ペット・シマーズがAlex Gとのヨーロッパツアーに先駆けて、遂にアルバムを発表します。
ちょうど1年ぐらい前から動き出し、これまでの間で世に出されたシングルも一部を除き
収録されていますが、リリース直前の先行曲として初出の楽曲をさらにビデオで公開。
愛嬌のあるポメラニアン、”タイソンくん”を全面的にフィーチャーした可愛らしい映像で、
バンドリーダーであるオリヴァー・ワイルドの兄弟夫婦が飼っていたワンちゃんだそうです。
淡々と刻むタイム感の中、ピッチの不安定なサウンドレイヤーにツインボーカルが重なり、
ビンテージな風合いの万華鏡というか、決して色鮮やかではないんですけど重層的な音世界。
確かにスパークルホース風なイメージはありますが、レトロ・ラジオ・センチメンタリズム
っていうこのムードはすごい魅力ですよね。おもちゃ箱的なSEも仕込まれてて、効いてる。
タイソンくんはおそらく亡くなったのでしょうが、無限のインターネットの海にこうやって
記念碑を建てることにより、彼の魅力は永遠化され、こうやって極東の我々の目にも触れて
多くの人が少なからず彼のことをカワイイと思ったわけです。曲に合ってるし、泣けるね。
“You should be famous too, for falling in love with you”
Night Tapes – Space Force (feat. Will Haff)
ロンドンのNight Tapesがボルドーのレーベル、Nice Guysから単発でリリースした新曲。
いかにもUKらしい、エレクトロニクス・ドリヴンな骨組で、和音が満足には鳴ってない中
ボーカルだけがメロディを紡ぎ出し、ちょっとNumbでキケンな香りがする展開から
後半になって突如コードストロークが入り一気に視界が開けるものの、
そこからコーラス的な展開に進むでもなく、来るか?来るか?的な所まで行っといて、
そのまま終わります。なんつーかダブステップ全盛時に少しいたミニマリスト系の
半バンドサウンドに近いんだけど、それよりも、もうちょっと取っ付き易いというか、
ドリーム感があり、微妙なラインですが複雑な落とし所で不思議と何回も聴いちゃう。
メンバー構成的にLondon Grammar的な方向性なんでしょうかね。ホント夜の音楽です。
FACS – “Teenage Hive” (Official Video)
90 Day Menなどをやっていたブライアン・ケイスは近年Disappearsを率いていて、
前作からソニックユースのスティーヴ・シェリーが加入したりなどもありましたが、
直近では休止中なようで、このFACSはディサピアーズの一部メンバーと一緒に
Cat Powerなどに参加しているアジア系のドラマー、アリアナ・カラバを混ぜた編成。
で、3月にTrouble In Mindからリリースする新作アルバム先行トラックのこちらは
クラウトビートじゃないクラウトロックと呼んだらいいでしょうか、
ミニマルパンクというか、ポストHCを超スタイリッシュに仕上げていったような音楽で
もの凄くカッコイイ。DISCHORD的でもあり、シカゴ系ポストロック的でもあるよね。
クールな佇まいだけど、生々しいバンドやってる感が充満してて、熱い緊張感あります。
Waxahatchee – Fire (Official Video)
ワクサハッチーが3月のニューアルバム発表を告知し、そちらから最初の先行シングルです。
中々大胆な新機軸で、ダウンテンポ4つ打ちにパリっとコンプのかかったミュートギター、
延々とループするローズ系のエレピコードなどで構成された、ミニマルな装いのトラックに
ケイティ・クラッチフィールドの特徴的な歌唱が自由に飛び回るシンプルなしっとり楽曲。
元々、双子の姉よりも彼女はもっと純SSW的な方向性だったと思うし、驚きはないかな。
結局はボーカルなんですよ。声に特徴あって、歌心があればどんな音楽でも様になるんです。
文字通り何だってやれるし、付加価値としてパーソナリティや外見が魅力的なら無敵だね。
Snarls – “Marbles”
昨年のシングルをGVVC年間ベストソングでもかなり上位にランクインさせたスナールズ、
Take This To Heartとサインし3月にデビューアルバムをリリースします。LPにはもちろん、
例の曲も収録されてますが(当然一曲目)こちらはそれに続く2曲目に配置されてますね。
超ベーシックなダイナミズムの構成を採用したスローめの6/8・USオルタナポップでして
正直アルバムリリースの告知と共に出す楽曲としては少し弱いかなとは思うんですが、
メインボーカルのクロー・ワイトが伸びのあるすごくいい声で、本当に輝いてるんです。
線は細めで甘さのある、クリアーだけども、ちょっとアシメ黒髪のエモ系入ってるような
ニュアンスも感じさせる複雑な声質をしていて、この子は将来性込みでイチオシですよ。
Too Free – No Fun [OFFICIAL VIDEO]
Merchandiseのカーソン・コックスが謎のシンガーAwad Bilalらと結成したToo Free。
来月とうとうアルバムが出るようで、そちらから2つ目の先行曲ビデオとなるこちらは
以前に公開していた楽曲よりもさらにキャッチーで、表面上はスタイリッシュすぎない
エレポップ系のインディ・ダンスみたいな体裁をしており、とっつき易いサウンドです。
でも、そこはかとなくドープで、少し不穏な、どこか”凄み”を感じさせるのはさすが。
映像で独壇場ワンマンパフォーマスをやっているのがそのAwad Bilalご本人。何者なの?
この、ダンスと言っていいのか何というか、すごく”観れる”というか、華があるよね…。
なんか、アントニー・ハガティが歌ってたヘラクレス・アンド・ラヴ・アフェアの曲を
思い出します。少し声が似てるような気がしてね。あれもう10年以上前ですか…
これね。永遠のクラシックスでしょ。
ellis – fall apart (official video)
デビュー曲からGVVCで推してる、エリス。昨年はEP止まりでしたが、今年はついに
引き続きのFat Possumより4月にデビューアルバムが発表され、これが最初の先行曲です。
EPの曲たちよりもすごくポップスとして洗練された作りになっていて、Tamaryn辺りが
光の路線に進んでオーバーグラウンド化してたらこうなってたかもねってな感じというか、
少し見せていたダーク・ゴシックさを完全封印した甘いドリームポップに極振りの楽曲で、
シューゲイズ要素も完全にフレイバー程度に抑えられたアレンジの、実に愛想がいい音楽。
甘すぎるテイストですが、クオリティは普通に高いですね。映像も本人が出ずっぱりだし、
レーベルの意向か、狙いが明確って意味ではいいパッケージ。好きなサウンドだけども、
これってある意味コンサバの極みで、軽く商業的に感じる。ただ、この音楽をどんな人達が
消費するんだろうって考えた時、日本だとそこまでのマーケットが存在してる実感がない。
日本でもYumi Zoumaサイコーって人達はそれなりにいるし、この国の実情で言うと
そのレベルですらかなり音楽好きな方に分類されるだろうけど、でも市場と呼べるような
次元のクラスタを形成してるとはとても思えないわけで、これが英語圏だときっと
もっと違うんだろうけど、でもリアルに具体的な数字や規模感はわからないですよね…。
何が言いたいかというと、これはすごくいい商品だから、こんなにとっつきやすい
音楽くらいは、もっと広く一般に消費されうる社会になるよう頑張ろ?って話です。
だってどうです?コレ、頭お花畑の恋愛ドラマでかかってたっておかしくないでしょ?
変な話、テイラー・スウィフトの曲よりこれの方がJ-POPに親和性ある思いますけどね。
TOPS – I Feel Alive (Official Video)
拾うまでもなく皆聴いてると思うけど一応載せときますか。次作LPタイトルトラック。
最初のCDEPが出た時、ここまでの圧倒的人気バンドになるとは思わなかったよね。
昨年10月にリリースしていた7″(LP未収録)の流れで、従来のイメージと比べると
録音が圧倒的にリッチな質感だし、自主リリースになったのに逆にメジャー行ったような
雰囲気。アレンジ的なとこでいうと個性が抑え目になったような気もしますし、
ちょっとPure Bathing Culture風なラインにも聴こえる洗練POPSに純化された楽曲。
もはやカルト的な存在じゃなく、みんな大好き状態だと思うし、軽く貫禄あります。
ジェーンがもの凄くいい顔してて、なんか充実してそうだし、LP期待できそうですね。
Planet 1999 – Party (Official video)
去年、1曲だけ公開してから音沙汰なかったフランスのPlanet 1999が新曲ビデオを公開。
多分、今までのPC Music勢の中で最もインディに寄った音楽性のトラックだと思います。
深みは全然ないし、軽く流しとくような、忘れられていくインスタント音楽ですけども、
そういうものの良さもそれはそれであるし、ラブリーじゃないですか。
ヴェイパー・ウェイヴ以降の90’sリバイバル直球なラップトップ・SNSポップスと、
軽くシューゲイズ味すら感じるインディ・ダンスの折衷具合がなかなか絶妙で、
これとほぼ同じ塩梅の音楽は他に聴いたことないよ。かなり日本人向けの音楽性だし、
こういうの日本にも居そうだけど知らないだけかな?知ってたら教えてください。
ちなみにある程度以上ちゃんとした発音の英語で歌われているもの限定でお願いします!
Billie Eilish – everything i wanted
何も言うことはないんですけど、車で入水心中を、こういうシンプルな映像にしたMVって
まだ他にあるのかもしれない。でも潔いというか、普通にいいなと思って見ちゃったね。
曲にも合ってるし、美しい。