ムニャちゃんが10月にリリースする新作アルバムからこれでもう三つ目の先行曲がビデオで公開。
今回はお互いの楽曲を頻繁に客演で行き来するおなじみのズッ友、Kainaluくんを迎えたトロピカルなインディ・ダンスのナンバーで、今まであまり無かったようなフレーバーが加味された小気味好いトラックです。溜めて上げてコーラスでズドンという構成ではなくやや散漫な構成のBGM然とした仕上がりで、ビートのキレや圧も踊らせるのかどうかの意図が微妙なラインですがこれは芸術点がアップする良い曖昧さだと思いますね。
ちなみにミックスの関係もあるのですがあんまりカイナルくんの声と本人の声にカラーの差が出ておらず、全部MUNYAが歌ってても仕上がりに影響がないような残念な客演になってしまっています…。
ギターを持っていないフラワーロックのようなキャラクターが登場する気の抜けたアニメーションの映像も雰囲気にマッチしていてナイス。
Courtney Barnett – Different Now (Chastity Belt cover)
コートニー・バーネットとカート・ヴァイルがそれぞれチャスティティ・ベルトの別楽曲をカヴァーした7インチが10月に出ます。で、そのCourtney Barnett面の楽曲がこちら。
Chastity Beltの2017作LPオープニングトラックで、原曲はもうちょっと焦燥感のあるクラウト的な雰囲気も持ったサウンドでしたが少しだけマイルドに丸く、瑞々しく仕上げてました。とはいえそこそこ忠実にやってまして、おそらく本当に好きなんであろうリスペクトを強く感じるテイク。
当GVVCでしつこいぐらい事あるごとに言ってますが個人的にコートニー・バーネットにはこの路線、抜け感があってギターも完全クリーンのサウンドでずっと進んで欲しくて期待してます。今回とかは結構理想系。でもね、やはりライブで食わないといけないから…そういう需要に引っ張られる部分あると思います。彼女に限ったことではないのだけど。
Laura Misch – Hide to Seek
トム・ミッシュの姉、ローラ・ミッシュが10月にOne Little Independentからリリースする新作アルバムより先行曲をビデオ公開。
空間を大きく使った最小限のエレクトロニック系ビートに、存在感抜群のファットなサックスとコンテンポラリーなインディフォークが躍る、ありそうでない音像。弟のサウンドがあれだし、以前はもっと明確にhiphop / beats畑のアンビエントシンガーみたいな趣が強かったと思うんですが今回はより生っぽい躍動感を伴ったSSWバンドのような質感に近接していて、ちょうどその両者の中間っていう感じの落としドコロなのが面白いです。私と同じようなことばかり気にして音楽聴いてる人でないとイマイチ腑に落ちないかもしれないホントに微妙な部分なんですけども…。
ちなみに、草原でサックス吹きながら宙吊りになって浮上していくこの映像ダサすぎませんか?アルバムのジャケットも相当アカンです。
English Teacher – The World’s Biggest Paving Slab
リーズのバンド、イングリッシュ・ティーチャーが2020年発表の楽曲を再録して新たにリリースしビデオも公開。
アレンジや趣向を大きく変えているわけでもなくたった3年という短いスパンでセルフ・カヴァーというか、ホント純粋にブラッシュアップされたバージョンでしかないのですが、歌唱からサウンドから何から全てスケールアップ、コク・深みと説得力が倍増してまして成長ぶりが凄いです。
オルタナとUKポストパンク~シューゲイズやUSインディロック辺りのこういう純バンドサウンドもの全てを渾然一体に詰め込んだような楽曲のポテンシャル自体が高いのもあり、公式再録に踏み切ったのも納得の仕上がり。要素がスムーズに融合していてバンドの代名詞となり得るようなコマーシャルナンバーで、さぞかし演ってて楽曲がどんどん成熟してきた実感が本人らにあったことでしょう。
元の音源も全然良いんですけどね。2020年版の方もビデオまであった気がするんだけど本リリースにあわせてYoutubeでは全滅してまして、bandcampにはまだ残ってます。
今週のLP/EPフルリリース
Laura Groves – Radio Red (LP)
いや、フルアルバムまで長かったね。まあ、ライブ・音源ともにサポート等々での活動が本業というか忙しそうってのもあるが、それにしてもこの名義だけでもう10年はやってる気がする。あのBlue Rosesの人って気付くまでに時間がかかったし、その頃からカウントするといったい何年やってんだろ。
さて、内容の方は当初のザ・宅録SSWって感じの雰囲気からどんどん洗練され、今回は結構ガッシリ作り込まれたウェットで深~い音像。Katy J Pearsonやモリー・バーチあたりのモダンスタイル・インディごった煮SSWポップからビートレスのアンビエントフォーク、俗っぽくなったジョニ・ミッチェルみたいなラインまでという感じ。
基本的にこの人はなんちゅうかメロディや音楽性が結構大味で、ある意味で普遍的とも言える絶妙なラインであってどこか中庸。でもそれは必ずしも悪い意味ではなく、派手な中庸というかね…ボーカルは中々特徴あって良いと思うし、無難にニュートラルな歌モノとして中々いいんじゃないんでしょうか。でもなんかやっぱ音楽性にもうちょっとクセというか明確なベクトルが欲しいところではあるよね。
Hurry – Don’t Look Back (LP)
基本的には甘くファジーなインディ・オルタナロックで、そこはかとない気品と奥ゆかしさを犠牲に人工甘味料的なキャッチーさを増強したTeenage Fanclubと初期プライマル・スクリームの混ぜ物をもうちょい元気にパワーポップ・ジャングリー化したって感じの音楽。
スピッツに始まり大江千里と日本の音楽空耳を連発し、それ以外も細かい部分でなんか一昔前の日本のロキノン周りバンドもやりそうなフレージングが随所に光るギリギリなポップセンスなどなど、種々の要素でいかんせん胡散臭さが漂ってるあたりが面白ポイントと残念ポイントが表裏一体。本人らが大真面目だったらちょっと申し訳ないんだけどそんな真面目に聴く必要ない、気楽に構えてていい音楽。曲により挿入されるトランペット、トロンボーンが相当効いてます。
なんだかんだ前作よりアルバム全体としては今回の方がクオリティ高いですよ。ジャケットが酷いけど。