GVVC Weekly – Week 286

Cola – Pulling Quotes

コーラが来週リリースする新作アルバムから最後の先行曲をビデオ公開。昨年のシングルも2つ収録されてますのでこれでもうLP10曲中5曲公開されてることになり、もうほぼ出てるのも同然ですかね。
さて今回の楽曲はポストパンクを感じさせないオーセンティックな歌モノUKロックのような構造になっており、ティム・ダーシーの声が珍しく「歌」として非常に映えるという普段と少し趣を異にした仕上がり。どうやらそれは今回もう一人の元Oughtメンバー、ベンが習得中であるバグパイプのドローンをイミテーションとしてのベースラインを作曲上の縛りにした結果らしく、制約をつけて発展的にトライしたらおもしろアウトプットが事故的に成立したという偶然の産物です。
個人的にはポストパンク的なコンポジションは別に好みではなく彼のボーカルをひたすらに評価してる感じなので、むしろこういう路線がメインになっていってほしいが、まぁならないだろうね!


OSEES – CASSIUS, BRUTUS & JUDAS

今年DMBQ招聘で来日公演も行っていたオーシーズが8月にリリースする新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲を公開。
もはや何枚目かもわからない、特にジョン・ドワイヤーの課外活動やサブバンドも含めたら膨大なディスコグラフィになってカウントするのも無意味なレベルに多作な彼。アルバム全体的にそうなのかは不明ですが今回はいつものサイケやガレージのテイストが薄く(だから私が気に入るわけだが)高速クラウト・パンクにバリトンサックスが大暴れする3分未満の直線的なトラック。
質感はゴッソリEQで削ったいつもの特徴的なサウンドですが楽曲に最高にマッチしており、どこまでも生々しくリアルな勢いを増幅させてます。ドラム全般、特にライドのカップがとてつもなくいい音してて感動モノ。


Cassandra Jenkins – Petco

来月リリースされるカサンドラ・ジェンキンスの新作アルバムからこれで三つ目となる先行曲がビデオ公開。
こちら前作およびこれまでのトラックからはおよそ予想できない新機軸で、ギターも軽く歪んだまさかのオルタナポップですが歌唱だけはいつもの消え入りそうなウィスパーで程よいバランスに落ち着いたインディロックの音像に。
これはこれで良いんだけど、独自性はかなり薄れるし埋没しちゃいそうなので、アルバム内ので味変スパイス楽曲にとどめておいてほしい。それにしてもコレ入ってくるとLP全体の流れどうなるんでしょう。
なおクラブDJやったり自己陶酔的な表情で90’sのMV風ポージング&カメラ目線とか挙句はピンクの髪で猫耳猫手袋姿を披露と今回だけで積み上げたイメージ完全崩壊の映像はナルホド本人のディレクション。ちょっと悪趣味ですがこの選択の意味はわかる。

今週のLP/EPフルリリース

Bloomsday – Heart of the Artichoke (LP)

2年前のアルバムも当時レビューしたし、今回の先行曲も1つくらいは取り上げたような気がするね。Bayonetからは継続で、CDカセットだけだったのが遂にヴァイナルデビューおめでとう。
前作はなんかもうちょっと淡々として内省的なインディフォーク主体だった印象なんだけど、歌唱はよりエモーショナルに、サウンドもよりオープンに開けて印象がマイルドになった進化版。表層の質感だけでいくとしっとり淡いのは前作なんだけども、意識の変化なのか、間口が広くなってるんですよ。曲により比較的重めにオルタナの風情入ってくるトラックもあるし、ちょっとポストロック〜スロウコア的なインスト楽曲も挟み込んでたりと、そこそこ編曲の振り幅もあって優秀です。
それでもリズムに遊びが少ないからか一歩調子ぎみで、ずっと通して聴いてると流石に飽きてしまうんだけど、常にメロディはかなりセンスがいいのでそこで何とかもってる。ホントにSSWって感じだから、フルバンド化したらまだまだ相当良くなりそうなんだけどな。レーベルもいいしもっとイケる。


PENNY DROP – LANDSCAPES MADE OF PIECES (LP)

おもしろい。一応、近似値としてはポストハードコアになるのかぁ?色彩がなく殺伐としたタイプのやつで、ジャズのニュアンスも多分に入ってるのでつまりその組み合わせでは当然マスロック的なモーメントも頻出する。
線の細い女性ボーカルが蚊の鳴くような叫びというか何というか、歌唱のスタイルとしては大暴れ系なんだがシャウトにも全くドスが効いてなくてもはやスキャット風になっちゃってる腰砕け。おまけにベースがいない3ピースなもんでオケの方も相当スカスカで、あくまでもアレンジメントの方向性としてはアグレッシヴで激し目なんだけども、音源としてのアウトプットは音圧とかインテンシティとかと無縁っていう残念なのかそこまでも込みでの「音楽性」なのか不明な仕上がり。
とにかく底知れぬ異彩を放つ芸術作品には違いなく、さすがフランスです。大真面目にやってたら失礼だが、でも最終的な感想はやはり「おもしろいサウンド」かな。ライブは間違いなくみたい。