フィラデルフィアのザ・ゴーリーズ・アンザイエティ・アット・ザ・ペナルティ・キックが4月リリースのニューアルバムをアナウンスし最初の先行曲を公開です。
コレ本当は先週プレミアですが例外的に今週のウィークリー掲載します、リアタイで捕捉してたんですがサンクラのみかつプレミア先のみ公開でEmbedも不可という手も足も出ない状態だったので仕方なく見送ったという事情がありましてね。アルバムのbandcampもその時は存在せず、今週になってから出ました。何でそんなことするんだろね、マイナスしかなさそうだけど。まぁプレミア先に過剰に義理を通すとするなら厳密にはその運用になるから理解はできるけど。
さて内容の方ですが、キメ細やかでブライトな質感のUSインディ・チェンバーポップになってまして、3人も兼任ボーカルを擁する編成から繰り出される常時ユニゾンした歌唱がウォームな祝祭感をプラス。もう3年半も経つ前作も好きだったけど、サウンドのクオリティ、伸びやかさが明確にレベルアップしており、完璧な方向性に正当進化していてLP本編に期待が持てる仕上がりです。
後はやはりハープやバイオリンのパーマネントメンバー居ると楽曲に幅が出て強いですね、改めて。
Dancer – Change
グラスゴーのダンサーが3月にリリースするデビューアルバムから新たな先行曲をビデオ公開。一つ前の楽曲も紹介したと思いますがこの人たち本当に素晴らしいです。
一聴した感じだとキッチュ~キュート系のポストパンクと思うかもしれないが、所謂トーク・シンギングと見せかけて歌メロディ自体もかなり凝ってるのと、ギターが完全に(ミッドウエスト)エモ流れのマスロック的なフレーズを挟み込んでくる上にオルタナ系のそこはかとないダークさも入ってるという、バンド音楽のスーパーハイブリッド型のように聴こえる。
さらには不思議とフルバンドなのに宅録、ベッドルームポップのこじんまりした雰囲気まであって、一体どうしてこうなってるのか理解不能、スコットランドなのにスペインのレーベルからってのも謎だしいいね。とにかくちょっと突然変異の凄みがあり、かなり前途有望というか今後のステップアップ間違いなしだと思う。これは今すぐどっか拾った方がいいレベルの才能です。
Iron & Wine – You Never Know
サム・ビームことアイアン・アンド・ワインがプロパーのフルレングスとしては実に7年ぶりとなる新作アルバムをアナウンスし先行曲を公開。
一時はUK/EUで4AD、北米はWarner~Nonesuchからのリリースになったりしてたが見事にサブポップへ出戻りの2作目かな?トータルではこれが7枚目みたいです。
内容の方ですが今回はストリングス、オーケストラががっつり参加しているみたいで、いつも通りのウォームさにふくよかで芳醇なサウンディングがプラスされ堂々とした豪華な仕上がり。これだけ聴くともはやフォークというよりチェンバーポップのような響きで、まあシングル曲だからこそのサービストラックではあると思いますがLPもなかなか期待できそうな雰囲気です。
いつも思うけど、この人節回しが枯れ系音楽専のソレではなく結構キャッチーにわかりやすい部類だと思うんで、威勢のいいバンドサウンドばかり聴いていた人らが加齢でしっとりしだす時の入門用としてうまく機能してるきらいがあり、存在としてちょっと面白い。いつかの二枚組でポスタル・サーヴィスやニューオーダーのカバーとかやってたけどそれの印象も強いしね。
Beth Gibbons – Floating On A Moment
ポーティスヘッドのベスがドミノからソロ名義のフルレングス作をリリースします。アナウンスだけ先に出てましたが遅れて先行曲がお披露目。まず触れ込みがソロデビューとのことで、いや凄く前に確か出してたよなと思ったら微妙に連名(Beth Gibbons & Rustin Man)だった。つまり生粋のソロ名義としてはやはりこれが初らしい。
さて内容の方ですが、まあフォーク化したポーティスヘッドである。エレクトロニックというか、広義のビョーク路線というか…な幽玄系のサウンドで来ると思ってたが大ハズレ、まるで違ったね。コレむしろブルー・スクリーン・ライフの頃のピンバックみたいな雰囲気があり、スロウコア的な飾り気のないオルタナフォークロック。非常にドライな音像でこの強すぎるボーカルをうまく活かしたサウンドとは言えるし、成る程まあ納得感のあるアウトプット。しかしこの悲壮感漂う苛烈な歌唱、好みかどうかは置いといて本当いつ聴いても感心するわ、唯一無二。
Gurriers – Des Goblin
ダブリンのゲリエズがツアーのスタートに合わせて単発のニューシングルをビデオ公開。
もっとちょっとオーセンティックなポストパンクだった気がするんですがメンバーかわったりもあるようで、その影響かは不明ですが楽曲が一気にASIAN DUB FOUNDATION化してます。
なんかさ、凄く良いとかじゃないんだけどいわゆるダークめで焦燥感のあるポストパンクバンドがダンスに寄った上でラップというかスポークンワードやると俄然この手のミクスチャー化するってのは面白いというか、謎に納得感あってピンと来たんですわ。まさにY2Kサウンド。
今週のLP/EPフルリリース
oh caroline – Monochrome (LP)
サウンド的にはUKガレージ(ガラージュと呼ばれる方のね)、R&Bなどがかなり入ったいわば半エレクトロニックのベッドルームポップ路線バンド版で、ウチでよく紹介するものの中ではメルボルンのHuntlyとかが違いのかな。マニトバ州ウィニペグだけど、正直あまりカナダっぽくない。
しかし面白いのはボーカルがゴスまでは行かないが、そこはかとなくダークな雰囲気があり少しドスの効いたウィスパーっていう(矛盾した?)不思議なタイプでコレがかなりサウンドの特徴になっている。楽曲的には明るめで清涼感のあるトラックも多いのにそこに影を落とすこの声色というか歌唱が、単純にキレイなソフィスティケイテッド・ポップスに終わってしまわない芸術点をプラスしてます。
楽曲構造としては全然エクスペリメンタルとかではないし、タグにsswも入っている通り基本はシンガーの作曲ありきで構成してるのであろうソング・オリエンテッドなタイプなのにも関わらずメロディ自体も全体的に薄めかつひねくれ気味で、敢えてキャッチーになり過ぎないようにしているんじゃないかとすら感じるが、それもただこのボーカルのせいでそう聴こえるだけかもしれねえ…。楽器隊の音色もなんとな〜く暗いし、とにかく鮮やかさがないよ!でもそこが肝になっているという、なんか癖になる音像。まだまだ未完成で伸びしろだらけなので今後も注目です。