GVVC Weekly – Week 146

Lala Lala – DIVER [OFFICIAL VIDEO]

ララ・ララが引き続きHardly Artから10月リリース予定の新作アルバムより最初の先行曲。
ややくぐもってグシャっとした感じのあった従来のサウンドがより明瞭になっており非常に
熱量のこもった、美しくて雄大な自然を感じる賛歌のような映画の主題歌然とした楽曲で、
ちょっと貫禄が出てる。枯れた大地で独りアイスブロックを削り出す映像もマッチしており
繰り返し没頭してしまう力強さがあります。音楽性的にはプリミティブなUSインディロック
というようなところで装飾の少ないサウンドですが、これは相当なブレイクスルーなのでは。

Skirts – Swim (Official Music Video)

今月末ダブル・ダブル・ワミーからリリースされるスカーツのアルバムより3つ目の先行曲。
基本的にはカントリー・ドリームフォークという音像ですが、意図的に歪み成分を持たせた
ギターが随所でノイズ的役割をしていいスパイスとなる事で、楽曲の全体像がレイドバック
一辺倒に振れすぎずバランスを保っています。川を遡上する鮭を見て、自らも泳げるように
なれるかなというアレックス・モンテネグロさんの牧歌センチメンタリズムが炸裂した佳曲。
スローなタイム感が穏やか!しかし、あまりにも映像が音楽に合ってないと思うんだけどな。

Hana Vu – Maker (Official Video)

ハナ・ヴゥがGhostly Internationalに移籍して単発シングルをリリース。LPのディテールは
出ていません。LuminelleからのダブルEPのサウンドよりチルウェイヴ、ドリームポップの
成分をかなり減退させて、オーガニックな神秘アコースティックSSW路線に舵切ったような
音楽性で、特徴的なボーカルの趣はそのままですが音楽としての全体的な風情は相当変化し、
オトナで深みのあるものになっています。とはいえ自然な出来だしこれは受け入れられるね。

Caroline Polachek – Bunny Is A Rider

元チェアリフトのキャロライン・ポラチェックが久々の単発シングルをリリースしました。
同業者にカバーされまくる決定的名曲を生み出した2019年作LP以来となるプロパー新曲で、
来月からのフェス混じりツアーに先駆け公開された形です。引き続きDanny L Harleによる
まさになサウンドで、ソリッドかつ艶のあるフューチャリスティックR&Bのような形態を
とっており、さすがのクオリティ。言わないでもわかると思うけど個人的にPC Music周り
全然好みではないが、まー凄いなとは思うし、メインストリームに対するオルタナとしては
凄く完璧に機能するサウンドだよね。時代合ってると思うし、触りはビルボード質感だし。

Enumclaw – Full Performance (Live on KEXP at Home)

自称「オアシス以降で最高のバンド」イーナムクローのKEXPインハウス・ライブ映像です。
歪みが嘘臭くアンシミュっぽい、のっぺりしたオアシスという様なサウンドが炸裂しており
このメンバー達のルックスとの組み合わせの妙でなんか面白い存在。アーミーグリーン色の
ムスタングが似合ってるし、ここで若干のグランジもプラス。半分はコミックバンドだけど。

今週のLP/EPフルリリース

Clairo – Sling (LP)

今年最大の不意打ち。変わりすぎだろ…、音楽のランクが一気に何段階もアップしてもはや
大御所の貫禄を若手のフレッシュさを残したまま醸し出すとんでもない印象に。60-70’sの
女性SSW名盤のような音楽で、知らんで聴いたらオリジナルのリマスターだって言われても
信じる可能性がある。これ楽曲はともかく、クラシックなのにモダンで美味しいフレーズも
仕込んでいる、オマケに非常に上品で素晴らし過ぎるアレンジ、まじでブリーチャーズの奴
ただものじゃねえな。引く手数多なのが頷ける敏腕っぷり。美シルキーなミックスも最高に
マッチしてて、ナタリー・プラスをもっとフォーキーにして、ソフトロックも加えたような
サウンド。先行のM-5が正直微妙だし、バッキングがほとんどない弾き語りトラックなので
この中身が予想できなかった。わざとなのか、明らかにM-1とかをリードにした方がいいと
思ったが、このレベルになると別に先行切ろうがどっちにしろ聴いてもらえるから、LPで
開けてびっくりの方が効果的なプロモーションになる可能性もあるのかな。そうだとしたら
見事にやられた。個人的に前作は評価してないんだけど、今回はエグい。年ベスト級でしょ。
サムネサイズではぱっと見わからないジャケットも100点満点でカラー盤はプレミア確定ね。


Rodrigo Amarante – Drama (LP)

先に音聴いて、レーベルは…ポリヴァイナル!?イメージ違い過ぎてわけがわからないけど、
今後こういうのも出してくんなら傾向としては嬉しい。かなり本格的にブラジル、MPB的な
雰囲気で、インディ出自がかじった程度でそれっぽくしたようなものではないってのがすぐ
わかる。あっちはスペ語だし確かベネズエラ?だから比べると悪いとも思うが、インディの
文脈と中南米音楽の本格折衷サウンド・フリーフォークっていう事で、そのバランス感覚は
ディヴェンドラ・バンハートに近いものがある。サウンドにはほとんど顕れていないんだが、
当人的にはスミスが好きらしく、典型的なブラジル人の音楽とはおよそ違うものを作ってる
という自覚があるらしい。ブラジル系アメリカ人っていうわけじゃなくて大人になってから
渡ってきた純粋な移民一世って事でよりリアルなサウダージを感じさせるけど割とカラっと
していて、そんなにメロウに振ったものじゃないのがまた、流行りモノっぽくならずにいい。

・その他ニュース
https://holly.plus

ホリー・ハーンドンが声のディープフェイクによるホリー・ハーンドン・シミュレーター的な
ソフトウェアをリリースしました。いかにも彼女がやりそうな事で、あまりに「らしく」て
笑っちゃいますが、音楽を彼女の声に変換するオンラインコンバーターの形式をとっており
5分未満のオーディオファイルをドラッグアンドドロップするだけで変換され即DLできます。
オケも全て込みの完パケ音源だと声以外も声的なフィルタをかけたサウンドになるというか
全てにフェイザーかかったようなキモチワルイ音になるので基本はドライなアカペラ音源や
少なくとも弾き語り音源が推奨だと思いますが、少し遊んでみたくなる面白さはあります。