GVVC Weekly – Week 292

Chat Pile – I Am Dog Now

チャット・パイルが10月にリリースする2ndフルレングスをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。2022年の前作は本当に素晴らしく、ここでも絶賛しました。
さてLPでのオープニングトラックに配置されたこちらの楽曲、大きくサウンドに変化はないですが、スラッジ入ってるノイズロック~インダストリアルっていう感じだったところからより一層シンプルにポストハードコア気味というか良い意味で少し重さが削がれて軽快なニュアンスになってきており、ますます聴き易い雰囲気に。出音の鋭さとか社会的メッセージ性の強さはそのまま、コンパクトにパッケージされていて素晴らしいですね。これは今回も期待できるでしょう。


Vitesse X – Eternal

ヴィテッセ・エックスが10月リリースの2ndアルバムを正式アナウンスし新たな先行曲をビデオ公開。
今年これまで2曲出ていましたのでこれが実質三つ目のトラック。最初の曲も確か紹介しましたが、今回もシューゲイズ・エレクトロニックポップといった感じの清涼感溢れるサウンドで疾走するリード向けの楽曲は、なるほど納得LPでのオープニングトラックです。
いつも言ってますが、あくまでもシンセに全振りしておらずギターの存在感が明確に重要な役割を果たしている点、差別化ポイントで凡百のシンセポップになっていないのが素晴らしい。下手すりゃPC Music路線になりかねないところ絶妙にニューエイジの雰囲気もあり、インディ・ドリームとモダン・エレクトロニックそしてヴェイパーとハイパーまでをも繋ぐミッシングリンク。軽薄スレスレな部分もあるのですが、そこは間口とのトレードオフか。
Jorge Elbrechtがミックスしてるトラックもある中、今回のこちらはAbe Seiferthの担当。本編にはPearly DropsやWild Nothingのジャック・テイタムと連名クレジットになっている楽曲も収録されるみたいですね。


Respire – The Sun Sets Without Us

トロントのリスパイアが今月末にリリースする新作アルバムから三つ目の先行曲をビデオ公開。
ちょっと面白いサウンドで、軽めのスクリーモがベースにある中にトランペットやストリングスが入ってきてポストロック的な展開をするタイプ。近似値としてはもはや懐かしいが少し過激になったAnathalloっていう感じで、大所帯バンド感とエモっていう取り合わせがメインになってる。
ビジュアルのメッセージ性に引っ張られてかもしれないが少しだけアートパンクというかポストパンクというか、そういうニュアンスもあり、イントロはもっと純エモコアみたいな入りだったりと要素が盛り盛りで飽きないね。全部が全部こういう曲だと疲れるけどキー曲でこういうのはいいと思う。
最近もスクリーモはメタルコアやブラックメタル方面と混ざってるタイプの方が多いからちょっと新鮮かな。ある意味でひと昔前のモノっぽい折衷具合。


Aerial M – Vivea

パパMことデイヴィッド・パホの名義の一つエアリアルMの1998年ピールセッション音源がドラッグシティから8月にリリースされます。
今年ちょっと前に確か来日公演もしてた、いわゆる影なるリヴィングレジェンド、Slintに始まりトータスやZWANに参加、何でか今Gang of Fourのメンバーというパホ、ソロもかなり多作でいいアルバムいくつかありますが、こちらはバンド編成でライブ演奏された当時の生々しいインストポストロックサウンドが非常に素晴らしいアンサンブル。派手な要素は一切無いのですがただひたすらに滋味深い硬派なコンポジションで、ほぼクリーンなギターと空間系に頼らない純粋なオーガニックバンド音楽はSonnaとかに近いかな。
なんつうーか、今、完全にこれと同じことできるバンドいないと思う。今の感覚だとこれはスロウコアと言われるかもしれないですね。

今週のLP/EPフルリリース

Los Campesinos! – All Hell (LP)

先行M-14が久々に素晴らしく期待していた。重めのジャケとタイトルから構える程にダークな内容ではないが、アダルトが直面する世界や社会または個人のやりきれない諸々を非常に感じさせるムードがあり同世代(正確には知らんけどおそらく前後2〜3歳以内のはず)としては身につまされる思い。
具体的な音楽性の話をするともはや当初のジャングリーという面影はなくパワー・エモのニュアンスが非常に強いインディポップという範疇。サウンドは結構ボトム太めでゴリっとドライヴしてるんだけどもメロディがどうしてもめちゃんこキャッチーなのでオルタナロックっていう印象にはならない。ところどころ男女ツインだったり、ぶっきらぼうなやぶれかぶれ歌唱もいまだに学生サークルバンドっぽさが健在でそこらへんの甘さ・ヌケ感と骨太アンサンブルとのコントラストが面白いバランスで成立していて意外と他に無いような音楽。
でも15トラック中インタールードは3であとはフル楽曲なんで、ちょっと長いね。そんな軽い内容じゃないから少し疲れるのはマイナスかな。でも十分傑作と呼べるレベルの作品ですし、1st以降では間違いなく彼らのベストでしょう。いいもん聴かせてもらいました。