今年もやってまいりました恒例の年間ベストトラックTOP30です。例によって厳密に2024年に初公開された楽曲のみです。毎年おおよそ12月25日~27日の間に公開してるのですが、決めてるわけではなく偶然そうなるのよね。(6年連続)
ちなみに今年は30にするのに結構削ったし、まあまあの豊作でした。手前味噌ですが全体的な顔ぶれっていうところでは他のどこにもないようなセレクトかと思います。それではどうぞ!
30. Dog Park – Trial and Error
うーんと、ちょっと宅録っぽいプロダクションのバンドサウンド系インディポップ、ドリームポップっていうところであまり複雑なカラーではないのですが、モコモコしててちょっと気怠い雰囲気に意外と元気な演奏が同居した愛嬌のあるサウンドで、ちょっとあどけない感じのメロディも素敵。パリのグループだけど、ブラジル人、アメリカ人、フランス人の混合っていうところも面白いかな。個人的にはTotally Mildあたりを可愛らしくしたような塩梅に感じます。まだこの先も気になるね。LPが今年出たのですが、一緒に収録さてる2年前にリリース済みのシングル楽曲の方もなかなか良いですよ。
29. Tomemitsu – Pizza With You
ちょっと安っぽさがボーダーラインギリギリのところで正直、入選させるか最後まで迷ったんだけども、どうしてもこのコーラスのフレーズが年間通して耳に残っており、入れないわけにはいかなかった。キレイになったアリエル・ピンクみたいで、Dent Mayあたりのポップネスも感じさせる、カリフォルニアの風を強く感じさせるメロディとサウンドは素晴らしくキャッチー。ベースがなかなか一曲通してウネウネ楽しいフレーズを弾いており主張強めですが、シンプルなプロダクションの中で全然邪魔になってなくむしろプラス。もうちょっとだけ何か深みを追加する要素があればもっと名曲になった気がして少しオシイです。
28. Nap Eyes – Feline Wave Race
いいね、彼らのやる中で一番好きなタイプの楽曲…なんだけど、ちょっとあまりにも4年前の年間ベストトラックで堂々1位になったあの曲の残像がチラつくもんで、いくぶん低めの順位に配置してます。そりゃ好きで当たり前だわ。アレンジ的にはゆるく弛緩しながら淡々といつまでも続くようなレイドバック・オルタナフォークで、非常にシンプルな作りでありながらこの気の抜けた語り口のボーカルと散漫なギターソロなどでアブストラクトな風情とアンビエント感がプラスされており、不思議と6分もの間それほど単調さは感じない。この方向性をもっともっと洗練させてって欲しいな。
27. Glixen – Sick Silent
このバンド、女2男2の4ピースなんだけど、なんかメンバーのナリが面白いの。オルタナに大別される音楽をおよそ演りそうにない感じで、そういう意味でもヘヴィ系のシューゲイズっていうサウンドの部分でもCold Gawdあたりと少し被るね。この楽曲はすごく重くて深いんだけど刺々しくなくて、聴き疲れしない歪みの壁がベッタリ張り付くモダンロック・シューゲイズサウンドだけど、ギタープレイに流行りの90’sフレイヴァーやemoのテイストも感じて、つまりShiner的な部分もあり、男もちょっと歌ってくるのが面白く、全体のテクスチャーが印象的でした。
26. Omni – Plastic Pyramid (feat. Izzy Glaudini)
元々好きだし、何度も紹介してきてるけど基本的には一発芸というかサウンドにものすごく強烈な個性があるタイプのバンドなのでちょっと飽きちゃう。でもこの曲、ホントこの女性ボーカルの客演が入ることでとんでもなくレンジが広がり、元来の良さを保全したままに印象が一気に華やかになった奇跡的な仕上がりで、こんなにプラスを与えるゲストボーカルってあるのかと感心したもの。こりゃパーマネントの準メンバーになってもらった方が良いって。終盤の一瞬の場面転換も蛇足にはなっておらず非常にナイス。
25. Goat – Goatbrain
なんだかんだこのトラック今までのゴートで一番ハマった。なんだろうね、凄くシンプルなんだけどバンドの魅力がわかりやすくパッケージされてるというか、全てがコンパクトに纏まってる。満を持してのセルフタイトル作で、リードに持ってきた上に曲名にまでGoatと入ってるってのが本人ら的にもある程度同じような感想を持っているんではないかと思ってしまいます。ここにはあまりシャーマニズムとかは顔を出しておらず、ちょっとダブ風のカラっとしたサイケなトライバル・ダンス。もしかしてこれ以上ないサービス曲なのかもしれないけど、わたし本気のサイケ喰らいではないもんで、これくらいがちょうどいいな。
24. Vitesse X – Eternal
シューゲイズ・ドラムン・ニューエイジポップ。この曲は別にJorge Elbrechtミックスではないのですが、でもこの曲が一番好きだったかな。ちょっとだけハイパー勢の香りがするエレクトロニックポップというところであんまり全面的に推したい音楽ではないのだけど、某PC一派やその亜種らとはベースとなる毛色が決定的に違うし、上モノはシンセよりギターが結構主役級の扱いだしで、やろうとしてることが非常に明確で潔いのは聴く側としても気持ちが良いもの。今後もあんまり面倒くさい方向に行かず、スカっとカラっとしたまんまで居て欲しいかな。秀逸なPinbackのカバーとかも出してたし、その辺のセンス良さでも評価アップ。
23. Drahla – Default Parody
毎年ある、アルバムのリリース日が翌年初旬なためキャンペーンが年跨ぎのやつで、アルバム自体は2024年のリリースだったのですが一番重要な曲は2023年公開なんで昨年のリストに既に入選してます。ってことで今年は二番目に重要な楽曲がランクイン。双方がリードとリズムを行き来するような、どちらも揺れモノがかかった個性的な音作りのギターとベースの絡みに、暴れ馬サックス(音は軽め)まで入ってくる、余白を残しながらも主張強めのオリジナリティ溢れるポストハードコア・ポストパンク。家で曲作ってきてはいドンでは無い、絶対にスタジオで合わせながら作曲してる、その息遣いが伝わってくるような阿吽のアンサンブル。しかし、この音楽性でありながら実はボーカルが意外と辛口じゃなく、むしろ甘めなのが見過ごされやすい最大のポイントのような気もします。本当にいいバンド。
22. HALO MAUD – My Desire Is Pure
昨年、リミックスで年末リスト入選するというGVVC始まって以来の快挙(?)を達成した彼女が今年はオリジナルバージョンの楽曲で入選です。少しだけサイケの入ったシンセウェイヴ・ドリームポップとかALTポップの類でして、圧は強くないのにとても伸びやかで歌心溢れるフランス語ボーカルが自由に紡ぐメロディと地を這うグラウンドビートの対比が美しく好相性。それまではその気配すら感じさせず、不意に入ってくるギターソロもギミックとして効いてます。タイトルになってるフレーズしか英語じゃないので何を言ってるのかわからないのだけど、そこがすごく耳に残っていたんですよね。Melody’s Echo Chamberのライブメンバーというのも実にしっくりくるサウンド。
21. Camera Obscura – We’re Going to Make It in a Man’s World
超久々の復活でこのクオリティ、最盛期に肉薄どころか下手したら最高傑作をここで出してこれるっていう事実にまず感動というか畏敬の念に近い気持ちがある。アルバム全体でも素晴らしかったですがメロディが圧倒的に耳に残ってたのは迷わずコレ。曲名にもなっているコーラスのフレーズは必殺のパンチ力で、意味あるんだかないんだかわからない唐突に三拍子になるパートもなんだかんだ効いているのかも。こういうグラスゴー系とかUKのあの頃のギターポップってまあ好きは好きだけど、本当に心からフリークかと言われるとイマイチそうではなく、純粋にソレでしかないバンド群はどこかしっくりこないモノが多い。でもこの人達って、一時4ADからのリリースだったあたりでも察するけど、ちょっとその本流とは一味違うんですわ。艶と陰があって、更にキレものっぽい利発な雰囲気があって、明らかに間口が広い。Mergeと4ADの両方からしっかりLPリリースしてたバンドなんて他に居るのかよ?イメージが違いすぎる両レーベル。
20. The Goalie’s Anxiety at the Penalty Kick – April 25
前作から正当進化した内容でアルバムも素晴らしかったです。中でも特にスタンドアウトのこのリード曲は繰り返されるストリングスのフレーズがやけに印象的で、このバンドの良さを全部詰め込んだようなショウケース的な内容の楽曲はエモ・インディフォーク・チェンバーポップという他にないスーパーハイブリッド。フォーキーになったLos Campesinos!といったような、少し多めの人数でわちゃわちゃやってる感もちょっとあって楽しげなのもいいですね。
19. Still House Plants – M M M
今年来日もしてましたね。あまり1曲でどうこうという音楽性ではない気がするけど、一応は歌モノだから選べないことはない、ベストは間違いなくオープニングトラックのこちらでしょう。今年の話題作だし各所の評価も高いのでいろいろ言われていますが、自分の解釈ではどう考えてもこれはポストロック。それも、近年のUKのブームでゴチャゴチャしたスノッブな音楽性の流れのモノとはちょっと一線を画すやつ。Sweep the Leg Johnnyとかをユルくダルくしてちょっとジャズ入ってるところでCheval De Friseとかミックスしたようなイメージかなと。確かにいいけど、出た週のレビューでも散々書いた通りこの音楽性だとベースが入ってないメリットがまじ一切無いから、何でもいいからとにかくベーシストを早く入れよう。ボーカル見て「あ、お前楽器持ってねーじゃん、お前がベース弾けばいい」って言いたくなるけど、このレベルでブチ抜けた個性のボーカルなら楽器演奏なしのピンでもしょうがねえわな。許してやるよ。
18. Fabiana Palladino – Drunk
今年デビューフルアルバムも出てましたが、そのどの収録曲よりもフォローアップで単発リリースしていたこちらの最新曲の方が優れてます。Jai Paulのイメージのせいもあると思うのだけど、どうしてもダブステ以降の大枠でのUKベース流れのフューチャーソウル系歌モノっていう風情が抜けきれてなかったところから一気に脱却して、もうちょっとオーセンティックな佇まいに、完全に生バンド路線の方向性に行くんだという意思を感じさせる内容。こんなにスグ方向転換するなら最初からコレでよかったやろ。来月の来日公演をブルーノートでやるってのも、この路線ならまあ頷けるかな。アルバムの感じのままならライブは興味なかったけど、これで俄然観てみたくなってきた。
17. Indigo De Souza – WHOLESOME
たまにある、プロパー新作ではなくササッと宅録で作ってみた数曲をEPにしてデジタルオンリーで突発リリースというやつで、既にプロパーにスタジオ作を安定してリリースできる格、ポジションに居る奴がそれやると武器にしかならないからズルいよね。聴く側からするとちょうどいい味変というか、全然良くないパターンもあるにはあるけど今回の彼女のコレは大成功。スタジオアルバムでもちょいちょいやるオートチューンが普段にも増して炸裂してますが、いやらしくないし曲がいいもんで許せる。前々から思ってるけどメロディというかソングライティング自体は結構普通のポップスな側面が強いのにこの人はなんでこんな深みというか作家性あるんだろうな。陰というか、メンタルの不安定そうな感じが絶妙に魅力的に発現してるんだろうなと思うけど。奇跡の産物。
16. Iress – Falling
アルバムこの曲しかちゃんと聴けねえです。でもこのリード曲はほんっとに素晴らしい。こういうガッツリ歌い上げちゃうドラマチックシューゲイズの理想系みたいな仕上がりで、ドリーム・ドゥームと呼びたいサウンド。ゴスというかダークの要素がギリギリのところで軽めなもんでそこも個人的にはありがたいところ。ギターもドラムも細かいアレンジが非常に気が利いててね、5分が長いと感じないほど小さな聴きどころが満載。ラストのコーラス前にちょっとだけ謎にスカスカ4つ打ちになるパートからの展開も奇跡的な鮮烈さでクリティカルです。ベースの奴だけは演っててつまんなそうですけど、こういう音楽の宿命かねぇ。
15. Former Champ – Hold On
これは完全にインディロックでしかないです。ほぼそれ以外の要素がない音楽で、女が歌ってる初期ストロークスをもっと大学生インディ風にしたみたいなサウンドなんですが、最大の特徴はやっぱボーカルかな。楽器も持ってないのにまるで歌い込まずに軽く流してるようなタイプの歌唱なんだけど、コレがすごく艶かしくて深みのあるリッチな声質。いかにもスコットランドって感じの風情もいいですね。EPどの曲も良くて悩んだんだけど一つ選ぶならコレ。MVが無いので公式スタジオライブを。演奏みてても、すごくバランスの取れたバンドだと思う。ここから間違いなくまだまだ伸びますので今後が楽しみだね。
14. Little Moon – now
ちょっともう鬱陶しくなるレベルにギリギリの強烈なボーカルが超個性的ですが、アレンジメントもチェンバー・オーケストラル・アートポップといった感じで歌唱に負けず劣らず後ろで乱舞するクラリネットにやられました。更には後ろのレイヤーでコーラスが深くかかったドリーム系のギターなんかも慎ましやかに鳴ってまして、実にカラフルに賑やかなサウンド。これはそうそうお目にかかれない特殊な音像だし、なんかこう悪くない意味でパワフル。非常にポジティブなヴァイブスを感じます(出た)!
13. Kindsight – Terracotta Team Song
順当に進化した新作アルバムも中々の内容でした。特にリード楽曲ではなかったようですが、こちらをピックアップ。いかにも北欧という感じの女性ボーカルで空高く突き抜ける疾走ギターポップは、メロディと楽曲構造だけみるとジャングリーとも言えるような範疇だけど、それに似つかわしくないレベルのハチャメチャに荒々しい演奏とミックスで、最近こういうのあんまり居ないから凄く面白い。ドラム君の大暴れっぷりも若さ爆発してて、デイヴ・フリッドマン系のやりすぎ音作りなガシャガシャ金物がマジくそウルサイです(褒めてる)。思わず笑顔になりましたわ。
12. Dancer – Passionate Sunday
デビューアルバム全部いいけど、やっぱ先行で出てたこの曲が特に印象深いかな。こいつらは良い意味で本当イカれてますよ。キッチュなポストパンク系と片付けるにはもったいない、ギターポップ、アートロックどころか地味ながらミッドウェストエモまで入ってる非常に曲者な音楽性。ちょっとぶっきらぼう系のボーカルと素っ頓狂なアレンジなのにとってもポップで、サウンドは柔らかく優しい、なんだかカワイイ音楽。このビデオも500回そこらしか再生されてないの勿体ない、たぶん今回の30組中、少なくともワースト3に入るくらい無名だと思うけど、本当に逸材だからどこか拾った方がいいよ。ちなみに、この曲聴いただけだとわかんないと思うけど、このバンドは全てのトラックでいちいち曲名をボーカルが宣言してから演奏が始まる。ライブでじゃなくてスタジオ音源の話。おもしれー女。
11. Cassandra Jenkins – Omakase
こちらも過去の年間ベストトラック1位獲得者です。同じ人が選んでおりますので、まあ常連になるのは当然かな。最初の先行曲が出た時、もしかしてあの前作を超えるかと思ったが、結果的にはそうはならなかった。悪くないんだけど楽曲に幅を持たせたせいか全体的に芸術点と完成度がどちらも下がってるという感じだったので、曲単体ではまだまだ強い。このトラック、冗談みたいな曲名ですがアルバムタイトルになっているフレーズが出てきたりして、実質的には表題曲というポジションだと認識してます。ゆったり展開していく流麗なアンビエントロックという感じで、まあウェットで華美なポストロックと言ってもいいかも。オーディエンスショットのライブ映像なんか見るとバックバンドがそこそこガッツリ目でドラムなんかも太く、よりしっくり来てますので、音源ももっとラフでワイルドなミックスの方が良かったかもね。ちなみに前作が出た時からずっと世界で一番ライブ観たいアーティストなんですが、来ねえだろうなぁ〜。
10. Coco & Clair Clair – Martini
これ分類としてはアブストラクトR&Bっていう括りになるのかもしれないけど、どちゃクソ太いキックにドリームアンビエント系の上層レイヤーが美しいコントラストで、完全なラップまでは行かないアンニュイなウィスパーボイス半ラップが浮遊するという意外と他で見つからないような素晴らしい音空間が印象に残りました。余談ですがこれ自宅でビデオ回してた際にたまたまリアルタイムBGMで入り込んでた音を後日プレイバックで聴いて「何だこのトラック」となって強く認識したというエピソードがあります。とにかくサウンドが何か独特なんだよね。
9. Peter Cat Recording Co. – Suddenly
まあ、まさかのインドっていうところの特別加点は正直ある。それはさすがに本人達も自覚してて、インドに現存する最後のバンドっていうキャッチフレーズで営業してますが。それはそうとして、何といってもブチ抜けた歌心。この歌唱聴いてさ、問答無用で胸を打つこの誠実さと迸る歌心に悪い印象なんて抱かないよ。ちなみにイントロ(と言っていいのか、とにかく曲の入り)が非常に技ありで、マイルドなフィードバック風のSEとハーモナイザーというかクリーンオクターバー的なものがかかったギターのフレーズからのこの声、ホント完璧に決まってて感心します。アンサンブルももっさりしつつタイム感は息バッチリでちゃんと生き物になったバンドの証。
8. Sarah Meth – Computer Love
念の為、クラフトワークのカバーではありません。これは、突然変異的に生まれてしまったトラックというか、基本こういう作風の人ではないしある種、事故的な産物だと思うのですが個人的に刺さりまくりました。シンセ・スウェルのパッドでゆらゆら進行する淡いアンビエント・ララバイで、テクニカルではそんなに語る部分は多くないのですが、ややローファイぎみに仕上げられたサウンドテクスチャーが愛と寂寞のスウィート・メロディに劇的にマッチし楽曲の持つパワーを最大限増幅させてます。最後のLoveが割れ気味なのも良いね。
7. Kali Uchis – Igual Que Un Ángel
いや〜もうメインストリーム枠のR&Bでこの人よりメロディが素晴らしい人は居ないですよ。最新アルバムは他の曲もホント粒揃いなんですが1曲だけ選ぶなら悩んでコレかな。南米の香りとナイトライフの匂い立つようなムードを纏いながらも、クドくなるどころかむしろ爽やかであっさりした雰囲気を持つ奇跡のハイブリッド。カバーアートとかビジュアルイメージのセンスがケバ過ぎてしんどいところだけなんとかして欲しいぜ。
6. The Marías – Real Life
純粋な再生回数だとたぶん1位です。自分でも何故そこまでハマったのかがイマイチわからないけど、やけに中毒性があって出た当時、周囲にもオススメしまくってた記憶がある。なんだかアクのない、面白味のない音楽って側面は確かにあるんだけど、シンプルなイントロ〜ヴァース〜コーラスの流れが完全無欠の100点のポップス楽曲というか、そんな感じで文句の付けようがなく、自然と繰り返し聴いたこのメロディは深く胸に刻まれました。ちょっとラテンの香りがするアレンジがポイントで、個人的にこれはドリームポップとかそういう枠ではないと思う。まだまだ筆舌に尽くし難いというか、咀嚼しきれてないんだけど、ともかく不思議な魅力があるんだよ。
5. Arooj Aftab – Raat Ki Rani
アルバム単位なら2位かな。曲は少し悩んだけどコレにしました。前のアルバムも本当に素晴らしかったけど、ステップアップを意識してなのか、今回はより間口を広げて聴き易く調整してきたのが個人的には大歓迎。意図せずどうしてもジャズのテイストが少し入る感じが同世代のバークリーっての凄くしっくりくる、ちゃんと作家性のある奴がしっかり音大で勉強した結果の育成成功パターンって感じで絶対に真似できない音楽だなと感じるね。純粋にクオリティが高いというのもあるけど、ルーツのエキゾチズムを添加するさじ加減が本当に絶妙で、他に無いような唯一無二の音楽になってるところが評価高い。強烈に夜を感じさせるこのムードも本当シネマティックで更に歌もいいし、ここで完全に完成されたっぽいけどこの先どうなるのか。
4. Mk.gee – Alesis
こっちのがオリジナルより優れているので敢えてスタジオライブ版を載せときます。なんかあまりにも業界受けというか、出る前から約束された成功って感じで圧を感じたし少し斜に構えてた部分はある。アルバムも一応リアタイで聴いたけどそこまではハマらず。でもこの曲は確かに良いし、やってることのサウンドは面白いというか、ギタープレイも含めて独創性は間違いないよね。これフルの生バンドにしたら良さが損なわれるのだろうか?ちょっとハイファイでフィジカルにしたアップデートバージョンを聴いてみたい。そしたらめちゃくちゃハマる可能性があるし、ライブで同じ曲を何回も演奏したとか面白エピソードも出てきてるしで、キャラクター的な意味でも今後も注目です。ちなみに歌詞も素晴らしいですよ、泣ける。
3. Chat Pile – Masc
今回の新作では全部のリード曲をトップで紹介したというGVVC激推しも激推しのチャット・パイルですが、中でもこのトラックが飛び抜けてます。ポップなスラッジ・ポストハードコアという表現が正しいのか、そんなものこの世にあるのかという感じだけど、ここにあるのです。シャウトも最終盤まで封印してますが普通に歌ってもダンディで非常に良い声ですよね。ヘヴィなサウンドも相まってSHINER、LIFE AND TIMESのアレン・エプリーを彷彿させる少し危うさを感じる歌唱。溜めて溜めて最終的に爆発してからは一気に捲し上げます。ラストは全パート超強烈なインテンシティで限界突破。ブチブチの歪みも揺れたクリーンもドラムも全ての音色が完璧にカッコイイ上にバンドは鋼鉄のアンサンブル。しかし受ける印象はとんでもなくキャッチー、一体どういうことなの。
2. Laura Marling – Patterns
アルバム単位では文句なしの2024年ベストアルバム1位です。ここへ来ての最高傑作を出してきた彼女、曲はどれにするか少し悩みましたが、これかなと。サウンドはほぼ弾き語りのフォークだけど、ストリングスが入ってくるのと全体的に淡い陽の光に包まれたような柔らかく優しいテクスチャーで実にソフト。本当に朗らかになったね。きょうび、このテーマすら考えようによっちゃセンシティブな内容になり得るかもしれないからあまりハッキリとしたことは言えないけど、我々は結局どこまで行ってもしょせん動物であるということをこの一件でも改めて感じたし、自然に対してあまり奢りたかぶり過ぎないようにした方が良い。正直、楽曲のテーマからは少し飛躍してる話だと思うし、彼女がそんなことまでを考えただとか、感じただとかは思えないが、なんていうかね…ひと一人の世界が変わるほどの変化とか、転換っていうのは大怪我とか生き死にとか、そういう生物としての根源的な体験が、どうしたっけきっかけになるって話。自分より少しだけ年下だけど、偶然タイミングがリンクして、特別に共感できたってのもある。これは一生聴き続けます。
1. Waxahatchee – Right Back to It (feat. MJ Lenderman)
あとがき
なんだかんだ7年目終了、今年はマジで年末年始の空白期間以外1週も休まずWeekly更新できました。毎年もう来年は無理かも…とかここで書いてる気がするし、正直厳しい部分はかなりあるのですが、仮に辞めてもこの先新譜をチェックしなくなることはないだろうし、何より最早ハマってるだとか趣味だとかそういうレベルのものではないのでね。経済的な価値や需要があるかは脇に置いて、どう考えても自分にしかできないセレクトとレビューをしているとは思うし、そもそも経済的な価値や需要があるかを脇に置くという事自体を良しとするかどうかっていう部分こそが人生な気もしますが、なんだかんだ私は恵まれているのかもしれません。
来年は数え8年目、ようやるわ。いつもみてくれてる皆さん、本当にありがとうございます。直接的には何の収益化もしてないし、この先も絶対にしませんが、アナリティクスはたまにチェックしておりますです。今後もよろしく!