GVVC Weekly – Week 309

Black Taffy – Big Tiny

テキサス州ダラスのコンポーザー、ブラック・タフィーがLEAVING RECORDSからリリースするニューアルバムより最初の先行曲がビデオ公開。
90’sから連綿と続く伝統的なレフトフィールドとも、ヴェイパーウェイヴの流れとも取れる絶妙なラインのアンビエント風トリップホップ~ローファイヒップホップビーツのトラックで、更にモダンニューエイジとポストクラシカルのニュアンスまである意外と他に無いバランス感覚の作風で面白いです。
テクスチャー面でもザラッとした質感のミックスとチリノイズで破滅的な耽美路線になっており、なかなか芸術点の高いサウンド。ここにアブストラクトなボーカル入っても良いと思うんだけどなぁ。


Julia Holter – The Laugh Is in the Eyes

ジュリア・ホルターが今年リリースした最新作アルバムと同一セッションからのアウトテイクを単発でリリース。
方向性的にそれほど浮いている事もなく、なぜ収録楽曲から漏れてしまったのかもイマイチ謎である良トラックで彼女の楽曲として目新しさは特にありませんが、チェンバーポップとアンビエントに微かなジャズがコンテンポラリーに纏められた聴き易いアレンジです。
使っている音数はかなり多い割には非常にコンパクトな仕上がりで、印象としては少しだけ普段よりも残響が抑え目な感じもするので、相対的にパーカッションが目立って、Lucrecia Daltの直近作LPのような若干ラテンというかワールドのニュアンスが感じられるあたりも面白いです。


James Blake – Like The End

ジェイムズ・ブレイクが突如リリースした(最近は突如のリリースしかしてない)単発のニューシングルです。
こちら、楽曲よりもこの「炎上ニコちゃん」アートワークが話題になってまして、なんでもFucked Upの以前のアルバムと意匠が似てるって話ですね。まぁ、あちらはイラストだし厳密には燃えてないし何より構図が全然違うしで、正直こちらのジャケットも知ってたけど個人的に別に想起はしなかったですけどね。
楽曲の方もちょっと新機軸になってまして、最早エレクトロニックっていう風体ではなく何ていうかもうレディオヘッド化しちゃってます。こんなに歌い込んでるのも珍しいし、現状ではそんなに良くは無いのですがこの方向性突き詰めるならそれはそれで面白いのが出てきそうです。
※記事書いてた時にリアルタイムでは残ってたのにアップする段階で公式が消えたわ。オフィシャルじゃないけど転載を載せとく。スグ消えるかもね。

件のFucked Upはコレ。


Sun June – 41 Dollars

サン・ジューンがUSツアーに先駆けてニューシングルをリリースしビデオ公開。先月出てたPorchesのリミックスと昨年作アルバム収録曲のデモバージョンもカップリングされています。
たびたび言及してるようにサウンドの瑞々しさが少し減退してしまったのが個人的に残念で、今回もまだ戻ってきていない(もう戻ってこない?)んですがボーカルと演奏のタイム感はどんどん成熟し、これはこれで深みのある、しかし決して枯れすぎていないナチュラルでオーガニックな微ドリームのオルタナカントリー・インディロック。
これギタープレイがどんどんアメリカーナ寄りになってきてるのが印象として影響デカいんだろうね。もっと清涼感のあるポストロック風のスケール大きいアンサンブルもたまにはやってくれ。

デモのほうは完全に弾き語りのような格好なので、ボーカルがアコギで曲作って持ってきたっていう体裁のものでしょう。

今週のLP/EPフルリリース

Lynn Avery & Cole Pulice – Phantasy & Reality (LP)

先行トラックの時点でコレは、とレビュー掲載が内定してた期待作。予想通り非常に素晴らしいです。
大まかな分類としてはウチでたまに紹介している生音系のオーガニックなアンビエントだけど、特徴としてまずはジャズがかなり入ってる点。何つってもこのグランドピアノとテナーサックス、そしてバスクラの存在感が絶大で、アンビエントにおいて主役になりがちなギターやシンセは今作では本当に脇役というポジションに甘んじてます。
テクスチャーは一聴するとどこまでも柔らかそうで、その実は意外とマイルド過ぎないミックスになっており、ボリュームスウェルの頂点などでは軽く歪感も発生する結構ダイナミックな音像をしている。これがかなり効いていて、リズムの刻みが一切ないフリーな空間続きでも完全な環境音になってしまう事なく、意識を向けて飽きずに聴ける大きなポイント。
こういう音楽ってもう音色がいいだとかいうのはある意味当然で、差を生み出すに後はバランス感覚でしかないと思うんだけど、今回で言うとジャズとコンテンポラリーの配合がこれ以上ないくらい完璧なのよね。聴き慣れた感じなんだけど新しいっていう、モダン音楽の基本っちゃ基本なんだろうけど難しい宿命のお題に対して理想的な着地点を見つけてます。安心と信頼の優良レーベルMoon Glyphから。