GVVC Weekly – Week 225

Angel Abaya – Better

L.A.のSSW、エンジェル・アバヤが5月にリリースするデビューアルバムから三つ目となる先行曲をビデオで公開。
いわゆるバンド編成ソロシンガーで、他の曲はガレージ・ポストパンク調だったり、サイケ・ドリーム風のインディロックだったりとこの手合いの中でもそこそこ振り幅の広いサウンドですが、今回はゆったりしたテンポでねばねばもこもこのベースとモッサリ進むスロウジャムに淡いレイヤーあしらわれたサンシャイン・レイジー・ポップです。
Long Beardやライトニング・バグあたりをもっと気の抜けた感じにしたような雰囲気で肩の力抜けた美しさ。オリジナリティは薄いですが、素晴らしいバランス。


Beach Fossils – Don’t Fade Away

ビーチ・フォッシルズが6年ぶりとなるオリジナル新作アルバムをアナウンスし、最初の先行トラックが出ました。
サウンドは相変わらずこの人でしかないけど、過去作より比較的、より歌に比重が置かれているような作りになっていて、おととしリリースされたジャズアレンジのセルフカバー作の雰囲気も踏襲するマイルドめにコーラスを聴かせるサウンド。
しかしながら、変に落ち着き過ぎたりレイドバックしたりすることはなく、どこかチャカチャカと軽く性急な雰囲気を保っていのが面白い。年甲斐がどれだけ出てもこの辺残ってるのが素晴らしく、ちゃんとダスティンもまだカッコいいままです。


Alaska Reid – Back to This

アラスカ・リードがLuminelleからリリースするデビューアルバムをアナウンスし、そちらから最初の先行曲ビデオです。(前回のやつは9曲入りでもEP扱いのようです)
引き続きA. G. Cookの共同プロデュースで、そこそこ時間もかけただけのことはあるか、ソロ名義では明らかに今までで一番良いでしょう。
ちょっと中途半端だった方向性も明確になってきて、少しアメリカーナを感じるシネマティックなスケールのオルタナポップ風楽曲は毒気を抜きインディロック化したLana Del Reyのようなイメージ。
随分オーガニックになり、もともとAlyeskaの時のサウンドが一番好きだったからある意味ようやく戻ってきたとも言えるし、これがベストなフォーマットかな。


The Antlers – I Was Not There

ジ・アントラーズがNYでの一夜限りライブのアナウンスにあわせて完全新作のニューシングルを公開。
ちょうど2年前の前作アルバム以降、アウトテイクやリミックス、ボーカルのソロで発表していた曲のリテイクなどのリリースはありましたがこちらプロパーのブランニュー・トラックで、今までにない進化を見せています。
ブラシブレイのクワイエットなドラムとシンセエレピによる弾き語りがベースとなったもはやジャジーバラッドのような出で立ちに、元来のシグネチャーであるモダンなアンビエント・テクスチャーはそのままというバランスはビルボード・ライブなんかで着席で鑑賞するような路線の音楽が少しだけポストロックの衣を纏ったような質感になっていて、ある意味で他に無いようなサウンドと言えるし面白い。ぜひこのテイストで1枚作ってみて欲しいな。


Róisín Murphy – CooCool

モロコのロイシン・マーフィがNinja Tuneとの契約をアナウンスし同時にニューシングルを発表。
今回DJ Kozeのプロデュースということですがずいぶんマイルドというか、悪目立ちしがちだったケバさやキッチュな側面がかなり抑えられていて、あっさりとお洒落なラウンジ・ソウルポップというか、さわやかになったThe Avalanches風の音楽になってます。
決して最後まで突っ込まない寸止めの平熱アレンジが絶妙にクール。正直このトラックに関して個人的にはいままでのソロ作で一番だと思うし、次回作アルバムも全体的にこの雰囲気だったら良いですね。

今週のLP/EPフルリリース

Fever Ray – Radical Romantics (LP)

もうさー相変わらずとんでもねージャケ、怖すぎるし正直やめてほしいがでも、それを含めて “フィーヴァー・レイ”やから…!
音の方はもう完璧っす、ますます磨きがかかる唯一無二のエキセントリック・エレクトロニック・アートポップ。これくらいのレベルならもう音楽、オルタナ、カウンターカルチャーとかそういうのすっとばして、芸術と胸を張って言っても許されるよね。なお多少フォーマットがよりポップス構成に近づいてるきらいもあり、つかみの良さも過去イチかもしれません。
前作に引き続きザ・ナイフでの相方、実の兄弟がやってる電子管楽器がいい味出してる。前からやってた電化トライバル・アブストラクトジャムみたいな部分も強度がアップしてて、M-2とかも俄然聴けるし、変な話アニコレとかGang Gang Danceと並べられるような部分もあり、退屈しない。
しかしこれでいったん完成かな、同じ路線でこれより先は見えないからひたすら自己模倣か、もっとポップにしちゃうか、全然違うことやるか。でもこの人の場合バランスのまぐれ当たりじゃないから何やっても悪くならないはず。


Hanakiv – Goodbyes (LP)

上のアクが強すぎて、ちょっとベクトルの違いすぎるもので口直し。えーと、ネオクラシカルをベースにポストロックとニュージャズにミニマルまで入ったコンテンポラリーミュージックって感じで、ニルス・フラームとかがもう少しとっつき易くなった雰囲気。
エストニア生まれロンドン育ちの女性ピアニストによるデビュー作らしい。これで完全なるピアノ独奏だったり、エフェクティヴにウェットな質感じゃなかったらば普通だが、客演楽器のバリエーションがあって曲によりささやかな打楽器まで入ったり、そこそこ雑なリバーブ(悪い意味じゃない)が深いあたりもいい具合に違いを生み出してます。
無機質に突き放したような部分はなく、全体的にけっこうドラマチックだったりメランコリックだったり、Bryce Dessnerあたりのコンポジションに通じるところも。アルヴォ・ペルトにレジーナ・スペクターからシガーロスなんかも好きみたいでアイスランドで勉強もしてたみたい。なんか成る程って思うよね。普通に美しい音楽だし、オススメです。