GVVC Weekly – Week 222

JFDR – Spectator

アイスランドのSSW、JFDR( = Jofridur ヨフリドゥー [ル] 的な発音と思われる)が4月にリリースする新作アルバムをアナウンスし先行曲ビデオを公開。
前作も素晴らしかったけど相変わらず、この人の基本的にはアコースティック寄りなんだけど歌に全振りせず空気感の強い、かつちょっとゴージャズでクラシカルな雰囲気のアレンジが特徴的で、矛盾してるようだがエアリーな重厚感がなんとも言えず、単なる北欧系のエニグマティック・ポップに収まらない独自性があって良い。
地元の美しい自然をフィーチャーした映像も素敵ですね。LPには昨年10月に公開されていた楽曲もオープニングトラックで収録。


Mega Bog – The Clown (Official Video)

メガ・ボグが5月リリースの新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開です。今回、パラダイス・オブ・バチェラーズからからMexican Summerに移籍。
ちょっと路線が変わっていまして、チープめなシンセがメインのアート・ポップという感じに。楽曲自体はそれなりにはひねくれてますんで、一時期のLower Densとかみたいな印象でしょうか。イントロからビートインするトコの螺旋フレーズが完全にスーファミとかのRPGで「空を飛ぶ乗り物に乗った時のSE」にしか聞こえないのであります。(これでした
本人談によるとちょっとスノビズムに厭気してストレートめなカタルシスを心がけているようですが、このトラックだけではまだ何とも言えませんね。


Jordana & Inner Wave – Baby

ジョルダナとインナー・ウェイヴがジョイントツアーに先駆け、そのステージでも披露する気満々のコラボシングルをリリース。
声の組み合わせ的にもTV Girlのフェイクみたいなインプレッションを受けるインディ・ラウンジポップ・デュエットの楽曲になってまして、またしても何でもやれる女ジョルダナさんの七変化っぷりが発揮されております。超ビッグなリバーブの中で社交ダンスしちゃうようなフワフワトラックで、深さはないですがいい感じの即効性をもった甘~いトラック。


Girl Scout – Run Me Over

スウェーデンのバンド、ガール・スカウトのデビューEPは今週フルでリリースされましたが、この曲だけ単体でピックアップします。
ドリームまではいかない、ほんのちょっとだけ浮遊感のあるインディロックっていう趣ですが、それほど北欧を強く想起させるような雰囲気ではなく、言われないとわからないくらい。
ストリングス系もさりげなく入ってきたり、そういえばまあShout Out Loudsとかにありそうなトラックと言えなくもないか。ボトムが結構ガチャガチャいわしてるのが中和剤として機能してて、ヴィジュアライザー通りのロードムーヴィー感を醸し出してるね。
ちょうど日本受けも良いような塩梅だと思うし、クリアにクリーンな空気と蒼さとセンチメンタル疾走など、この辺が中庸なバランスでスムーズにミックスされたナイスな仕上がり。


Feist – Love Who We Are Meant To

ファイスト6年ぶりのニューアルバムがアナウンスされ、一気に3曲同時に出てますがこちらをピックアップ。
やや2ndの頃に寄った雰囲気でほぼギター弾き語りのトラック、正直に申し上げてここ最近の数作、特に前作は微妙な内容で、声はそのまんまだと思うんだけど楽曲なのか歌唱なのか、なんか魅力に欠けるように感じていたがこれは久々に刺さる。
途中ちょっとブレイクしてパッド的な扱いのストリングス入ってくるアレンジもこのくらいでちょうどいいさじ加減が素晴らしい。あまりアブストラクト過ぎたり、趣向を凝らしたりしないで、シンプルに歌物と映画のサントラっぽい方向性においてその凄すぎる特徴的な声を存分に活かして欲しいなと思います。アップルのCMで日本でも多少ブイブイ言わしてたのはもう15年以上前と考えると恐ろしい。

今週のLP/EPフルリリース

Caroline Polachek – Desire, I Want To Turn Into You (LP)

Ramona Lisaの時ああこういう路線で行くのかと納得したがそこから絶妙に軌道修正して彼女なりの最新型ポップスみたいなのを時間かけて作り上げていったような流れは、前作でのスーパーヒットシングルにも恵まれつつ、今回のこれが一旦、最終的な完成系かなと感じる。
チェアリフトの時からある意味ジャンル不明というか、シンセがニューウェイヴがどうのって雰囲気ではなく純粋にポップスでしかないっていうのが、そのまま進化してここまで確立されたってのは一応、最初期から追ってる身からすると感慨深い。中庸な側面があるからこそメジャー系と親和性があるんだろう。本当に間違いなく質が良いし、コンセプトのちゃんとしたアカデミックな組み立てやバックボーンのあるアートとして確立されてて、もはやインディ云々ではないです。
ただその辺の常でちょっと鼻につく部分があるのはご愛嬌というか、スノビズムと自意識のくすぐったさが残ってしまうのはしょうがないのかな。いい感じにこう自我を相対化してナチュラルにしつつこのクオリティを出すのって相当難しいのだろう、ソロアーティストで。
そういや偶然にも上のファイストで書いたアップルのCMで日本でも多少ブイブイ言わしてた経歴がこの人もありまして(多分Feistから1年ズレくらいですかね)アレ今考えてもいい曲だなと思うけど、こういう立ち位置になるとは想像付きませんでしたよね。