GVVC Weekly – Week 280

+/- {Plus/Minus} – Gondolier

プラス・マイナスが来月リリースする10年ぶりのニューアルバムから二つ目の先行曲がビデオ公開。
繊細なシンセ使いとインテリジェンスを感じさせるアレンジ・サウンドテクスチャーに枯れエモのニュアンスが入った非常に彼ららしい楽曲でブランクを感じさせない仕上がり。途中からジャム的な展開になり7分近くあるのですが、いぶし銀の滋味深いアンサンブルが展開され全然飽きません。地味だけど。あと同時にちょっとダサいのもご愛嬌で、それはもはやVersusの時からなので。
確かブッチャーズとスプリットを出していてライブも生で観たことあるんだけどドラムの人が相当に自分好みの演奏で、今回のトラック、特にジャムパートのフレージングにはその時の印象がそのまま盛り込まれているもんで当時を思い出しましたね。


Softcult – One Of The Pack

トロントの双子女子によるソフトカルトが来月リリースする新作EPから新たな先行曲をビデオ公開。
いくつかリードトラック出てますがコレが圧倒的に一番良いでしょう。90’sオルタナロックを過度に湿らせず、そこそこカラッとしたまま思い切りシューゲイズにドライヴさせたようなサウンドで、ドライとウェットの共存具合が絶妙に素晴らしく楽曲やメロディうんぬんより音作りとミックスの妙で成立している作品。シャウトのパートもよくぞ入れたって感じです。
この曲だけに関して言えばSlow Pulp的な方向性ですがあちらと違いビジュアルイメージにちょっと黒くゴスな雰囲気が加味されていてキャラクターの方向性が全然違いますし、全体的な普段のサウンドもこっちの方がわかりやすくシューゲイズやドリームの要素が強いかな。


Justice – Neverender (with Tame Impala)

ジャスティスが新作アルバムのフルリリースと同時にテイム・インパラのケヴィン・パーカー客演曲のリリックビデオを公開。
同クレジットのコラボは2曲あり、こちらは公開されていなかった方の楽曲でLPではオープニングトラックに配置されています。内容の方はこっちを先行で切った方が良かったんじゃないかと思える、実にJusticeらしいロック系四つ打ちエレクトロ・ダンスポップになっていて、Kevinのボーカルも心なしか本体バンドの時よりメロディアスで鮮やかに響いてくるし気軽に聴ける景気のいい音楽。
しかし、この人たちの出だしの頃ってフレンチエレクトロ全盛期で、ジャスティスはチルウェイヴにおけるWashed Outポジションだったし、Tame Impalaって今じゃ考えられないけど最初Modularから出してたからね。西のEd Banger、東のModularってな感じもあったしそこにKitsuneがまとめに入ってmoshi moshiとかもいるみたいな雰囲気だったはず。今や世界的な知名度や経済的な成功って意味では天地差ついてると思うけど、流れを全てリアタイでみてきてる人間にとってはここでこの両者のジョイントトラックが出るって感慨深いよね。
正直ものすごく良いとかではないんですが、それぞれ味というか特徴がちゃんとお互いを一切スポイルすることなくガッツリ発揮されていて、この歴史背景も込みで非常に素敵な意義あるコラボだなと。

今週のLP/EPフルリリース

F.S.Blumm – Torre (LP)

もはや大御所レベルの存在ですが、何年やってんだろ、20年は余裕で超えてるはず。直近ではニルス・フラームと連名作出してたかな。
この人、初期のリリースレーベルや出だした頃のブームとかもあって日本ではエレクトロニカ枠に置かれてたりするけどとんでもない、今回なんて電子音ゼロの完全なる室内楽アンサンブルって感じで素晴らしくアコースティックな響きとドイツの几帳面に張り詰めた雰囲気が融合した傑作です。
全編通してアンビエントって印象ですらあまりなく、主役のチェロとクラリネットがウォームかつ密度の高いリッチな質感で絡みまくるインストの楽曲群は打楽器こそ入っていませんがダイナミックな展開が明確にあり、趣は軽くポストロック的。
これくらいの音楽をヒトコトで分類するジャストな言葉欲しいよね。ポストクラシカルではないし、tomlab系よりはもうちょっとアカデミックな方面に触れてるしで、インストのチェンバーポップが一番近似値かなとは思うけども。FSブラムむかしIt’s A Musicalの人と歌入りのドリームフォークみたいな連名のアルバム出してた時もあったけど(確かNils Frahmがピアノ弾いてた)何かソレ思い出したな。ともかく程よくオトナなサウンドで、これはオススメです。


Corridor – Mimi (LP)

ちょっとサイケでポストパンクなオルタナ、クラウトやアートロックの趣も若干有りという辺りで方向性は色気が全く無くなったDeerhunterというか、あとまんまOMNIみたいな曲もありますが全体的にクドくなくて重くならないのは割と好印象。
ボーカルがめちゃ弱いのが少し気になるけど、そのぶんで匿名性というか悪い意味ではない淡白さ、ちょっとミニマルな雰囲気が付与されている側面があるので、完全にギター主軸のロック範疇バンド音楽でありながらBGM適正は高いです。フランス語だし、なんとなくお洒落な響きをしているとも言える。
一つ前のアルバムからリリースしてるみたいですが、正直SUB POPっぽくないと思うんですよねこの音楽。そこが意外なのもあってピックアップしました。意外にもう10年以上やっているみたいですが、まだまだ発展の余地ありな気がします。悪くないですし昔の作品と比べると明らかにクオリティも上がっていますが。熟練度というよりもう少しだけ何かスパイスというかクセが入ると一気に化けそう。タイトルはこのジャケ絵の猫(?)がカワイイって事なのかい?