GVVC Weekly – Week 289

Peel Dream Magazine – Lie In The Gutter

L.A.のピール・ドリーム・マガジンがTopshelfに移籍しての新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
基本的にステレオラブ路線を継続しつつ、このトラックに関してはヴィブラフォンゲイズ(?)・クラウトロックという新機軸できましたが、これは今までのサウンドの変遷を全てまとめ上げて洗練させた実にクオリティの高いもので、遂にバンドの音楽が完成した感があります。LPは間違いなく過去最高傑作になるでしょう。
しかし、ちょっと4年くらい前まではフォロワーの亜種くらいのレベルでもろマイブラ型のシューゲイズやってたのに進化が早いね。


Peter Cat Recording Co. – Suddenly

自称インドに現存する最後のバンド、ピーター・キャット・レコーディングが8月にリリースする新作アルバムから二つ目の先行曲をビデオ公開。
一つ前の楽曲もまあまあ良かったのですがこの度さらに上回っていたので思わず紹介。デリーでこんな音楽やるって一体どういう文化圏でのどういう生活なんだろうね。想像がつかないし、US/UKインディのツアーでインドも回るなんて聞かないし、まずマーケットはあるのか。まあ、正直なところ彼らでも色眼鏡なく完全な欧米のインディ~オルタナティブと同一のフォーマットではないとは思うけれど、限りなく違和感なく聴ける音楽ではあるし、本当に愛嬌がある。
おそらく事故的にこの音楽性になってるんだと思うが、50’sっていうかオーケストラをバックに映画の主題歌をスーツのいけオジが気取りながら唄うあの世界観とヨレたへべれけのオッサンの酩酊ロックが融合して偶然カウンター的なモノに聴こえるっていうマジック。歌心満載のリリックも泣かせに来るが英語は訛りというかもはや呂律回ってない感じ。まぁタイム感がゆったりしているからアリだね。でもこのボーカルの人も喋る時はあのインド人の英語になっちゃうのでしょうか。


Vacant Weekend – The Windowsill

マンチェスターのヤング3ピース(正式メンバーのドラム不在)、ヴェイカント・ウィークエンドが単発のニューシングルをリリース。
昨年末のEPは日本のthe band apart的サウンドという謎の音楽性だったところから若干その気配は残しつつも進化し、今回はテクニカル系のエモつまり初期モック・オレンジあたりのニュアンスが強く入り、マスロック〜ポストロック風のアンサンブルも追加されてます。
全然まだまだだけど、すごく若者の勢いみたいなのは感じて元気だなぁと。歌い方の雰囲気的にあのエジプシャン・ヒップホップとかあたり思い出すかな。


Mk.gee – Alesis (Live)

L.A.のマギーが今年リリースした傑作アルバムの収録曲スタジオライブ版をビデオで公開。楽曲自体が新曲ではありませんが素晴らしいので掲載。
今までウチで紹介はしてないけど、当然ノーマークな筈はなくて多少は聴いてみてるものの個人的にはそこまでハマらず。ただ異様に評価してる人が多いのは理解できるし、ギターの音色に特徴がある宅録オルタナSSWって感じで独自性は確かにあってキャラクターも強いと思う。
で、なんでこれ載せたかと言うと単純にオリジナル音源とは比較にならないレベルで良い。オケが粗くリバーブも拡散してよりアブストラクトな音像になる一方、歌唱はよりラフでエモーショナル増しになっており、全体的な仕上がりとして非常に美しい。これが正規のスタジオ音源でもいいレベル。オリジナルが全曲このプロダクションで出てたら年間ベストランクイン確定だったんだけども。

今週のLP/EPフルリリース

Mabe Fratti – Sentir Que No Sabes (LP)

バンキャンにもありますがフル公開ではないのでYoutubeで。
いや素晴らしい、なんじゃこりゃ。分類として単体でドンピシャな表現はないがおおよそエクスペリメンタルポップ、アートロック、トリップホップあたりになるだろうか。この手の音楽性で歌えるチェリストってなると何人か競合が思い浮かぶが、中でも彼女は圧倒的に聴き易く、キャッチーな装い。悪く言うと俗っぽさがあるが、そこは必要悪的な要素というかあくまでコンテンポラリーになり過ぎない為の最低限の範囲にとどめていてドギツくない。
これ決してアンビエントではないところが良いんだろうな。本人がリズム隊のプレーヤーなのも影響あるんだろうけど、ビートの入れ方といい音色といい、大別してなら完全にロックの文脈で行けるところが強いよ。スペ語のボーカルも情感ほどほどに増し目でしっかり飛び込んでくる強度、ドラマティックさあり。ちょいちょい挿入されるSE的なサウンドも効果的で全編通してサウンドテクスチャーが抜かりない、完璧な仕上がりの芸術作品。敢えて雑な例えをするとルクレシア・ダルトの直近アルバムに全盛期のビョークを混ぜてロック要素をかなりプラスした感じだね。無理やりケチつけるなら少しだけ冗長だから3、4曲くらい間引いてもいいかな。
しかし、これは某フォークでなくとも初見ちょっと流しただけでベストニューミュージック!と叫んでしまいたくなる内容。好みとかを超越した、オススメするまでもなくどう考えても年間ベストアルバム級の作品ですんで皆さん安心してどうぞ。共同リリースですがまたもTin Angel、どんだけ名門なんよ。非常にあっさりとしたプレスリリースも好印象。