GVVC Weekly – Week 293

Karate – Silence, Sound

カラテが実に20年ぶりのオリジナル新作LPをアナウンスし先行トラックとしてオープナーとクローザーの2曲を公開。個人的な往年のカラテのイメージにより近い後者の方をピックアップです。
ボーカルの聴力障害で解散?活動停止していたのがこの2年くらいで復活、過去作を再発などの動きはあったのでフラグ無しからのサプライズとまではいきませんが、十二分に衝撃のニュース。正直、知る人ぞ知るいぶし銀バンドで、Faraquetとかそっち方面を掘り進めた人が遭遇するであろう枯れポストハードコア・スロウコアのカルトスリーピースなんですが地味すぎるが故の過小評価感は否めないです。
間違いなくハードコア通過後の真摯な空気感と尖りを持ちながらも勢いに任せた部分はなく、弛緩した微ジャジーなムードで淡々と展開するサウンドはどこまでもオッサン臭い音楽ではりますが、熟練の深み、なんとも言えないタイム感と隙間だらけのスペースに完璧なトリオ演奏が他にない存在感で相変わらず素晴らしい。


Being Dead – Van Goes

オースティンのビーイング・デッドがBayonetから9月にリリースする新作アルバムより二つ目の先行曲をビデオ公開。
先に出てた楽曲にはその特徴がないようなのでこのトラックだけなのかもしれないのですが、これ面白いのはローファイのサーフ系インディポップみたいなところとコールドウェイヴ系の少しダークな方向性が絶妙にミックスされてるんですよね。どちらもリバーブ深めというところで、どうやってもまとめられないサウンドという訳では無いとは思うのですが、美意識が対極にある気がしてあまり共存するイメージがわかないところ自然とやってのけてます。
少し懐かし目の、初期Woodsist周辺とかヴィヴィアン・ガールズあたりを思い出すような感じもあるかな。


Peel Dream Magazine – Wish You Well

ピール・ドリーム・マガジンが9月にリリースする新作アルバムから新たな先行曲をビデオ公開。
進化を繰り返し遂にオジナリティを確立した完成系に近付いていると思われる彼ら、前のリードトラックも紹介しましたがまたしても素晴らしいです。
今回インストゥルメント的にはシューゲイズの要素はゼロと言ってもよく、ソフトサイケな密室ベッドルームポップのバンドサウンド版というような風情でひたすら繰り返されるコーラスがキャッチーな3分未満ポップになってます。Zach Phillips(Blanche Blanche Blanche)関連諸作をシンプルにしたような雰囲気ですね。アルバムの期待度がまたアップです。


Empress Of – Someone I Know (Margo Guryan cover)

SUB POPからリリースされるマーゴ・ガーヤンのトリビュートアルバムがアナウンスされ、先行トラックとしてエンプレス・オブのカヴァーバージョンがビデオ公開。
ちょっとオリジナルの作品ではもはやインディやベッドルームから完全に外れてエレクトロニック~ダンスポップ方面に行ってしまった彼女ですが相変わらずボーカルは素晴らしく、クリックポジションで鳴り続ける軽いパーカッション以外ビートレスのアンビエントポップ系アレンジになっていてスッキリと非常に気持ちの良いアレンジです。
例のパートは「ブリッジミュートのバッハ」としてU2ディレイをかまし原曲以上に特大フィーチャーされているので必聴。

今週のLP/EPフルリリース

Sinai Vessel – I Sing (LP)

もう随分やっているよね、10年以上は確実。今現在も本メンバーなのはやはりボーカルだけで都度バッキングメンバーをこしらえるSSWバンド状態になっているのか、前作にも関わってましたが今回はより一層、自身がプロデュース・ミックスし演奏にも関わるスタイルのBennett Littlejohn(Hovvdy作品ににいっつも居る)が全面参加。
Tiny Engineからも出してたりと、最初の頃はエモのニュアンスも結構あったと思うけど、もうその面影はほぼなく近作はどんどんマイルドになっていて実にKeeled Scales作品らしい雰囲気に落ち着いている。ちょっと繊細な感じもあるオルタナカントリーをベースにしたインディポップからスロウコアやアンビエントフォークにも流れ、たまには軽くドライヴぎみのトラックもあるといった塩梅で、イノセンス強めの綺麗なメロディと語り口はなんかアコースティックの時のSufjan Stevensみたいな雰囲気も。
個人的にめちゃくちゃハマった時は全然ないんだがいつも割と良いよねくらいの認識でチラ聴きしていた感じでいくと今回が今までで一番好きかな。