GVVC Weekly – Week 91

Jayda G – ‘Both Of Us’ (Official Video)

ジェイダ・ジーの新作EP、と言ってもクラブ仕様なので実質的には両A面12″シングルですが
そのうちの片割れは、あまり今までの印象にないスタイリッシュにタイトなボーカルハウス。
綺麗なまま普通に終わりそうなところ、中盤でBPMを派手にスローダウンして完全ブレイク
入ったと思ったら手拍子よろしくほぼアカペラタイム。いやいや、これは盛り上がるでしょと
思ってたらお約束の定番みたいで、一気に本当の現場のフッテージがカットインです。反則。
踊らしてんのにメリハリのあるブレイクではなく徐々に減速させて止めるって本来の4つ打ち
クラブマナーで考えるとむしろご法度な筈、歌モノのハウスだからこそできる芸当だと思う。

Widowspeak // Breadwinner (Official Video)

ウィドウスピーク、3年ぶりの新曲はまだアルバムディテールなどはなく、単発シングル。
相変わらずモリーの歌声は素晴らしく、かなり土臭いサウンドがこの涼しげなボーカルで
中和されたある種独特な音楽をしてましたが、アーシーでヒッピーサイケな感じは減退し、
かなり穏やかなオーガニック自然派ダウンテンポのスロー・インディロックになってます。
この一曲では何とも言えないところですが、正直このままではちょっと物足りないかな。

Owen – On With The Show [OFFICIAL AUDIO]

2つ目の先行曲。こないだも言ったが、アメフト化と言うか、これじゃもう違いがないよね。
ギターワークとかはまぁともかく、オーウェンの時の歌い方ってのがあった筈なんだけど、
アメフトの新作とどっち聴いてるのかわからない。まあ、悪くないんですけど、再結成後の
人気がこれほどまでに芳しいってのは本人も予想していなかったんじゃないかな?なんか、
恐ろしく商売っ気のない兄とのあまりの対比もあって、悪い意味で色気を感じてしまいます。

Genevieve Artadi – ‘Living Like I Know I’m Gonna Die’ (Official Video)

Brainfeederからリリースされるジェネヴィエーヴ・アルタディの新作アルバム先行曲です。
これが、ちょっと厭世的でダーク・エモーティヴな方向性がもはや瞑想の境地まで達してる
スピリチュアル・フューチャーR&Bと呼びたい世界観になっていて、真顔になってしまうね。
もともと歌心のある感じの人だったけど、今回時に歌詞もいいからすごく引き込まれます。
完全にたまたまだろうけど本人のメイクが日本の90年代ギャル的なものに見えて仕方ない。

boy pablo – “hey girl”

ボーイ・パブロ君がついにフルアルバムをリリースするようです。正直、話題になってからの
タイム感でいうと機を逸した感ありますね。若いから進化が早くて当然なのですが、すでに
出た頃よりも洗練、完成されてきてる。しかし、このあまりにも日本ウケ良さそうな音楽…
わかりやすいメロはソフトにポップで、北欧系とタヒチ80とかのフランス勢、そこに若干の
デマルコ味と、海外インディ好きホイホイの度が過ぎて、ユニオンが激推しで展開するのが
目に浮かびます。まあ、それで良いのです。その市場がここにはあると言うことで、無いより
いいですよね。さて、この先どう向かうのかな?特に変える余地が残されていない音楽だが。

Protomartyr – Michigan Hammers (Official Video)

プロトマーターの7月リリース新作アルバムから、3つ目のトラックはビデオでの公開です。
いつも通りで、特段目新しさはないんですがイントロのパートのアンサンブルがなかなか
カッコいいなと思ったので。全体の音色は若干ですが初期より爽やかになってきてるような
感じもしますね。演奏はいいんですが、ポストパンクとはいえども、ボーカルがちょっと
弱いと思うんだよなー。もっとクセがあるか、ミスマッチな感じかに振り切って欲しいです。

Art Feynman – “Not My Guy”

約一ヶ月後にリリース、ルーク・テンプルのオルター・エゴによる新作からさらなる先行曲は
トーキングヘッズがオリエンタル/トロピカル化したようなネバっと腰にくるサウンド。
ファンク的にもクラウト的にも聴こえるという矛盾した絶妙なグルーヴで、乾いた質感です。
終盤の場当たり風なソロプレイも非常にキマっていいテイクが出てます。何回録ったのかな?


George Clanton & Nick Hexum – Aurora Summer

言わずと知れた100%エレクトロニカのジョージ・クラントンが311のニック・ヘクサムとの
連名でアルバムをリリース。これ面白いなと思うのが、聴いて一番にWashed Outの初期EP
連想したことで、あれをもっと現実的な音響でもう少し身体的にしたものみたいな音楽だと
思うし、先祖返りみたいな現象とも言えるんじゃないかな。本人は絶対そんなつもりはない
だろうがこれ、このまま一言で表現するならチルウェイヴの楽曲、が一番しっくりこない?
いくらカリスマがやってるからって今これ誰がわざわざ聴くんだと思うが、中高生の時点で
ヴェイパー・ウェイヴがもうそこにあった世代からすると目新しかったりするんだろうかね。


Young Ejecta – Crayon Cactus

エジェクタ改めヤング・エジェクタ5年ぶりのプロパー新作が出るようで、最初のシングル。
ネオン・インディアンのライブバンドで強烈な存在感を放っていたシンセのリアンと、あの
OPNとGames、Ford & Lopatinなどをやっていたジョエル・フォードのユニットで、以前
デビューシングルの超スーパー名曲をかなり聴いた覚えがある。それ以降のEPなんかは結構
アブストラクトな路線になっていたんだけど今回ちょっとリードトラック然とした方向性の
楽曲が出たね。ベコベコシンセの、ダサめな路線だけど、IDIB勢の互換品にもなる感じかな。
ちなみに、本人が脱いでるのはデフォで、コンセプト。むしろ前隠してるだけ今回マシだね。

Katy Kirby “Tap Twice”

ナッシュヴィルのSSW、ケイティ・カービィが過去のEP収録曲を再録して改めて発表です。
おそらくこれ自信作なんでしょう、終盤ダイナミックに展開するところが確かに凄くいい。
こう言った楽曲で2分半ってなんか少し珍しいのと、最後30秒のアンサンブルが、ちょっと
ビビる位の纏まり方で、ゾーン入ってます。バンド編成のライブも中々でこれ、生で観たい。

今週のLPフルリリース

VARSITY – Fine Forever (LP)

このバンドは前から好きだった。本当にサウンドフォーマットとしてはこれといって特徴が
ない、いかにも大学生がやっているインディ・ポップの標準的な編成、手法なんだけども、
メロも細かいアレンジもキラリと光るどころじゃないグッド・フレーズがどんどん飛び出す。
最高の普通と言ったらいいか、あくまでも奇を衒わないレベルで一筋縄ではいかない展開と
やけにグッとくるメロディ。もちろん声がいいのもあるが、元の素材以上を確実に引き出す
編曲なんです。2018年のアルバムもシングルも良かったから期待してたんだけど、順当に
進化。alvvaysの感じからギタポを減退させて、もっと幅広く、オルタナ、サイケ成分を
付加したようなバランスです。派手さはないけど、これほんと末恐ろしいからよく聴いてね。


Nailah Hunter – Spells (EP)

LPじゃなくカセットEPですが。マルチインストゥルメンタリストとのことだけど、ハープが
メインなのかな。音だけ聴くと、ニューエイジ?って感じではあるんだが、そこはかとなく
オーガニックな響きがあって、こういう鳴りだとシンセ系のそれより俄然あたたかくなるね。
ジャケットのイメージや、曲名なんかにも出てるけど、幻想ファンタジックな世界観があり、
この表現が自然に成立するのがいいね。すごい短くて、6曲で11分くらいの作品です。