GVVC Weekly – Week 223

M. Sage – Crick Dynamo

自らのレーベル主宰や風物詩での活動などでも知られるアンビエントのビッグネーム、マシュー・セージの新作アルバムがアナウンスされ最初の先行トラックが出ました。
今回RVNGからのようで、なるほどコンパクトに全方位性のわかりやすさと聴き易さを伴った貫禄の仕上がり。
Dolphins Into the Futureのような自然派アンビエントとジャズにゆるやかなタイムラプス・エクスペリメンタルの入った極上のサウンドスケープで、今までで一番完成されているかもしれません。最近のカルロス・ニーニョ周りの動きにも共鳴するようなさじ加減で、これは激しくオススメ。


Tiny Ruins – Dorothy Bay

ニュージーランドのタイニー・ルインズが4月にリリースするアルバムからの先行曲。
インディSSW系バンドのフォークロック・アンサンブルで、大自然を感じる少しスケール感の大きいタイプというので、女声版のFleet Foxesを少しだけセンチメンタルに地味にしたようなイメージに。
基本的にはおだやかな郷愁っていう雰囲気の中でリッケンのベースが不釣り合いにブリブリいってるのが面白いですし、全体像にほどよい活気を与えています。地元の映像も大変美しく、サウンドにマッチしておりグッド。


Career Woman – patience (i like you)

L.A.のキャリア・ウーマンが今年最初のリリースとなる単発のニューシングルを公開。
本人的にもちょっと新機軸となるであろう趣向を凝らしたプロダクションの長尺トラックで、アコースティックなサーフェスを保ったまま展開でインディ・ダンスやハウス的な雰囲気に突入し更にニューオーダーへクロスフェードして戻ってくるというラウンドトリップ楽曲になってます。
決してガツンとクオリティの高いものではなくて、あくまでも手元の環境でDIY試行錯誤した手触りが直に伝わってくるのが非常に良く、これこそがインディの醍醐味といった魅力に溢れてます。


Unknown Mortal Orchestra – Nadja

来月リリースされるアンノウン・モータル・オーケストラの新作アルバムから新たな先行曲ビデオが公開。
今回は過去いちレベルでシンプルにしっとりとしたトラックで、人を食ったような雰囲気が一切ないのは珍しく感じるね。
シェイディな美しさのある淡々とした楽曲にボーカルもいつになくか細いタッチに引っ張られ、Whitneyあたりみたいな表情になってます。1曲くらいこういうのあってもいいと思うし、あの独特のギターサウンド自体はしっかりソロで入れてくるのでこの人だとはちゃんとわかるシグネチャー。


Hannah Jadagu – What You Did

ハンナ・ジャダグがデビューアルバムの5月リリースをアナウンスし先行曲を公開。
昨年9月にリリースしていた単発シングルも収録されるようで、当時もコメントしましたがこのSUB POP契約以降の新プロダクションが正直ハマっていなくて、またしてもやや勿体無い仕上がりに。
今回は結構重めにオルタナ突っ込んでヘヴィ・デューティなビッグビート・サウンド。
もともと、リアルタイマーじゃない感覚から繰り出されるチルウェイヴ、ブログ全盛期インディポップのごった煮ヤング宅録スターみたいな風情が最大の武器であり特徴のはずなんだけど、悉くそこを活かしきれてない。
まだ最初なんだから大きな路線変更する必要ないし、これじゃサッカー・マミー辺りの下位互換版みたいな雰囲気にわざわざ寄っちゃってるから、ちゃんと長所を伸ばして。

今週のLP/EPフルリリース

Carol – More Than A Goodbye (LP)

2年前のEPが何曲か気に入っていて、ギリギリで年末リストの選外にしていた彼女の新作は遂にフルアルバム、引き続きDisposable Americaということで期待していた。
うん、良いですね。編成とスタイル的には所謂SSWプラス固定のバックバンドというかたちですが以前より更にしっかりとバンドになった印象。リズムや展開のギミックというものが基本的には一切なく、ただしっかりと歌に寄り添うアンサンブルっていう事に徹底されているんだけど演奏に流したような雰囲気はなく確かに熱を感じるというか、信頼関係が構築されているのが伝わってくる。
フォーマットとしては完全にインディ・フォークロックでしかないんですが辛気臭い感じはなく、ボーカルがそこそこ「めんどくさ系」の歌唱法なのでどうしてもある程度以上はドラマティックな部分が出てくる。ただそこでミックスやアレンジをクセが強くなり過ぎず、鬱陶しくならないラインでほどほどに、美しくナチュラルに仕上げているのがベストなバランスで結実していてずっと聴いてられます。
おそらくなんですがあまりバックボーンとしてインディだオルタナだレフトフィールドだっていうトコに深い造詣と一家言あるようなタイプではないと思われ、下手すればしょうもないメジャー予備軍のオルタナポップ・アメリカーナになりかねないはずが何故かそういうものとは一線を画していて、そこがある意味ホンマもんの人たちには逆に真似できなさそうな変哲のなさを持っており不思議な部分も。いやらしさがなく真摯な感じがするからかな。
しかし、この身も蓋もない屋号ちょっとどうにかならんかな、特にここ日本だとあの矢◯◯吉のバンドと被ってっしよ。


Model/Actriz – Dogsbody (LP)

メディアでのハイプっぽい扱われ方を少し感じて警戒してたがうん、確かにこれは格好いい。
基本ノーウェイヴというか、インダストリアルも入ったエクスペリメンタル・ポストパンクといったところで、中後期のLiarsの音楽性をエレクトロニック全振りじゃなくして表現してる感じとか、ポストエレクトロクラッシュ的な見方もできる。ピンポイントではXiu Xiuみたいな瞬間もあるけどあそこまでアーティスティックではなくて、破壊的な雰囲気も過剰ではなく全体的にはソリッドで色気のある優等生的な仕上がり。
ちゃっかりM-5とかM-10みたいなのも入れてるのがポイント高い、それもちゃんとモノにできてるしね。True Pantherからってのもなんだか絶妙に納得できる整った内容です。