GVVC Weekly – Week 259

Fabiana Palladino with Jai Paul – I Care

ロンドンのSSW、ファビアナ・パラディーノがジェイ・ポール兄弟のPaul Insitituteレーベルコンピ以来となる単発のニューシングルを公開。今回はJai Paul本人を引き連れて登場ということで、7インチでもフィジカル化されてます。
まず、あのピノ・パラディーノの娘ってのがそれだけでネームバリューあり過ぎ(しかもカワイイ)なところに、これまた異様に数字を持つ男ジェイ・ポールが客演というトンデモ砲弾で、マスからインディから世界そこら中のメディアにも掲載されておりウチが協賛する必要性ゼロなのですが、たまには追従してみます。
楽曲の方はそれほど目新しさはない、深いプロダクションのフューチャーソウル・オルタナR&Bでして、正直このサウンドってもう10年くらい前(Jai Paulのアルバムリーク事件もまさに2013)な感じするんですが、もはや定番化っつーのか、そこんとこは特に誰も気にしてない感じですね。まあ確かに以前の数曲よりかは今回の方が聴けます。
なおこのサウンド、音楽性ではボーカルが良いとか悪いとかもそんな分からんというかほとんど素材化しており、今後に期待もクソもないような足しも引きもしない内容ですが、存在としてのパンチがあり過ぎて、久々のリリース・キャンペーンとしては大成功なんじゃないですか。


youbet – Carsick

ブルックリンのバンド、ユーベットがHardly Artと新たに契約し挨拶がわりの単発ニューシングルをビデオ公開。
ブチブチのファズかました一瞬のイントロから始まるブルージーなオルタナ・フォークロックで、枯れた音像とダウナーな厭世観がぶっ壊れそうなメランコリアと混ざり合ってスモーキーな雰囲気が非常にクールです。しかもイントロのファズは二度と出てこない。
今回、全体的なサウンドの説得力が3年前のアルバムと比べて一気に進化しており、比較にならないくらい深みと味わいがアップ。これは次回作に大変期待できますね。


Trinket – Silver Thread

ブルックリンの3ピースバンド、トリンケットが単発のニューシングルをリリースしビデオを公開。
フォーマットとしてはシンプルなインディギターポップで、ジャングリーとドリームの中間くらいな塩梅かな。あまりキメ細やかなサウンドではないところに、alvvays路線(というかもはやパク…)のクセのない清涼感のあるクリアなボーカルとモコモコ元気なベースがいい感じにミックスされ、ちょうどよくステキな感じにまとまってます。
あまり語ること多くは無いのですが、最後だけちょっとフリーキーにカオスになって終わるのが面白いかな。


Maz – Little Fury Things (Dinosaur Jr. Cover)

ユタ州のオルタナポップSSW、マズがダイナソーJr.の一番良い曲(当社比)をドリームポップカバー。
正直今の説明がもう全てでそれ以上語ること無いというか、そんなもの凄く良い出来とかクオリティとかでもなく、そりゃこうなるよねという代物なのですが、わざわざやってくれてアリガトウという感じです。想像通りだけど、一回聴いてみたかったやつ。
正直、飲食店とかでかかってて、歌の入りでアレ?これダイナソーJr.じゃんとなる、その瞬間に輝くのためのトラック。実際その場では盛り上がりますよ。


Middle Kids – Driving Home For Christmas (Chris Rea cover)

新作アルバムのリリースを来年2月に控えるミドル・キッズですがそのキャンペーンとは無関係に単発でUKの大御所SSW、クリス・レアのクリスマスソングをカバー。
原曲はいわゆるUKにおける山達のあの曲みたいなポジションなのか、毎年毎年、シーズンにはチャートインし、レイト80’sのオリジナル・リリース時より2000年代の方が上位をマークしたりという感じの定番楽曲で、本来ガサガサのハスキーボイス・ダンディ歌唱なのですがこちらは見事に綺麗にハンナ・ジョイ節へ置き換えられています。
すげーノスタルジックな音像のピアノリフとシャッフルを抑え気味にしているのが効いてますね。いやぁ、いい曲だな普通に。

今週のLP/EPフルリリース

meagre martin – Gut Punch (LP)

先行で出てたM-2が良くてマーク済み。一応インディロック・インディポップということになるのか、なんとなく中庸な雰囲気のあるサウンドでいまひとつ明確な尖りはない。
元々はUS・ボストン出身の中心人物が2017年からベルリンに移ってそこで始めたということになってるが、媒体によりUSの3ピースという記載もあり、始まったばかりのalt-JのUSツアーに全面帯同しているみたいなんで実質、二拠点ということなのかな。
ボーカルはやや甘めの質感だけど歌唱自体は割とエモいというか、感傷的な熱量の高いタイプで、それをドリームやシューゲイズまではいかない程度にウェットなギターサウンドで装飾したシンプルな作り。特段、取って付けたようなバッキングというわけではないが、悪い意味ではなく一人で弾き語ってもさして印象は変わらなかろう楽曲群は基本的にメロディと節回しのクオリティが高く、1つや2つはあるのがデフォの全然ダメな曲というのが入っていなくて素晴らしい。
しかし本当に素体だけで勝負してる感じがして凄いとも言えるけどどこか勿体なく感じて、かといってこうしたらいいんじゃない?っていう明確な方向性が見えてこないのが難しいね。もっとアーシーにアコースティック寄りにしてアンサンブルの馬力を強化するか、そうでなければ今は寸止めになってるシューゲイズ系の要素をいっそ解放するかの二択だとは思うが、どちらにしてもまた違った意味で陳腐化しそうで悩ましいところ。なんとか最適解を見つけて欲しい。M-2、M-3、M-10がオススメ。