GVVC Weekly – Week 288

Lunar Vacation – Set the Stage

アトランタの5ピース、ルナ・ヴェイケイションが9月にリリースする新作アルバムから最初の先行曲をビデオ公開。
一見(一聴)ファジーなオルタナ系シューゲイズのサウンドを纏っていますが、コード進行やメロディの流れが完全に昨今のバンド系SSWの楽曲で、コンポジションの本質はそちらにあります。
まあ、それだけっちゃあそれだけなんですけど、こういうサウンドサーフェスっていうのはどうしてもギタリスト先導になってしまう音楽性ですので、アコギで作るような明確な歌物ありきでは意外と美しく成立しにくかったりする組み合わせな為これは貴重な一発だなと。アルバム全編こういう感じだといいな。


Cold Gawd – All My Life, My Heart Has Yearned For A Thing I Cannot Name

サウス・カリフォルニアのコールド・ガードが新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲を公開。
このバンドはオルタナどころかグランジまで行った先のシューゲイズに更にポストブラックメタルあたりの重さまでを加えたサウンドで、少しノイズ〜ジャンクな雰囲気もあります。
今回その特徴は健在ながらも過去作に比べ、より甘めに順張りシューゲイズ・ドリーミンしたメロディアスな楽曲になっていて、どっかで聴いたような感じではありますが良好なバランス。
ちなみにメンバーの見てくれはめっちゃくちゃ怖いし、キャラクター的な存在としてはEnumclawあたりとダブるかな。


Horse Jumper of Love – Snow Angel

ホース・ジャンパー・オブ・ラヴが8月にリリースする新作アルバムからこれで三つ目の先行曲をビデオ公開。
LPではオープニングトラックに配置されたこちらの楽曲はギターにWednesdayのMJ Lenderman、コーラス(ほんとにチョイ役ですが)にSquirrel FlowerのElla Williamsをそれぞれ客演に迎えた90’s風のダウナー・オルタナシューゲイズのトラックで、今までも多少そういった要素は無きにしもあらずでしたが、ゲストの影響なのかここまで思い切りこの路線に振ったのは驚き。
しかし、情報を見ずに聴いたら最近のDIIVと言われても信じるようなクリソツの仕上がりです。先に出てた2曲も少し辛口の調整というか過去のアルバムより重めなニュアンスがあるしジャケットも一転して黒いので、今回はそういう感じなんでしょうね。


Kali Uchis – Never Be Yours

カリ・ウチスが2014年のポッドキャストでデモverだけ公開していた伝説(?)の人気曲がついにフルプロダクションで10年越し単発の正規リリース。
今回のバージョンも非常に洗練されたチルなアンビエントR&Bに仕上がっており、美しいメロディとレイドバックしたムードが手堅くパッケージされたしっかり及第点以上の出来ではあるのですが…、どう考えてもデモを超えられてない。まあ、これは「あるある」ですね。
人気を博したデモ版の方がこちら↓

明らかにこちらの方が良いでしょ。
アレンジも音色もそんなに変わらないのに何でこんなに差が出るんだろと思うが、編曲上のポイントだったこの抜けたデッドなギターがオミットされてる点と、いなたいミックス、さらには本人の歌唱のテイクってところでしょうか。その辺が偶然絡み合ったこのデモバージョンの方のなんとも言えない魅力が完成版でスポイルされちゃってるのは実に残念だけど、音楽ってそういうもんで、デモのまま引っ張っとくとデモが「原曲」になり正規リリースの原曲が「再録」になってしまうという良い例ですね。

今週のLP/EPフルリリース

Sis – Vibhuti (LP)

何の予備知識もなし。身も蓋もない作家名で内容は一言で表すならエクスペリメンタルポップ、が一番適切なのだろうか。基本はソロアーティストっぽいけど演奏において本人は歌とギターと鍵盤のみでありその他はお任せのバンド編成で録音されてる。
音楽性はラウンジ、ジャズ、アフロ、R&B、アンビエント〜まあここまではたまにある感じだが、そこから更にハウスが入ってるとこが面白ポイント(後半にならないと出てきませんが)。以上のエレメントをコンテンポラリーにポップ煮込みしたヤツで、かつエレクトロニックの比重が少ない生寄りのサウンド(だから私が気に入るんですけども)。
全体的にスマートなインテリジェンスは感じるが、なかなかにぶっ飛び編曲というか、前述したそれぞれの要素がキレイに1曲にまとまってるとかそういう感じではなく、無茶苦茶な展開するトラックもあってあまり整理された雰囲気はない、ある意味ミックステープ風の仕上がり。クラウト要素をゼロにして超散漫になったステレオラブみたいな時もあるし、局所的にはちょっとシャーマニックだったりスピったニュアンスもある中で勢いキャッチーな歌メロが飛び出したり、コーラス的なパートが存在する瞬間が異様にフレッシュで気持ち良い。M-7等でのダウンテンポ4つ打ち+ラテンパーカッションと抜けた歌唱はマリア・ウスベックの1stの面影も。
これもう少し端正に整えて歌の比重を上げてポップス寄りの体裁とってくれたら凄く聴き易くて強度もある作品できそうだけど、ある程度の実験性もないとダメなのかな〜。今でも十分いいっちゃいいけどさ。前作のトラックをマシュー・ハーバートがリミックスしてるのがあまりにもナルホドで、合点がいきます。