GVVC Weekly – Week 143

Wye Oak – Its Way With Me (Official Video)

ワイ・オークが先月に引き続いてのニューシングルをビデオで公開です。今回はサウンドが
少し面白くて、まずサンバキック系のブラシ・ドラミングがラテンジャズ風味であることと、
ひたすらループするミッドウエスト・エモ的なギタープレイのミニマルシークエンスを軸に
ボーカルがバシっと広がりを持って前面に飛び出すミックスがクリーンかつクリアで美しい。
下の方はスッキリと残響のディテールが聴こえるくらいで、ちょいちょい入るリバース系の
フレーズや似非ブラスっぽいSEなどもかなり上物の装飾が効いてて流麗かつお洒落な音像。
パッと聴いて凄さが伝わりにくいがこれは職人芸だしここ最近の彼女らの曲では最高の出来。


Helen Paradise – At Your Feet

モントリオールのニューバンド、ヘレン・パラダイスが今秋リリース予定のデビューEPより
先行シングルを公開です。スロウダイヴ路線の洪水系ドリームポップになってまして、特段
目新しい音像では全くないのですがシューゲイズというよりはどこかサイケ寄りな雰囲気が
あって、意外と繰り返し聴ける展開。終盤の地味な終わり方とか何かイイですし、ボーカル
なかなかキャラ立ってる。このサウンドならいっそもっとメンドクサ系の歌唱でもいい位。
まだ何とも言えないですが、ゴリラvsベアのバックアップ入りましたし、今後に注目かな。


Hater – Bad Luck (Official Video)

FIREからリリースするスウェーデンのヘイターが久々の新曲をリリースしビデオを公開です。
今回は若干重めの、エモやオルタナを強めに感じるインディロック・バラードのトラックで、
サッカー・マミーとTurnoverを合体させたようなサウンドになってます。北欧っぽさはもう
減退しておりまして、前作アルバムにあった軽妙洒脱な感じがみられないので少し肩透かし
というかこれはこれで悪くはないけど、個人的にはあまり彼女らに求めるものではないです。
まあ、元々ちょっと演歌っぽいところもあったので恐ろしく予想外な展開ではないし、まだ
単曲というか、続くアルバムの告知などあったわけではないのでどう変わってくか不明です。


Modest Mouse: We Are Between | The Tonight Show Starring Jimmy Fallon

モデスト・マウスが新作からの先行楽曲をジミー・ファロンに出演し披露したライブテイク。
紹介しなかったスタジオ音源バージョンの方より全然良くて、実にインテンシティ高い演奏。
勢いがあって普通にカッコいいし、キレがあるよね。それをこの熟練の職人力が土台にある
上で展開させてるから小慣れた感じもありつつ行くとこは行く、絶対にぽっと出の新人では
出せないグルーヴ。改めてオリジナルの音源聴いたけどどう考えても全てにおいて劣ってる、
何でだろうな。各パートの粒立ちも音色も、実際の演奏テイク的にもこっちのが良いでしょ。

スタジオ音源


Lucy Dacus – Chasing Cars (Snow Patrol Cover) [Live for SiriusXMU Sessions]

ルーシー・ダカスがスノウ・パトロールの代名詞となっている最大の名曲をカバーしました。
原曲よりもさらに過度にドリームスケイプでビッグ空間系なアレンジになっており、本人の
楽曲ではまずみられないレベルにウェットなサウンドで、彼女のボーカルとの組み合わせに
新鮮味があり、こういうのもいいじゃんと思える。なんか、商業主義の宇宙モノ映画とかに
使えそうなイメージで、スッゲー大味なプロダクション。ボーカルがこれだから許せるかな。
ずっと前から言ってるけど、SUPERCARのLast Sceneのサビ、この曲が出典だと思うなぁ。


Lauren Flax – Out of Reality (feat. Alejandra Deheza and Adele Stein) (Official Video)

ローレン・フラックスが新作からSchool of Seven Bellsのアレハンドラをフィーチャーした
先行曲をビデオ公開。アナログシンセ全振りでビートを控えめにし、アシッドでサイケ気味な
トラックに割と構築的な編曲とこの手の女声ボーカル入るとケイトリン・アウレリア・スミス
辺りに似通った方向性にはなる。しかし終盤の展開や音色により感傷的ロマン風の味付けが
なされ、一瞬IDIBの香りが漂う辺り、マイクシモネッティとマイクスナイパーによる2MRから
リリースというのも納得というか、俄然合点のいくイメージになってるのが面白いなと思う。


Nite Jewel – This Time (Official Video)

ナイト・ジュエルの約4年ぶりとなるニューアルバムが8月のリリースと発表されそちらから
最初の先行曲ビデオが出ました。一時Secretly Canadianからがっつり作り込まれて、セミ
メジャーデビューみたいな時期あったけど、すぐに夫によるグロリエッテからのリリースに
戻って落ち着いたよね。前作も割と良かったけど今回益々いい、かなり完成されてきていて
初期に出してた抜け感というかラウンジーな路線とシンセマニアック的側面が高次で融合し
凄く説得力のある音像。ローファイがかっていた頃の風情はなく、ボーカルだけが先行して
成熟してたのにトラックが追いついたね。これは期待です。プレスリリースに別れたっぽい
事が書いてあるけど、夫と書いたがもしかしてCole M.G.Nさん元夫なのかもしれないです。


Faye Webster – A Dream With a Baseball Player (Official Video)

LPリリース週に最後に出た収録曲ビデオ。レビューは下で。オチが何かいいのでこちらも。

今週のLP/EPフルリリース

Faye Webster – I Know I’m Funny haha (LP)

ディアハンター諸作等を手がけるDrew Vandenbergと組んだとあってそういう音になった。
前作より生演奏度も少しアップし開放的なサウンドになっても、特有のエアリーに乗っかる
鼻唄のような節回しが甘く親密に響くと近すぎる距離感は変わらなくて、実に香しい音楽。
M-6とかの変わり種も、もう少しあると良かったなと。全体的に生ぬるインディ感は減退し
よりブルーアイド・ソウル的になったし、急にセルジュゲンズブールみたいな曲もあるよね。
それと、いくら生演奏とはいえループが多いというか構造がヒップホップ手法のトラックを
ベースにしてる側面が強くて、個人的にそこは好みではない。出自のコミュニティや彼氏が
ラッパーとか色々背景考えると納得だし、その辺のハイブリッド感とストリート感も完全に
持ち味というか寧ろ武器なんだろうけどね。しかしこの猫っ毛アンニュイなのにストリート
ボーイッシュっていうキャラクターそして激甘ボーカルしかも歌詞が赤裸々系っていうのは
一体どこまで狙ってるかのかわからないけどホントにすごい完成度で、天然だとしたら奇跡。
個人的には今のコミュニテイから完全に抜け切って交友関係とか環境が激変して、古典的な
SSW風になっていったとしたらどうなるかが凄く見たい。まだかなり若いから期待できる。
正直ここまでキャラ立ってると本人の雰囲気抜きでは語れないというか、そこんとこ込みで
成立してる作家性なので、純粋に音楽だけの評価にはならないわね。M-9に江原茗一が参加。
これコネではなく100%実力で、フェイがサブスクでエマーソン北村聴いてたらその関連で
mei eharaがサジェストに出てて聴いてみたらドハマりして即連絡し、以来親交を深めたと。


CAGED ANIMALS – Underneath The Spell (LP)

最初期から好きでずっと追ってきてるけど、本当に穏やかで地に足の着いた人達でね、もう
家庭もあって本業もあって、音楽関係ないローカルのあたたかい仲間たちがいて…っていう
中でずっと、ちょいちょいイイ意味で肩の力の抜けた作品を自主でリリースし続けているの。
Lucky Numberからリリースしていた1st~2ndの頃は少しは色気出してたりもしたのかな?
それはわからないけど、音楽性は本当に変わらない。強いていえば初期はよりリズムマシン
チャカポコありきでザ・宅録って感じだったけど、上物は一貫してオーガニックな質感だし
シンセもウォームな使い方ばかり。最大の特徴はやっぱ彼の柔らか〜いボーカルなんだけど、
最近多くゲスト起用されてるアルトサックスがすげー効いてて、M-2とかサラっとしてるけど
ほんと小品ポップスとして中々ないレベルの完成度。ロードムーヴィー的で、抑制が効いた
音像が心地良いけどメロディはやはりちょっとオトナというか枯れ気味になってきてるから、
その辺はもうちょっとフレッシュさというか鮮烈なインディパンチも欲しいとことではある。


Hurry – Fake Ideas (LP)

いやこのバンドいいね。素朴な歌心系のちょいダサめ青くさインディポップ、でもギターは
強めに歪んだりと、つまりポータスタティク的なヤツのもっとネオアコよりなものベースに
今時の叙情系エモみたいなスロー楽曲などもありと言ったところで、攻めてる部分はなくも
歌メロは陽の光とエヴァーグリーン全開で基本キャッチーな節回し。声も100%文化系だし、
親近感持てる。M-2突然の「空も飛べるはず」で先行公開時ビビったが、整理された綺麗な
ミックスだしシンプルというか王道な曲展開も、持てる特色に対してベストなアプローチと
感じるし、あまり改善点が思い浮かばない。まぁ、それ以上でもそれ以下でもないんだけど
かかってていいメロディだなってきっと思うような曲が多いし、なんか好印象で素敵なんだ。
そういや前作もJamieって曲が良くて気に入ってたんだった。20年代型の弱・パワーポップ。