GVVC Weekly – Week 133


CAGED ANIMALS – The Ghost Of Jesus

ケイジド・アニマルズが約2年ぶりとなる新作アルバムを6月にリリース、最初の先行曲です。
今回は初めて完全にバンド編成で仕上げられた作品になるようで、つまりリズムマシン等を
使用しておらずドラムも生って事みたいです。相変わらずちょっとのんびりしたやや木訥な
歌唱と、フレーバー程度に空間系も使用したアーシーだけども枯れすぎてないフォーク風の
インディ・ポップ音像で、オーガニックにレイドバックしたあたたかい楽曲。前作は完全に
自主だったのでフィジカルはCDしか出てなかったのですが今回は逆にヴァイナルのみです。
地に足のついた自分達の生活もしつつずっと変わらない音楽性でマイペースにやってて良い!


Lucy Dacus – “Hot & Heavy” (Official Music Video)

ルーシー・ダカスがプロパーのフルレングスとしては3年ぶりとなる新作アルバムを引き続き
マタドールより6月にリリース、そちらからの先行曲がビデオで公開。先月に発表していた
Thumbsも収録されるようで結果的にこれが2つ目のトラックとなり、LPでは1曲目に配置。
非常にこの人らしい、オルタナもドリームもない無添加でオーガニックなインディロックを
小気味のいいテンポでさらりと歌って聴かす清涼感のあるサウンドだけど、ボトムは太め。
boygeniusの3人の中ではこの人が一番塩味というか、サラっとしていて作られ過ぎてない。
過去の自分の映画を観ていたと思ったら他の人も皆同じ青いパーカーで過去の自分の映画を
観に来てたと思ったらそういう映画のプレミアだった、何を言ってるかわからねーと思う…。


SPELLLING – Little Deer (Official Audio)

Lが3つのスペリング、引き続きSacred Bonesからの新作LPを6月にリリースすると発表し、
そちらからの先行トラックです。ソフトな90年代R&B・ソウルをベースに、モダンな音響と
アレンジを施した様なインディ・ブラコン的なサウンドで、およそサイクリッド・ボーンズ
リリースらしくない、ダークやゴシックが一切存在しないような雰囲気になっておりますが
クオリティの高い、明確な強度を持った楽曲で、アルバム1曲目に配置されているのも納得。
全体的に昨年のU.S. Grils傑作アルバムと似た雰囲気を纏っており、並べて聴きたいですね。


Love More (By Fiona Apple)

出ました、フィオナ・アップルによるシャロン・ヴァン・エッテン一番の名曲カヴァーです。
原曲がペダルスティール全開で超感傷的な歌唱のウェット・ソングだったのでドライ方面で
かつ、密室感のあるサウンドで攻めてきました。やはり原曲に対して歌が不必要に上手い感
否めないため違和感があるのですが、アレンジはいいと思う。でもやっぱこれはカバーする
曲じゃないと改めて思いましたね。カバーして面白いのはサウンドやメロディありきのもの
ってのがセオリーかな。オリジナルの歌唱そのものによって名曲たらしめてる録音ってのは
ちょっとまた別枠というか、楽譜にしてもいい曲ってわけじゃないので難しいところだよね。


People Club – Damn

ベルリンのバンド、ピープル・クラブが五月にリリースする新作EPより先行トラックを公開。
R&B的なビート感を持った少しアダルトな要素のあるモダン・インディロックといった趣で、
パキっとしたコンプ感のあるパーカッシブなサウンド。トロントのDiana辺りがやりそうな
楽曲をもう少しケバくしたような塩梅の音楽になってます。バンド名変えた方がいいと思う。

SoundcloudでEPから他3曲が既に公開されています。

日本のリリース

STILL DREAMS – Make Believe (LP)

レーベル的に『日本のリリース枠』でいいのか微妙なとこだが、こちらにさせてもらいます。
西エレファントから鳴り物入りでリリース。インタールード的な曲なしのフル尺で8曲は特に
ミニってこともなく普通にLPでいいと思う。これを何の文脈なしに聴いてもニューオーダーを
思い浮かべない人が居る訳がないってのは前提として、いやむしろ、ニューオーダーすらも
知らない人達に向けた音楽なのかなって見方もできる。順張りに持ってくシンセの高揚感は
凄く気が利いているというか、緻密に紡ぎ上げられてるのがわかるし非常に優等生的な鳴り。
全体的にプラグインっぽい良くも悪くもモダンな質感なんだけど、それに対してボーカルが
あんまり融通きかない感じというか、小慣れてないのがむしろ良くてそこのコントラストが
このユニットの一番の特徴だし聴きドコロになってるよね。その辺抜きでの単純な音楽性は
正直まあドリーム・シンセポップとしか言いようがない。ただ、革新的な音楽や途轍もない
オリジナリティを誰もが追求する必要はなく、自らの理想的なバランスで味付けした安定の
料理、その同じ料理をどこまでも洗練させブラッシュアップすることに10年20年を費やす
ってことは等しく尊い訳で、ニューオーダーやキュアーの『モロ』だってある意味、その
宣言というか自信を持った上のチョイスなのかもね。しかし、程々にしないと同好会的な
音楽になってしまうからやはり注意だよ。それと飽和感があって割と聴き疲れしやすい音像
してるからその辺ですかね。全体的に愛嬌があってポップな印象だから、インディ入門編に
凄く適してるかもしれないし、地方の高校生とかに聴かせたい。人には色々な役割がある。
これこそタワレコとかでドンと展開する商業的なポテンシャルとのいい意味での妥結点だと
思うし、キラキラしたシンセにシューゲイズ沼と社会を繋ぐ『扉』が今、ここにまた一つ。

今週のLP/EPフルリリース

Andy Stottのアルバムが本来トップですがクローズドのサブスクにしか公式のストリームが
存在しないのでレビューしません。『オープン環境でオフィシャルのフルストリームが可能』
を基本的な条件としています。


Hail The Sun – New Age Filth (LP)

先行のM-5がいいなーと思ってチェックしてたけど、思ってたよりメタルコアっていうかさ、
これfall of troyやろ。ボーカル絶対めちゃくちゃ意識してると思うし曲展開から何からもう
モロだけど、本家より聴きやすくてイイね。もう少しだけピロピロしたフレージングを抑え
ポストハードコアに突入してくれれば聴いてて小っ恥ずかしくないレベルになってくるから
期待したいところ。でもそれは無理なお願いだろうなというのはわかる。しかし、ギリギリ
emoっていうかなんだろ、黒髪アシメのピタTっぽさがキツイんだよな。何ならブラメタ化
してもらった方が芸術点アップするかと。ダサカッコいいにも限度があるっていうかね…。
全体通してもやはりM-5が白眉で、この曲だけはあくまでもインディロックの範疇で語れる
サウンドをベースにしてて、コーラスのダイナミックな『キメ』主導のフレージングが秀逸。
あとは同じく先行で出てたM-1もコンパクトに纏まってていいのと、M-2への流れがキレイ。