛烈にならずさらっと淡い感じの印象になっているところがこの音楽たらしめているポイント。
映像の方は本人とWhy Bonnieのボーカル、Blair Howertonが主演したもうすぐ離れ離れになってしまう親友(?)との楽しく切ない1日です。

今週のLP/EPフルリリース

Alex Sopp – The Hem & The Haw (LP)

ん〜と、アートポップかエクスペリメンタルポップになるのかな?方向性だけで言えばGlasserとかにちょい近い感じだけど、一通りコンポーズはやるにしろ演奏に於いてはフルートが主楽器ということで本人以外にも管弦楽隊のサポートが入り全体的に室内楽風のニュアンスが強い。そのためこの手の音楽性の女性ソロアーティストにありがちなエレクトロニック寄りのものではなくザ・宅録の密室っぽさも無くてもっともっと開けた音像になってるのがポイント。
映画音楽風になる曲面もあって、誤解を恐れずに言えばビョーク的な部分もあるっちゃあるから、コンテンポラリーに豪華なサウンドになったHanne Hukkelbergって感じかな。幽玄さと隣り合わせの紙一重であまりファンタシーとか毒々しさのある世界観に振り過ぎたやつも個人的には結構受け付けないんだけど、そっち行きすぎることもなく程々なさじ加減で元々受けてる正統派な教養(音楽のね)からか、あまり道を外れすぎないようにオートで自己矯正かけてる雰囲気が出ていて良い。特筆する1曲があるわけじゃないけど通しで聴ける確かな強度と品格あり、オススメです。


Kindsight – No Shame No Fame (LP)

RAMA LAMA(スウェーデン)の看板バンド(でもデンマーク)2年ぶりの2ndフルレングス。相変わらずボーカルがどこまでも透き通っていながらコッテリ甘くコケティッシュに派手な声で、歌唱そのものは控えめの正統派インディ仕様と実に素晴らしいポテンシャル。ここまで歌がいいとメロが多少弱かろうがそんなの関係ねえ。
サウンドに関して表層の質感は前作とほぼ変わらずでプロダクションはおそらく同一背景。アレンジの方向性としてはM-2とかに顕著ですがちょっとシューゲイズ味がアップしているような感じですかね。このバンド意外とオルタナ・ポップパンクで、いわゆる一介のネオアコ・ギターポップというような範疇からは少し外れたとこにいる。楽曲的なとこでは全体的に前作よりもクオリティ上がってますし順当に伸びてる感じです。ちょっと前Run For Coverから出してた同じ北欧のThe Sun Daysに近くなったかな。
しかしこの人たちEPとか間のリリースでも全然ダメな時がホント無いから、相当状態や関係性の良いバンドなんでしょうね。もっとデカ目のレーベルに行っちゃう可能性もあると思うし、なんか滅茶苦茶なキラーチューンをいつか一発出してきそうな予感がして期待してる。(M-7とかも相当いい線いってるけど)
あと伝統的に間違いなく日本受けのするタイプだから来日公演とかもどうですかね。セッティング手伝いますよ。