GVVC Weekly – Week 249

Katy Kirby – Cubic Zirconia

ケイティ・カービィがレーベルをANTI-へとステップアップしデビューアルバム以来となるプロパー新曲を単発リリース。
前作の時点であまりにも完成され過ぎていたため昇進は既定路線で何の驚きもないですし、収まりの良いところへ移籍したんじゃないでしょうか?さてサウンドの方ですが、ナチュラルな雰囲気はそのままに前作で特徴的だった絶妙なクランチが今回は鳴りを潜め、より解放感と広がりのある音像に。
そのせいか少しソロアーティストっぽさも薄れて、歌唱の都合で緩急自在に進行するそこそこフリーフォームな楽曲展開も自らタグ付けするポスト・フォークというのが成る程しっくりくる仕上がりです。悪くないんだけど、ただ正直これだけだとちょっと独自性が薄れた感じもするしやや微妙かな。後続の楽曲に期待ですかね。


Cheekface – Plastic

L.A.のチークフェイスがまたまた単発のシングルをリリースし、ほんとどの意味のないリリック・ビデオを公開。
いやまあ、今回も相変わらずなんですけども昨今の喋り歌い派閥の中ではやはりなかなか好きです。なんだかんだポストパンクではないからなんでしょうか、ある意味ペイヴメント的とも言えるし、脱臼まではいかないまでも肩の力抜けた洒脱シニカル西海岸インディロックのシンプル理想形。こちらもいつも通り、なんとなくわかるようなわからん微妙に風刺っぽい歌詞ですがあまり扇動的じゃなく淡々としてるのがヨイね。


Devendra Banhart – Nun

ディヴェンドラ・バンハートが今月末にリリースする新作アルバムから新たな先行曲が公開です。
今作はケイト・ル・ボンのプロデュースということもあり、最初のリードトラックからしていつにないイメージの装いでしたが、その後全容が明らかになるにつれて、全ての曲が軒並み新機軸というわけではなかった。
今回の楽曲もアブストラクト・ミニマルなラテンアメリカ・フォークロックってな塩梅で今までの彼にもにあったようななかったような微妙なラインですが、このブラシストロークのスネアが謎の位置に挿入されまくって明確にポリリズムって訳でもない、何とも言えないウラウラのフラ打ちみたいな気まぐれゴーストノートが気になって仕方ない。気持ち良いような悪いような。

今週のLP/EPフルリリース

SPIRIT OF THE BEEHIVE – i’m so lucky (EP)

フィジカルで7インチのEPということで2分3分2分3分トータルランニング約10分の4トラック収録だけど、コンパクトにこのバンドの魅力がギッシリ詰まってて過去最高に素晴らしい内容。何か変わったのかな?全体的にちょっとだけシンプルめになったというか、構成に無駄がなくなってて随分聴き易いような。
それでも元の良さは全部残って純粋に整理された感じで素晴らしい。前作LPは貫禄たっぷりだけど、やり過ぎちゃってるような側面もあったしこれでいいのよ。それでも相変わらず形容は難しく、エクスペリメンタルというのはどこか違う気がするしアートロック…になるのかな、それかオルタナティブ(否オルタナロック)というしかない。短い中にも発狂やブレイクは健在ですが鬱陶しくないようキレイに纏められてて、好き者には物足りないんだろうが私はこれでいいと思います。曖昧でプログレッシヴな展開からの唐突な甘さやセンチメンタルで突き刺すM-2とかまさに求めてたカタチの1つだし、このさじ加減で次回作LP行って欲しいが相当ひねくれ者揃いだろうから、そうはいかないだろうね。


Rae Fitzgerald – Say I Look Happy (LP)

いや、シンプルにインディフォークのSSWバンドスタイルでしかないサウンドでアクの強いような部分は一切ないのですが、なんて繊細なボーカルなんでしょう。いわゆるウィスパーボイスっていうのとは少し違う、カサンドラ・ジェンキンスとかは割と近いとは思うがもうちょっと何か軽く病的なものすら感じるか細さで、楽曲により普通にロック三点セットの仕様を保ってはいるが演奏もアレンジも骨太の真逆というか、しっかり鳴らしてる局面においても印象がなお静謐。押したら倒れそうな位。
それでもそんな中にもしっかり尖りとメリハリはあって、歌詞の内容なんかはフラストレーションの発露を感じるし、ひたすらに柔らかく丸いっていうような代物では全くないのが確かに伝わってくる。まあオリジナリティって部分ではイマイチだし、もうちょっとだけ、ほんのフレイバー程度でいいんで芸術点アップさせると相当仕上がると思うね。
しかしKeeled Scalesってまじ鉄板レーベル過ぎてスゴイわ。あれもこれもですよ…